愛しき彼方
風は咲く。
知らないだろう。
あなた達には見えないから
色も形も匂いも微弱で
でもそっと覗いてみれば
そこには柔らかな風が立ち込める。
あなたが何処か涙を流しながら
隠れて踞るの所を探して走っていても
風は緩やかに、焦ることなく
けれどあなたに追い付いた。
あなたを慰めるわけじゃない。
ただそっと涙を乾かす。
あなたの姿に形を変えて
どこまでも行く。
同じ風などない。
あなたは帰ってシャワーを浴びる。
風はその瞬間離れていく。
それに気づかないだけなんだ。
だから僕はいつも微笑む。
あなたの明日があることに、
言葉を尽くして、風を咲かそう。
まだ蕾でしかない人生を
あなたが纏う風が咲き誇るのを夢見て
僕たちは朝日が昇ることに息を吐く。
さらば。moratoriumに背中を向けて
髪を撫でて煙を見た。