11話 カナンブ遺跡とモラモイノの伝承
フルは歩いていた。ただひたすらに歩いていた。歩くことは走ることに比べると楽であることは誰にでもわかりきっていることだ。フルも例にもれず走るくらいならゆっくりと歩いて行きたいと思う。
しかし、それは過去のフルのこと。今ならわかる。歩くという行為だって走るのと同じくらいに、いや、それ以上に辛いことだってあるのだと。既にフルは40キロ近く歩いただろう。足は数時間前に棒になった。まさか歩くことがここまで苦痛に感じるとは。
偉い人が偉大なる人類の一歩だとかよく言っていた気がするが、その一歩は途方もない歩数の内の一歩でしかないということを分かっていないのではないか。
「私の歩みに比べたら人類の一歩なんて大したことないな」
フルは昨日から歩き詰めで疲れ切った脳でどうでも良いようなことを考えながら足を動かす。いまフルはヨカチと共にとある遺跡へと向かっていた。もちろんヘリアンカに関する情報を集めるためである。
横で一緒になって歩くヨカチに目をやる。フルは息も上がっており、足つきもおぼつかなくなってきているが、ヨカチはというと何ともないように普段と同じ顔で涼しげに歩いていた。ヨカチのことをフルはほとんど知らない。学執会に呼び出されたときに会ったくらいでカンナほど親しくはない。
この遺跡調査に連れてきてくれたことには感謝はしている。だが、どこか得体の知れない雰囲気を醸し出している。また近寄りがたいオーラが在るのは事実だった。
これから共同で遺跡への調査に向かうというのにこのまま気まずいのはごめんだとフルは思う。
「ヨカチさん。今回は遺跡調査に同行させていただきありがとうございます。たぶん、ヨカチさんとは学執会以来ですね。私のこと忘れてるでしょう? 改めて自己紹介しましょうか?」
「確かに学執会での一件以来だが、特に自己紹介の必要性を感じない。それと訂正しておくがボクはお前と共同で調査に来たのではなくあくまでもお前の監視役として同行しているに過ぎない」
少しでも仲良くなれるように自己紹介をしようとしただけであんまりな言われようだとフルは思う。ヨカチとの間に壁があるというよりか、ヨカチが壁を作り上げているようにフルには感じられた。
「はぁ、自己紹介くらいさせろって感じだよね」
フルはヨカチの物言いに腹が立ちわざとヨカチに聞こえるように言った。ヨカチは聞こえていたのか聞こえてなかったのか何も反応を示さなかった。
「もうじき付くぞ。遺跡を調査する準備をしておけ、フリィーペン。それと水分補給をしておけ。こんなところで倒れられると後処理に困る」
ヨカチの口から気づかう言葉が出てきたことがフルには意外だった。
「ヨカチ先輩は何を思ってるんだろう。まったくわからん」
フルたちが目指していた遺跡であるカナンブ遺跡へと二人はたどり着いた。カナンブ遺跡は遥か昔、推定1000年前には存在していた立派な遺跡だ。ここならヘリアンカの情報も残っているに違いないとフルは確信していた。
カナンブ遺跡まで来るのに体力のほとんどを使い切ったため遺跡内部に入る前に少し休憩することにした。フルはこれから入る遺跡を見つめる。
遺跡は石でできており、様々な模様が彫られている。その中にはアンリレの秘宝の設計図にあった記号に酷似したものがあった。
中は暗くライトの明かりが無いと前が何も見えない状況だ。フルとヨカチは準備しておいた片手に収まる大きさの携帯ライトを手に持っておく。十分に休息を取った後二人はゆっくりと遺跡の内部に入ったのだった。
「何か罠があるかもしれない。お前が死ぬと後々ボクが面倒なことになる。フリィーペン気を付けて歩け」
フルはヨカチがという人物をだんだんとわかりかけてきた。先ほどから何かと言い訳がましくフルのことを気にかけてくれている。おそらくヨカチは根が優しいやつなのだろう。
フルに対して素っ気ない態度なのはフルが監視対象だからだろう。きっと監視という使命に馬鹿真面目になりすぎて監視対象と仲良くしてはいけないと考えているのだろう。
そう考えるとヨカチのことを必要以上に警戒したりする必要はなかったかもしれなかった。
「ヨカチ先輩って実は優しいですよね」
ヨカチはフルのことをチラと一目見てすぐに前を向いた。
「フリィーペン、広間へと出るぞ」
遺跡に入ってから数十分と経たないうちに二人はとても広い場所に出た。マトミの屋敷の大広間と同じかそれ以上の広さにフルはぽつりとつぶやいた。
「広い。広すぎる。なんだか無駄に空間を大きくしている気がして不気味な感じがする」
「ここならお前が探していたヘリアンカの手がかりが見つかるのではないか?」
「確かに、今までは細い通路しかなかったからね。ここなら何かあるかも」
フルは大広間と呼ぶべき空間を壁伝いに歩く。相変わらず部屋は暗くライトを手放すことはできない。壁には外に彫られていた模様と似た模様が彫られており、それ以外に特徴は見つけられなかった。
「特に見当たらない…。ヨカチ先輩もぼーっとしてないで探してください!」
相槌は無くただ無言でフルとは反対方向にヨカチは向かっていく。返答は無かったがヨカチが手がかりを探してくれるとフルは受け取った。
「おい、フリィーペン。こっちに来い」
ヨカチがフルを呼ぶ。ヨカチの声は壁際からではなく部屋の中央から聞こえた。ヨカチは先ほどまでフルと反対方向へ壁越しに調べてくれていたはずだ。
「ヨカチ先輩、何か見つけたんですか?」
フルはすぐにヨカチの元へと向かう。するとヨカチはライトを持ち斜め上を見上げていた。
「これを見ろ」
フルがヨカチのところまで来ると何があったかも言わずにただヨカチは手に持っているライトを掲げた。フルの目に映るライトの光はまっすぐ伸びていた。
「これって言われても」
フルにはヨカチの意図するものが分からなかった。だが、ライトの光がはっきりとヨカチが見つけたものを照らし出していた。その明かりはまるでフルに答えを導こうとしているかのようだった。
「こ、これは!?」
フルの目いっぱいに大きく広がったそれは大きな石像であった。人を模した石像だとわかるのだが、その大きさ故に顔までライトの明かりが届かない。その圧倒的なまでの質量を前にフルの心は一瞬にして心を奪われた。
「で、でかい。なんだこれは」
石像を見上げて一歩も動こうとしないフルを見かねてヨカチが言う。
「関心してないで、この石像はヘリアンカに関係するものなのかどうかを調べるのが先ではないのか?」
「いや、まあそうなんですけど。でかい、これはでかすぎます。ヨカチ先輩だってっそう思うでしょ。私が人生で見た石像の中で二番目のでかさですよ、これは」
ヨカチがフルの顔を覗くフルは一番はなんなのか聞いて欲しそうな顔をしていた。もちろんそんなものに興味はないのでヨカチは黙ってスルーする。
「え? 何が一番だったか聞きたいですって? もちろん教えてあげましょう! ヨカチ先輩だから特別ですよ! 一番は私の夢に出てきた建物です! 何の建物だったか知りたいでしょう!?」
何も言ってないのに一人で話し出すフルに嫌気がさしたヨカチは話を遮るようにぴしゃりと言った。
「フリィーペン、お前には語彙力というものが無いのか? お前は先ほどからでかいしか言っていない。しかもどうでもいいことを長々と。この場所にヘリアンカについて調べに来たという自覚は持っているんだろうな?」
「うっ。もちろん分かってますよ。ちゃんと探してますよ。でも何も見つからないじゃないですか」
フルは自分の話が遮られて少しイラついた。
「お前の目は節穴か? ここをよく見ろ」
フルは自分の目が節穴だと言われたことに腹を立てつつもヨカチの目線の先を見る。
『自由信徒 リアートここに眠る』
「リアートって都市の名前だよね。でも、信徒って書いてあるし、これはヘリアンカに関係するものなの?」
古代文字で石像の裏側に刻まれていた。リアートといえばフルたちが通うキタレイ大学がある都市の名前だ。しかし、この文のリアートという単語にはそれ以上の意味があるような気がして、その文を一言一句間違わないようにメモをした。
「フリィーペン、お前この文字が読めるのか?」
不思議なものを見るような目でヨカチはフルに目を向ける。
「はい。私は歴史が好きで古代文字を勉強してるんです」
「そうか」
フルが古代文字を読めることを聞いて何か考え込むようにヨカチが一言呟いた。
その後二人で手分けをして広間をくまなく探したがそれ以上は何も見つからなかった。また広間の先へと続く道も見つからず、この遺跡は広間で行き止まりだった。
「怪しいんだよね。こんなに大きい遺跡が一本道の通路と大きな広間だけなんて。何かこの遺跡には秘密がある気がする」
「今からそれを探すのか? この遺跡に入ってから5時間は経過しているぞ。このまま居てもいいが、ボクはお前と違って大学の用事も残っている。先に帰らせてもらう」
フルは胸にちょっとした引っかかりを抱えながらもヨカチ抜きで大学まで戻ることは不可能だと感じ置き去りにされる前にヨカチと共に遺跡を後にした。
「フリィーペン、お前はこれからどうするんだ?」
フルとヨカチは無事に遺跡を出た。しかし空は雨模様であった。
「そうですね。このカナンブ遺跡はいつでも来れるって場所じゃないから、もう少しこの周辺で聞き込みをしていみます。もしかしたらリアートの意味も何かわかるかもしれませんから」
「了解した。ボクの指令であるお前の監視は遺跡を出るまでだ。上にはお前は遺跡の中で怪しい動きは何もしなかった。ヘリアンカについて調査したが、目ぼしい情報は得られなかったようだと報告することにする」
「わかりました。よろしくお願いします。ここまでありがとうございました」
「ああ、もうお前と顔を合わせることがないように願っているよ」
なんて感じ悪い言い方だと思いながらも、これがヨカチ流の別れの挨拶なのだろうと思い口を挟まなかった。そしてヨカチはフルに背を向け歩いていった。ヨカチの姿が見えなくなると最後に雨音だけが残った。
「ここまで来て何も情報を持って帰れないのは悔しい。ここで何か聞けるといいんだけど」
フルはカナンブ遺跡から4キロほど離れた場所にある小さな集落のモラモイノへと足を運んでいた。ここモラモイノは人口1000人ほどが暮らしている。住居は木造の柱に真っ白な布を屋根のようにかぶせた移動式だ。この住民は馬を使って居住地を少しづつ動かしながら狩りをして日々を過ごしている。
「すみません!ちょっと聞きたいことがあるんですけど」
フルはこの集落でひと際大きい住居に入った。遺跡に近いということは遺跡に関する情報を知っている可能性が高いと思ったからだ。
「ミツタ!」
中に居たのはあごに豊なひげを蓄えた杖を突いた老人とフルと同じくらいの若い青年だった。老人がフルを見て訳のわからないことを叫んだ。フルが何事かとうろたえていると青年が柱に結んであった槍を掴む。
「え?」
槍と言ってもそれは簡素な作りだった。木の棒を持ちやすく削ったものに石で作られた刃物が縄で括り付けられている。
「ちょっと待ってください! 怪しいものではないんです!」
フルの言葉が通じていないのか青年は手に持った槍でフルを突いた。フルは勢いよく横に飛ぶことで運よく避けることができた。しかし、着地できず横から床に倒れた。このままでは次の一撃は避けられない。
「ノイ!」
フルが自分の死を覚悟したその瞬間後ろから声がした。フルの声でも老人の声でも青年の声でもない。それはつい数時間前に聞いた声だった。
「ヨカチ先輩!」
ヨカチはフルを一目見ると老人に向かって声を出した。
「イトンステ。イクスキニス」
ヨカチの言葉を聞いた老人が青年に何か指示を出すと、槍の矛先が納められフルの危機は一応去った。
「ヨカチ先輩、これはいったい?」
「いいか、お前に言いたいことは山ほどあるが。まず、お前には礼儀ってものが無いのか? 監視していた時から思っていたことだが、お前は無い物だらけだな」
「どういうことですか!? 礼儀くらい私にだってあります!」
「ならお前の行動を思い返すんだな」
フルはモラモイノへ来てからの行動を思い返す。思い返すと言ってもここへ来て、この大きなテントの中に入っただけなのだが。
「っは!」
「気づいたようだな。お前は人の家に堂々と侵入したんだ。しかもここは長老の家だ。攻撃されても何も文句は言えんな」
このテントのようなものは彼らの家だ。しかも長老の家。すると目の前の老人こそが長老その人なのだろう。そんな長老の家をフルは何の許可もなく土足で踏み込んだ。攻撃されても仕方なかった。
「でもヨカチ先輩はどうしてここに? 先に帰ったはずでは?」
「それはボクに助けてほしくなかったと言いたいのか?」
「いえ! 違います! 純粋に気になって」
「監視対象が死んだりでもしたらボクの責任問題になるからな。何度も言うがボクはこれ以上面倒ごとはごめんだ」
何かと言い訳をしているがフルが心配になって戻ってきてくれたのだろう。素直に言えばいいのにとフルは思ったが、ヨカチの優しさが今は嬉しかった。
「どんな理由だったにせよ本当に助かりました。ありがとうございました!」
照れているのかフルの礼への返答はなかった。
「それにしてもヨカチ先輩はここの言葉を話せるんですね。私には何を言っているのかさっぱりですよ」
「ボクは学執会の会長という立場だ。ボクは学校を良くするため人に指示していかなければならない。しかし、ボクが使えない言語があると、その言葉を使う生徒に命令できない。それだけだ」
「すごいですね。ちなみに言語はいくつぐらい話せるんですか?」
「ボクに話せない言語などない」
「それはすごいですけど、本当ですか?」
「当然だ」
フルは魔がさして少し試したくなった。
「ヨカチ先輩、チッス!」
「フリィーペン、チッス!」
ヨカチは涼しげに言い返してきた。
「御見それしました」
「お前はこんなことをするためにここに来たのか?」
「そうでした! ここならカナンブ遺跡について、そして石像に刻まれていたリアートについて何か聞かないと!」
「それなら私が聞いてこよう。お前は言葉を話せないだろう。それに彼らに対するお前の印象は最悪だ」
「そうですね。お願いします」
ヨカチは老人に何やら話しかけるとカーテンのように布で仕切られている部屋へと老人と共に入っていった。フルは居心地の悪さを感じ、青年にペコっと謝罪の意味を込めてお辞儀したあと、長老の住居から出た。
雨に打たれながら外でヨカチの帰りを待つこと30分。長老のテントからヨカチが出てくる。
「どうでした!? 何かわかりましたか?」
「ああ。お前が知りたそうなことを聞けた」
早速フルは鞄からメモ帳を取り出し話を聞く体制を整える。フルのメモ帳にはしっかりとリアートという単語が書かれていた。
「まず、リアートという単語についてだ。ボクたちが知っているリアートというのは我がキタレイ大学の所在地である都市の名前だ。それはいいな?」
フルもそれにはすぐ気づいていたので首を縦に振る。
「はい」
「では、このリアートという都市の名前の由来は知っているか?」
「由来、ですか。知りません」
「ボクも彼らから聞いたのだが、リアートという都市の名前はある民族の名前から取られている。その民族はかつて今のリアートがある場所で暮らしていた。その民族というのがリアートだ」
「つまり、私たちの大学がある都市の名前はかつてそこに住んでいた民族の名前からそのまま取られたということですね?」
「ああ。そしてその民族はお前と同じスタルシア人だ」
自分と同じ民族がかつて暮らしていた場所で自分は通っていることにどこか運命めいたものをフルは感じた。
「そしてリアートにはとても親しくしていた者が存在する。彼らは今や一般的になっているが…」
「もしかしてカラクリ師ですか?」
「そうだ。リアートの民はカラクリ師と深く親交があった。そしてリアートはカラクリ師たちからあるものを預かっていた」
「あるもの?」
「アンリレの秘宝というものらしい」
フルはここに来て知っている言葉が出てきたことに驚く。そしてアンリレの秘宝はヘリアンカと関連がとても深い。そしてフルはやはりこの遺跡はヘリアンカと関わりがあったのだと確信した。
「ボクはさっき彼らから初めて聞いたのだがアンリレの秘宝のことは知っているか?」
エリオットに何か危害が加わることを恐れてフルは友達がその一つを持っていると明かすことは控えた。それにフローレスからも秘宝について口外するなと言われていた。
「ええと、知らないですね」
「そうか。簡単に言うとアンリレの秘宝とはヘリアンカを護るために作られた魔道具のことらしい。古のカラクリ師たちが作りだした最高傑作だそうだ。当時は単に秘宝と呼ばれていたようだがな。その技術は失われ現代のカラクリ師たちでは再現不可能なものでもあるらしい。さらに言えばその力は強大でそれを欲しがる連中は後を絶たないと言っていた」
「例えばなんですが、反帝国連盟も狙っていたりするんでしょうか?」
「アンリレの秘宝を手に入れればテロを起こすことなど容易いだろうな。国を転覆させることなど時間の問題になる。そんな代物が本当にあればの話だがな」
「ですよね。聞いてみただけです」
「話を戻すぞ。そのアンリレの秘宝をリアートの民はヘリアンカが復活するときのため悪しき者の手に渡らぬように各地に隠した。その場所の一つがカナンブ遺跡だ」
「え! ということはあの遺跡にはアンリレの秘宝が眠っているんですか?」
「いや、今あの遺跡には何もない。もしあるのなら既にモラモイノの民が掘り出している」
「そうですよね」
「落ち込むのは早い。このモラモイノに住む彼らには代々伝わる伝承がある」
「どんなものですか?」
「『神の魂甦りし時、我らの秘宝が再び揃う。両指を地に添え空は光に包まれん』というものだ」
神とはヘリアンカのことだろうか。そうするとヘリアンカはいつか復活し、その時にアンリレの秘宝を集める必要があるのか。フルは頭をフル回転させたが全くわからなかった。
「さっぱり意味がわかりませんね」
「この伝承で重要なところは後半の両指を地に添えるというところだ。この両指というのはアンリレの秘宝を指している」
「両指、つまりアンリレの秘宝は全部で10個あるということですか?」
「ああ。現実に秘宝があったらな」
まさか、アンリレの秘宝が10個も存在していたとは。フルは秘宝についてほとんど知らなかったが、秘宝を探すことがヘリアンカを知ることに繋がると確信できた。フルが進むべき道が今、決まった。
「ヨカチ先輩」
「なんだ」
「ありがとうございました。これで私の進むべき道がわかった気がします。私はアンリレの秘宝を集めにいきます」
「そうか、それがお前の決めた道なのだな。ボクにとってお前はただの監視対象だ。好きにすればいい。アンリレの秘宝なんて伝承の中だけの存在だろうがな。だが、お前はアンリレの秘宝を手に入れて何がしたい?」
「私は知りたいんです。アンリレの秘宝が何なのか。そしてヘリアンカが何なのか。それがわかった時、私は前に進める気がする」
「つまり、お前はヘリアンカについて調べるためにアンリレの秘宝を手に入れるということだな?」
「はい」
「ならば何も言うまい。勝手にやるといい」
ヨカチはアンリレの秘宝の存在を夢物語だと思っているようだが、フルは存在していることを知っている。ヨカチがいなければリアートのことやアンリレの秘宝が10個あることなど知ることができなかっただろう。
今回はフル1人では何もできなかっただろう。ヨカチがいてくれたから情報を得られた。きっと秘宝の収集もフル一人ではできない。誰かの助けが必要だ。自分ができないことは仲間に助けてもらう。自分ができることがあれば仲間をサポートする。そうやって進んで行こう。
まずはあの機械好きの少年に声を掛けようとフルは思った。空を見上げると雨が上がったためか空には七色の虹が掛かっていた。




