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おとぎばなし ― ことのおこり ―  作者: ぽすしち
まずは、

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11/52

こっちだ

このあたりから残酷、流血、場面となります。ごちゅういを


 里から出て、アラシを呼ぼうとしたのに、しもべは来なかった。

 空には何の変化もない。


「ちくしょう。いそいでんのに、歩けってことかあ?」

 いらついたセイテツの言葉はもっともだった。

 アラシにのってすぐ着いたこの山から天宮までの距離は、歩けば軽く三日はかかる。


「まあ、しかたねえ」

 本来僕は人間の都合で動くものではないのだ。

 自分達は特別で、それだってあちらの気がむいたときだけだと、坊主は理解している。

 愚痴る絵師をあしらいながら、山道をすすんでいった。



「―― おい、テツ」

「ああ。また、だ」

 ふいに感じた匂いは、今、里でかいだばかりのものだった。

 男二人が走りだす。

 


 細い山道を曲がった先に、たおれた兵士をみつけた。

 駆け寄った坊主が転がったそれをあおむけさせ、死んでるな、と絵師につげる。


「西の兵士だな」


 肩から胸に、紋がついた鉄の鎧をつけ、むこうには槍も落ちている。


「しかし、・・・どこも傷はないようだが・・・」

「この顔見てみろ」

 坊主が兵士の兜をとった。


 眼も口も、めいっぱい開き、のど元には無数のひっかき傷がある。指先を確認すれば、どうやら己でかいたようだ。


「こりゃ、・・・あれか?」

「息が、できなかったんだろ」

 いいおいた坊主は、山道の先をみあげると、とたんに走りだした。


 先には、次々と兵士の屍があらわれる。

 中には自分の槍や刀を刺されて息絶えている者もあった。

 鼻につく匂いは、どんどん強くなってゆく。


「こっちだ」

 坊主がいきなり脇道にはずれた。

 先の斜面に、くずれかけた石段があり、そこをかけあがってゆく。

 


 着いた先には、下界のいくつかの場所にある、『宝物殿ほうぶつでん』のやしろがあった。

 昔はここに、里人から天宮てんぐうに対して供物が絶えず置かれていたが、今は年に一度、里人達が祭りをする場所となっている。


            「 ―― さんっ !」


 悲痛な叫びが響いてきて、二人は社の裏手へ走った。





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