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どれがバレたのか
七年以上つきあっていても、この坊主の喜怒哀楽をちゃんとみたことがなかい。
平時が不機嫌そうな顔。腹を立てたときには無表情。ひどく怒ったときは・・、残念ながらというか、ありがたいことにというか、まだ、見たことがない。
今も痛かったといいながら、痛そうな顔はしていない。
「ではスザク殿、もどりますか」
「―― セイテツ殿」
「・・・・・はい・・」
坊主が自分をこう呼ぶときは、たいてい何か、こちらに後ろ暗い心当たりがあるときで、どれがバレたのかと、汗がでる。
「今回のこれは、ちゃんと金をもらったんだろうな?」
「・・・・はい」
前回の妖物退治のときは、里人からもらった金の半分、みごとに下界の色街で使いきったのがバレて、しばらく天宮からでることを許されなかった。
セイテツは元神官だが、今は絵師なのだ。
色街に入り浸っているのだって、絵を描く仕事のうちなのだ。 と、男は主張したが、それは通らなかった。
半分くらいは本当なのに・・。
人間が暮らす《下界》よりはるか上にある『天宮』で暮らしていたって、金はかかる。