44話 砂漠の退き口
後ろから激しいエンジン音が聞こえる。
それに追われるようにラタヌは後ろに乗るトゥサイと共にアクセルを全開にして逃げる。後ろではトセーニャが銃を構えてバイクに乗り、トゥサイたちが乗るバイクの車輪目掛けて放つ。
トゥサイはラタヌの運転技術に身を任せる。
ラタヌは後ろを向く余裕がないため、一度急カーブをして目線をカーブの開始地点に向けると後ろから聞こえていたバイクが走る音の正体——トセーニャが追ってきていることを目視で確認した。
「トゥサイ、彼を知っているのか?」
「あぁ、何度も戦ってきた。言っても2回だがこいつはいい意味で成長しがいのある奴だな。正直面倒臭い」
トゥサイがカーブを曲がりながらトセーニャに向かって威嚇射撃を行い、カーブを過ぎた後ラタヌはアクセルを勢いよく回してバイクを動かしてトセーニャの銃撃を避ける。
「要するに手強い相手か。頼むぞ」
「あぁ、任せてくれ」
トゥサイはトセーニャに向かって銃を放つ。その時ラタヌが腕を後ろにして少し短い銃床を取り付けられた拳銃をトゥサイに渡す。
「使うのならこいつを使え。ただでさえバイクは安定が悪い」
ラタヌはそう言うとバイクの前から拳銃を取り出す。それも命中率を上げるためのショルダーストック付きのをトゥサイに渡した。
トゥサイは一瞬見慣れないため困惑したがすぐに察した。
「——これはハングラワーが昔開発していたという騎馬用の銃床か……」
「トゥサイ、前に敵兵が左右の物見やぐらに二人づつだ」
トゥサイが前を向くとやぐらにはラタヌが言っていたように左右に二人づつ。トゥサイは銃を構えると銃床を二の腕に当てて引き金を引く。銃弾は正確に敵兵の頭を撃ち抜木、敵兵はやぐらから落ちた。
「使い勝手は良しだな」
「——よし、速度を上げるぞ」
ラタヌはそう言うとアクセルを踏んで速度を上げる。
トゥサイは曲がるたびにトセーニャが側面で捉えると球を放つがなかなか当たらない。それどころがトセーニャは銃口を見つめ、それに合わせて移動して避けているように見えた。
「あいつバイク慣れすぎだろ——」
するとバイクの周りに煙幕が現れ、ラタヌとトゥサイは口を押さえる。
すると研ぎの瞬間ラタヌの肩に光の筋がかすり、生暖かい血を流した。
「——っ!」
その時バイクが一瞬大きく揺れ、バランスを崩しかけるがラタヌはすぐにハンドルを握りなおす。
しかし、光の筋は後ろから次々と前に向かって伸びると爆音を上げる。さらに煙幕はただ濃霧のように方向感覚を奪うが、後ろからの攻撃を避けることで背一杯だった。
「ラタヌ、ライトだ」
「了解!」
ラタヌはライトを使う。しかし、視界は変わらなかった。トゥサイは横を見る。するとそこに人影が見えた。それも何やら鈍器を握っているようだった。
トゥサイは咄嗟に銃を撃つと後ろから肉が生々しく削れる音が聞こえた。
「——っ! こいつら取り囲もうとしてるのか」
トゥサイは銃を持ち替えると前に横に次々と撃った。すると辺りから肉が引き裂かれる音、さらに硬いものが地面にぶつかり壊れる音が聞こえた。
煙幕はやがて徐々に薄くなり、トゥサイは少し後ろを向くとそこには黒い服を着たバイクの集団がいた。
トゥサイはそれを見るとクルガを逃している最中に襲撃された時のことを思い出す。
「ラタヌ! あれはカイザンヌ親衛隊だ。魔法も使える!」
「——魔法か。ヤニハラはカラクリ師とも聞いた! ヒスイに針でどうにかならないか?」
「すまん。荷物は取られて脱走に全力を注ぎすぎた」
「いや、良い。俺も同じことをするかもしれんからな」
トゥサイは横から銃を向けてきた親衛隊の兵士の頭を撃ち抜く。しかし、撃っても親衛隊の数は減るどころか増える一方。するとトゥサイが持っている銃がバネの音しか出さなくなった。
「弾切れか!? ラタヌ、マガジンを頼む」
「今は無理だ!」
ラタヌは辺りを走り魔法を交わす。トゥサイは親衛隊が横にくれば引き金を何度も引いて殺す。その作業を何度も繰り返しながら走りづけるとようやく出口らしきものが見えてきた。
すると背後で激しい銃声が聞こえた。バイクが暴走し、肉が地面に削られた音がした。トゥサイは後ろを見ると親衛隊がいた場所にはボロボロの服を着た盗賊のような集団がバイクに乗って後ろから迫っていた。
「ゲート!」
するとラタヌが声に出すとトゥサイを前を見る。そこにはゲートが見えた。しかし、そこには塞ぐように五人の兵士が銃を構えていた。
トゥサイは兵士を撃とうとする。次の瞬間後ろから風を切る音が聞こえたと思ったらゲートが爆発して兵士もろともゲートを吹き飛ばした。
ラタヌはバイクを止めると後ろを見る。
後ろにはトセーニャと先程のボロボロの服を着た集団がバイクに乗ってトゥサイらの後ろにいた。
よく見ると一人がサイドカーの側面車両に乗り、肩に大きな筒を担いで筒の穴からは煙を出している。
「あれはヘリアンキか……なぜ?」
ラタヌはそう口に出した。
ヘリアンキの兵は一度トゥサイとラタヌを見るとバイクを止めてすぐに降りた。そしてすぐに後ろに向かって銃を撃ち始め、一部の兵は親衛隊に向かって魔法を放ち始めた。
するとトセーニャは一度トゥサイを見るとニヤリと笑った。
「今のうちに行くぞ」
トゥサイはそう口にしてラタヌの腰を軽く叩く。ラタヌは分かったと返してバイクを発進させるとゲートを越えた。
それからバイクは砂漠の真ん中をつっきり、方角が分からないもののしばらく進んでいむ。
大きな砂の山脈の上を進み、そこで偶然見つけた岩陰で一旦休憩に入った。
トゥサイはアンナの頭に水を掛けると看護をラタヌに任せて辺りを散策する。そして覗くように坂の下を見ると麓に一つ小さい街が見えた。
街の中央には大きな泉があり、そこにあるのは活気あふれる新緑の木、さらに畑とそれを囲うように砂岩でできた大中小の大きさの建物が聳え立っていた。
そう、そこはオアシスという砂漠の民にとっては救済の場所。トゥサイたちは奇跡的にその場所にたどり着いたのだ。
トゥサイは岩陰に戻るとそのことをラタヌに知らせた。
トゥサイの報告を受けてラタヌは無線機を取り出す。
「作戦は大幅に狂った。一週間——実質残り五日でクルガを発見し、すぐに脱出だ。トゥサイ、一応俺から連絡はしたが、一応脱出したことを報告した方がいいだろう。俺のを使ってくれ」
「あぁ、すまん」
トゥサイはラタヌから無線機を受け取ると中央時情報局本部に無線を繋げた。
「こちらトゥサイ。ケウト中央情報局だ。応答願う」
『こちらは——トゥサイ殿!?』
トゥサイの持っている無線機から聞き覚えのある声が聞こえた。それはつい先日聞いたばかりのガナラクイの声だった。
「ガナラクイか。どうしてそこに?」
『こちらの方こそ、トゥサイ殿と連絡が付かなくなったとハングラワーから報告があって、内部では大慌てみたいでした。私はウマス殿より作戦変更のための会議に協力しろと依頼されました』
「——突然の大仕事だな……。分かった。けどそれ大丈夫か? 流石に素人にさせるのには無茶じゃ?」
『——これはただ私がトゥサイ殿を助けたいだけです。もちろん皆さんもですけど。とりあえず現在地を教えてください。その後にクルガ救出作戦とその後の脱出について説明します』
「あぁ、分かっ——」
「う、あぁ……」
トゥサイは声がした方向を見る。
目の先ではアンナはゆっくり体を起こして、体を少し震わせていた。
「ガナラクイ。すまんが今は要救助者を優先させてくれ。一応安全地帯を確保したらすぐに連絡する」
『分かりました。では、気をつけてください』
トゥサイはガナラクイが言い終えるのを待ってから無線を切った。
「ラタヌ。水だ」
「あぁ、ほら」
トゥサイはラタヌから水が入った水筒を受け取るとアンナに飲ませる。
アンナは水筒を受け取ると少しづつ飲んだ。アンナが飲み終えたのを確認するとトゥサイはアンナに視線を合わせる。
「大丈夫か? 無理だったら喋らなくても良い。一応現在の状況を説明する」
トゥサイは捕まってからここに来るまで何が起きたのかを話した。アンナは最初は呆然としたままだったが、トゥサイが話し終えるとゆっくりと立ち上がった。
「——お父様は生きてないのですね」
「いや、それは分からん。だが、殺すとなれば内外に宣言するはずだ。独裁国家はアピールが必要だからな」
するとアンナは力がなくなったのか、地面に倒れそうになったところをラタヌが支えた。
トゥサイははその光景を目の当たりにして、一瞬ガナラクイと被った。
トゥサイはアンナに近づくと手を背中に肩に伸ばして優しく叩いた。
「——クルガは絶対に助ける。諦めるな」
「——信じていいんですか?」
「一週間後に列強が来る。その際にエポルシアを先進国と同じ自由で民主的な国にする。——その元首にはクルガだ。もうそれは決まっている。だから我々はクルガを絶対に助ける」
トゥサイはラタヌを見る。ラタヌは笑みを浮かべると決意のこもった眼差しに変わり、会釈した。
アンナはそれを見ると少し涙を見せた。
「——本当に列強は他国に干渉するのが好きですね」
「まぁそう言うな」
トゥサイは笑みを浮かべた。そしてラタヌもアンナを安心させようとしているのか不器用な笑みを浮かべる。
アンナはそれを見て少しだけ微笑んだ。
「ま、そんなことよりこの近くにあるオアシスの街はエポルシアのどの辺りにあるのか知っているか?」
アンナはトゥサイの言葉を聞いて少し首を傾げる。それから立ち上がって岩陰から出るとオアシスの街を見下ろした。
「あれはエポルシアの南東部にある数少ない街ですね。名前はフェルガと言います」
「——なるほど。トゥサイ。ここだ」
トゥサイは後ろで地図を広げているラタヌに近づく。
「まず俺たちの位置を確認するとまず首都からクルガが捕らわれていた塔に約四時間かけて到達した。それから三日かけてエポルシア東部の街のコーカスで合流する予定がが収容所に送られてしまった。で、現在はフェルガだ。位置で言えばルートは南西方向に大きくずれている」
「なるほどな。じゃ、そのことをまず本部報告していいか?」
「ん。構わん」
トゥサイはそう言うと言った離れて無線を繋げた。
「ガナラクイ。今はフェルガっていうオアシスの街にいる」
『フェルガですか。了解です。長官に報告してきます』
「あぁ、頼む」
トゥサイは無線を切るとラタヌたちのいる場所に戻った。
「移動するか」
「いや待て。その服装じゃまずい」
ラタヌはそういうとバイクの荷物入れの蓋を開ける。トゥサイは中身を見ると納得したかのように頷いた。
それからトゥサイとラタヌ、アンナの三人は変装し、バイクに乗ってフェルガに向かう。
まずラタヌとトゥサイはエポルシアの国民服を身につけ、変装マスクを顔に被る。
アンナは変装道具自体用意されなかったため、トゥサイの案でラタヌが予備で用意していたエポルシア人の民族衣装を着せた。
トゥサイはアンナを見ながらラタヌを小突く。
「おい、逆に目立ってないか?」
「問題ないだろう。どの国でも美人さんは目立つ」
「——だな」
トゥサイはかすかに笑って大通りを歩いた。
フェルガは人口が少ないものの活気があり、人々は楽しそうに話しており自由に商売をしているみたいだった。トゥサイはそれを見るとアンナに近づく。
「フェルガは元から商売が繁盛していたのか?」
トゥサイはアンナを見る。
アンナはアンナでこの光景は初めてなのかとても珍しそうにあたりに視線を送っていた。
「……私にもどうして商売がここまで繁盛しているのかは分からないです。数年前まで本来エポルシアでは原則商売は禁止で生産と開発は国が主導。例外的にエポルシア人民党の高官の子息で成績優秀なものだけが科学者や商人になっていたんで一般市民がこうも商売できるなんて想像したこともないですよ」
するとトゥサイたちの前で黒ずくめの男が一瞬立ち止まると急に進路を変えた。ラタヌはそれを見ると足を止めた。
「——付いて行こう」
「あぁ、だな」
トゥサイたちは黒ずくめの男について行くと着いた場所は寂れた廃墟だった。黒ずくめの男はトゥサイたちを確認した後ドアをノックする。
「合言葉は?」
「自由エポルシア万歳」
「入れ」
黒ずくめの男はそういうと扉を開け、手招きをする。トゥサイたちはそれに誘われるようにして中に入った。
中に入ると中は外見とはうってかわり割と華やかで高そうな絨毯が敷かれ、ソファーが置いてあった。
周りには銃を持った屈強な男や鋭い目つきをしている女性がいるなど怪しそうな風貌をしている。しかし、アンナの対応だけは格別で、綺麗な服や飲み物を提供されていた。
黒ずくめの男はトゥサイらをソファーに座るよう手で合図し、トゥサイたちはソファーに座った。
「——で、お前は?」
トゥサイは真っ先に口を開く。すると黒ずくめの男はローブを脱いだ。
「我はクルガ最高指導者になられる前から支援していました、元自由エポルシア解放軍少将のラインハックと申します。現在は共和国臨時政府防衛軍としてクーデター軍と現在戦闘しています」
「共和国臨時政府?」
トゥサイとラタヌは頭を傾げる。するとラインハックが二人を見て「あぁ、突然すいません」と言った。
「我々はクルガ様よりアンナ様を通じて数年前に解散した自由エポルシア解放軍の仲間たちを再結集させ、共和国臨時政府軍としてクーデター側による民間人に対しての暴虐を防げと命じられたのです。かつての仲間はほとんどエポルシア軍と合流したのでどこにいるのかは把握できておりませんが、現在は各地から無線が来て6万人ほどが戻ってきてくれました」
ラインハックは説明を終えると机に用意された酒を飲む。
「全盛期と比べたら半数程度ですが皆士気は高いです。それにアンナ様まで来てくださった。もう兵たちは心強いです」
「別に、私は凄くないです」
「はははっ! 別にご謙遜なさらずに」
アンナは少し照れているのか目を右斜め下に逸らした。トゥサイは少し考えた後「少しいいか?」と口にする。
「まず聞きたいがフェルガにいるのは何人だ?」
「ざっと十八人でしょうな。が、味方の他勢力を入れて百二十人はいます」
トゥサイは大体情報を頭に入れて整理する。するとラインハックの元に一人の黒髪の女性が走ってきた。
「ラインハック少将。ヘリアンキ自由信徒軍の少佐が戻られました」
「ヘリアンキ自由信徒軍?」
ラタヌは驚いたような声を出すと立ち上がった。
外からは客室に向かってゆっくりと靴音が大きくなっていく。ラインハックはラタヌを不思議そうに見る。
トゥサイはラタヌの腕を掴んだ。
「どうした急に?」
「お前は新しい英雄、ヤニハラだろ? どうしてテロ組織と協力関係の組織を疑わない?」
ラタヌは声を震わせる。しかし、トゥサイは冷静だった。
「いや、恐らくだが……。ラインハック。そのヘリアンキは穏健派の勢力? それとも対外にテロ行為をしてきた方か?」
「はぁ……恐らく穏健派ですよ。彼らは国内でも評判は悪いですが、穏健派は国内の治安を守るだけで何もしてこないですし、上層部からの指令がない限り一般人には手を出しません」
「——待てトゥサイ。穏健派とはなんだ? こっちに来たのはヘリアンキが何故か学生を保護していたという情報がケウトから寄せられた程度だったぞ?」
「俺も分からん。俺も学生から聞いた情報を言ったまでだ。何せ大人しいのは本当みたいだ」
トゥサイは姉のマトミの元で居候している女子大生フルを思い出しながらラタヌに話す。
やがて客室に一人の金髪の男が入ってくる。その男はエポルシア人らしく長い耳と金髪を持ち、黄金の髪は長く、かなりの美形の男だった。
服も立派な軍服で腰にはリボルバーを二つ所持している。
男はトゥサイを見ると少し笑う。また、トゥサイもその男を見ると苦笑いした。
「——まさかの味方はお前か」
「さっきぶりですね。ヤニハラ」
そしてそれに続くかのようにボロボロの服を着た兵士たち、おそらくヘリアンキ自由信徒軍の兵士が入ってきた。
ラタヌは眉間に皺を寄せる。
「おや、一人は迎え入れてはいないようですね?」
「それはそうだろ。ヘリアンキはケウトでの列車事件以降は大人しいとはいえ今までの所業を忘れたというなよ?」
ラタヌは軽快の眼差しをトセーニャに向ける。
「あぁ……あれですか。あれは最高司令官の指示に従ったまでです。私たちを反宗教のカイザンヌから資金を受け取って教義を執行しようとするならず者と一緒にしないで欲しい。私たちも嫌々参加しているのです」
「——いや、あの場で見た時お前かなり乗り気だったろ?」
トゥサイはボソっとツッコミを入れるがトセーニャは気にしないで話を続けた。
「私たち穏健派はあくまでヘリアンカ様のお言葉のもとで行動する。もしヘリアンカ様が共生を求めたら武器を下ろしますし、戦えというのであれば戦います」
「なるほどな。なら過激派はなぜ暴走を?」
「彼らは教義を自らの利権のために使っている。ヘリアンカ様中心の世界の定義を根本から変えて今貧しいエポルシア人、そしてエポルシア人の国を滅ぼされた怒りを民族主義と合致させてエポルシアこそが選ばれた民でエポルシアこそが優等人種だとしている。これだけでいいでしょう?」
トセーニャは自慢げな顔をする。
「要するにカイザンヌのカリスマ性とヘリアンキ自由信徒軍のエポルシア人の民族主義を教祖がうまいこと利用して怒りを外国に向けさせて暴れ回っている感じで大丈夫か? カイザンヌもヘリアンキのその行動を使用して国民を洗脳しているてな感じで」
トゥサイの言葉にトセーニャは会釈した。
アンナは最初は困惑しつつも、手を挙げた。
「——なら聞きますけど、貴方はエポルシアをどう思っているの? 穏健派はどう思っているの?」
アンナの質問にトセーニャは軽く笑みを浮かべる。
「大体過激派と似たような空気はありますが……」
そしてトセーニャは背中を向けて部下たちを見る。
「私たちは純粋にヘリアンカ様の教えが人種問わず心の拠り所になれば良いとしか思っていません。カイザンヌの謳う思想統一には反対だ。ただ共通の拠り所だけがあれば良いと思っている。思想は統一できなくても、心だけは一つになれるきっかけになれば良いと思っています」
トセーニャはそういうと前を向くとトゥサイ、ラタヌ、アンナと順番に見た。
トゥサイはそれを見ると少し納得したように頷いたのだった。




