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おとぎばなし ― ことのおこり ―  作者: ぽすしち
まずは、

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16/52

ぜんぶ うそ


「なるほど。 それは、許せぬ戯言だな」


 子どもの口が大きく開いて、何かを言う前に、かがんで息も絶え絶えな男をおこして背に負った。


「あとは任せろ。おれたちがこやつらを天宮までしっかり連れ立てて、天帝にじかにお裁きいただこう。将軍様のお手をわずらわすこともない」

 

 これに笑った絵師も、子どもを守っていた境をたやすく壊し、さあゆこう、と中にいた二人によびかけた。


 「とうさん!」

 はじかれたように子どもが坊主に負われた男に駆け寄る。

 とうさん、とうさん、と叫び、血まみれの父親へとその腕を伸ばしたとき、ばしん!とそれが払われた。


「・・・・・と、う・・・」

 寄ろうとした父親にはらわれたこどもは、よろけるようにあとずさる。




「・・・や、・・めろ」


 ぜえぜえと継がれる息の間、父と呼ばれる男は、どうにかはっきりと音にした。


「もお、・・・もう、いいん、だ・・。おれ、たちの、・・いんちき・・な、行いは・・これから、ミカドのまえ、で・・裁かれる・・んだ」


「・・とおさん?なに、言って」

 

「だからっ!」

 大きな声のあと、ごふりと噴き出した血にむせるが、やはり、腕をのばし、子どもを近づかせようとしない。



「― だ、から・・・・おまえは・・・・もう、― やるな 」



「とお・・さ」


「みた、で、しょう?」

 坊主の背中、半死の男は笑おうとしているようだ。


「おれの、子どもです、が・・、こいつ・・は、結果、張る、力さえ、ね・・んです。おれ、が、・・力で、けが人や、病人、・・なおしてた、んだ・・。でも・・・ガキが、やるほうが、ありがたみが、ある・・・」

 だから、と男が震える手をのばし、子どもへ指先をのばす。

「こいつ・・なん、も、できねえん、です・・・ぜーんぶ、おれが、やってた。・・それだって、ぜ、んぶ、幻術だ・・・ぜーんぶ、うそ、だ」


 セイテツには、男が微笑むのがみえた。




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