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おとぎばなし ― ことのおこり ―  作者: ぽすしち
まずは、

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26/52

ひとことよけい


 だが、先に気遣うようにいわれてしまう。

「あの、赤い石は、母が嫁いできたときに持ってきたものです。・・・スザクさまに拾っていただけて、ほんとによかったです・・・」


「シュンカ、そんなことであの坊主に恩義を感じることはないぞ」セリが扇子を左右に振って命じた。


「そうだ、帝に会ったあと、里に帰るなら、おれもいくよ」

 絵師がそう言ったとき、部屋の入り口に大きな影が現れた。


「里にはどうせ今日からシャムショの奴らが入ってんだから、おめえがいくこともねえだろ」

 

 また、無神経なことを。

 振り返って睨んでやったのに、坊主は絵師を無視して子どもを側で見下ろすと「ほお」と笑った。


「お袋殿に、そっくりだ」

「・・・・」子どもが唇をかむ。

 この馬鹿どこまで、と思ったとき、懐から出した石を、坊主が子どもににぎらせる。


「すまなんだな。どうも、『思いやり』とか『相手の身になる』とかがわからなくってな。ただ、本当のことしか言ってねえ。腹が立ったならコウセンみたいに殴ればいいし、悲しいなら泣けばいい。それでも、なにも元にはもどらねえが」


  ・・・だから、ひとこと余計なのだ。この男は・・・


 絵師が呆れたとき、「スザクさま」と子どもが男をみあげた。



「ありがとうございます。父を背負ってくださいまして。それと、真実を教えてもらえて、良かったです・・・悲しいですけど、おれがちゃんと受けとめないと・・・」

 ぎゅ、と手の中に母親の形見をにぎった子が、坊主をみあげると、珍しく薄く笑った坊主が、子どもの頭をぽん、と撫でるよう叩いた。


「・・・・スザクが、気色悪い笑い方をしたぞ・・・」

 セリと絵師が身をよせあい、坊主をながめていれば、さてではゆくか、と待女姿のこどもを、荷物のように肩にかつぎあげた。


「・・・やはり、どう笑おうともこんなものよ」

呆れた声の女にまた同意し、セイテツは後を追った。




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