三関封鎖か?
初めまして、来栖傳と申します。「小説家になろう」は初投稿です。
古代西洋風の国から英雄ヒーローたちが、古代日本に似た島国を目指します。
なんでこんな奇妙な世界なのかは、徐々に明らかにされます。
還暦すぎても中二病、徒然なるままにその日暮らし、趣味全開の小説や作詞作曲を地方でほそぼそ作ってきました。性癖的にファンタジー妄想多めなので、人生も大変苦労しました(笑)が、最近はこのような発表の場が出来たり、いい時代となりましたね。
長い対陣に誰も飽きてきたその日が決戦となった。
北の湾内に誘い込まれた形の「海の国」の軍勢が、敵の動きに気付いた時点で封鎖は始まっていた。
海から見える三方は、緑陰深き山々であり、正面の平野部には鉄壁と思われる敵本陣が有った。
唯一、開かれた北側に瑞穂の戦船が現れだした際は、まだいつもの小当たりと思えたが、その日は船の数が多すぎた。
「まずいな」
「はめられたな」
オトナシでさえ言葉にするほどの嫌な予感が、海の国の兵士たちに満ちていた。
「最近、兵糧が届かないのは、奴らが隠れて封鎖してやがったんだな」
シオジがうなる敵側の策が明らかになっていた。
敵は三方の山に隠れながらこちらの補給部隊を襲っていたに違いない。
そして、その戦力は当初迂回路を探していた海の軍を防いでいた、他の津の守備隊を転用したものだろう。
これで敵の狙いが持久戦からの兵糧攻めだったこと、そして機は十分とその姿を現したことになる。
「賢者、どうする?」
何かヒメと話し込むシオジに向かい、カンジが北を指さす。
「そう時間はなさそうだぜ。封鎖が完了すれば、もう降伏くらいしかすることが無くなるぜ」
「それは有りません」
ヒメが会話に割り込むと、傍らの「ナカツ」の船長に指示を与えだす。
ちなみに海の民の勢力圏内には、「ナカツ」という地名が3か所、「ツ」が5か所存在し、それぞれが現代でいう「本家」「元祖」を主張していた。「スガ」「ソガ」「ミヤ」などは、大小数えきれない。
話が逸れてしまったが、「ナカツ」の船長はヒメに深く頭を下げると自分たちの戦船に戻っていく。
「命大事に~」
ヒメが叫んだ。
「いったい何を」
「まあ辛い選択です」
ヒメは、それからも次々と船長や族長らを呼び寄せ、指示を与え続ける。
「軍師様は、何もしなくて良いのかよ」
「しますよ。でも彼らにはヒメさんが、最後に声をかけたという事実が必要なのです」
カンジが驚くのを尻目に、賢者が居住まいを正した。
「軍団長、カンジ殿。あなたに、貴方たちに、ヒメさんからの密命が下っております」
ナカツA(もう面倒だから、こう表記します)の船長と族長は笑いながらこれまでの人生を話し合っていた。「あれは驚いたな」「んだんだ。まさか、ああ来るとはな」「さしものワシもあの女どもからは逃げるしか出来なかったは、がははは」「わしは逃げ遅れて、悲惨じゃったのう、ははは、良い想い出じゃ」「思い出と言えば、良い想い出をくれたのう」「あの子の涙は久しぶりじゃ」「嫁入りを見たいものじゃのう」「わしらに叶うかの~」
目前に迫るは、外海との境目、岬の突端近くに配置された敵の戦船である。
「さあ、くそじじい、行くぞ」
「おう、がんこじじい、漏らすなよ」
「「おーい、瑞穂の衆。わしらは元祖ナカツのすっごい強い戦士団じゃ~」」
「???????」
「「おんしらに、降伏してやるから、誰か見張り役を寄こしてくれ~」」
「何を言っているんだ?強い戦士たちが、戦いもしないで下るとは?どういう了見だ?」
敵船の船べりに、偉そうな武者が現れ、どなり返してきた。
「なかなか「用心深い」の」「狙撃は無理じゃったのう」「まあ予想通り・・・」
「ウチのヒメ様が命大事にと送り出してくれたんじゃ、もうこちらは糧食が無くなったから、年寄りどもは降伏しろとのお情けじゃ。頼む下る故、飯を食わせてくれ~」
「そうじゃ、まずはメシじゃ、その後は酒も頼む。瑞穂の酒はうまいんじゃろう?」
ナカツAの民たちが降伏と食料をねだる海域のわずか数百メートル西側では、別の船から情けなさそうな叫び声が響いた。
「おーい、わ~はツの頭、ツノカミじゃ~降伏の申し込みは、ここで良いか~?」
「ツの民は、降伏じゃ、ほら、ゆくさどうぐも捨てるから~食べ物をくれ~」
(他の武器は隠しているけどな)
ソガノ民は芸術的であった。
「「「なかなかしぶといソガノ民。いずこに下ると人の言ふ。瑞穂に下ると我ら言ふ。豊受けしは恩、果たすなり。」」」
「待て、待てい、降伏を赦すと、こちらはまだ事得ておらぬ」
「いやいや、助かりまする。まったく、この数日、食に事欠く有様にて…」
「いや、待てい。なぜ上がってくる。いつのまに縄梯子を掛けた?」
「助かります。助かります」
双方の本陣からも岬の封鎖線で、何か異常が起きていることは視認できていたが、いったい何が起きているのかまではわからない。
「では、カンジ殿、みなさま」
海の民の本陣、船上ではシオジが扇を取り、南を指し示した。
「我ら精鋭は、敵の大将を取ります」
「「「「「「おう 」」」」」」
きっと執筆には直ぐに飽きて、別の自己表現に夢中になるでしょう。
その時もメディアミックスでは無いですが「海の民」からあまり離れない活動にします。現在企画中の一人歌芝居ティーパーティー(会費500円、会場:レンタルキッチンスタジオDish Dish様予定)でも「海の民」のしゃべりとテーマ曲独唱を組み込みたいと考えております。