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海の民 第一章  作者: 来栖 傳
8/9

ツヌガアルシト

瑞穂のクニでの初戦は、時系列を逆に辿って記述していきます。単に伏線を張るのが面倒だからではなく、(その意味も大きいですが)その方が描写したいテーマに焦点を当てられると感じるからです。


物語の「三関」は現在の敦賀市・小浜市・若狭町の三つの港と街道に有ったと想定している「関所」の総称を言います。なので、「三関の守将」は地方方面軍団長か後の戦国大名なみの存在と思われます。

東海道の鈴鹿の関や不破の関、逢坂の関などの「三関」とは、時代が違いますが、近畿を守る重要拠点だったことは同じです。物語当時の瑞穂の国中枢部にとって、日本海との陸路の短いこの地方が最も急所と捉えられていたはずとの考察から、海の民の橋頭保候補としました。

ところが次章からは、瑞穂の国の中枢が地方すら特定できない大混乱が起きるのですが・・・

 後から戦を振り返ると戦勝を決めたのは、戦況の飽和を見定めて敵将に向け放たれた直衛部隊による猪突でしたが、その切っ先は敵陣に迫りましたが届きはしませんでした。その点、敵将が強すぎました。



「あれは化け物だね」

シオジが、己の渾身の策を跳ねのけた敵将を称えます。

「まあ、こちらも本気では無かったしな」

「カンジさん、あの被り物をして、おれたちは鬼だ~とか叫びながら、素振り用の棒しか持たないで突進するんだから」

サクラも同意しながら、たんぽ槍を掲げて見せる。

「そういうお前ら師弟もな」

「え?師弟って…あ!エベ、あんた長刀はどうしたの?」

いつもの位置に控えているエベロアに気が回らなかったのか、サクラが驚いて尋ねると、彼女はサクラを直視しようとしないまま、

「あれはせっかくなので、保存用と観賞用にとっておきます」

と、今にも口笛でも吹きそうな様子である。

「保存用と観賞用って、2本もあげていないよ」

「じゃ、もう一本、お願いします」

「馬鹿なの?」



 師弟の言い争う姿を見ていたヒメが、こぶしを握り締めながら割って入ってくる。

「皆さん、良く頑張りました。命大事には、敵方の命も含みますので、その意味をよくわかってくださいましたね。ありがとうございます」

と一礼する。周囲には、あたたかな気分が充満した。

「「「こ、これがパフ!!」」」

隠れ英雄信者≒ヒメの英雄譚に影響を受けている者たちの中から、感嘆の声が上がった。


「相変わらず、いいところを掻っ攫っていくな、ヒメさんは」

同時に聴こえてきた馬蹄と注進の叫びに消され、賢者のつぶやきは誰にも拾われず消えていった。

エピソード5の別視点。「命大事に」ヒメ様のモットーは、概ね守られていたようです。

敵将は中央突破の勢いを見ただけで全軍降伏を決断しました。

それも本陣を守り切りながらです。

彼には一度は跳ね返せても、潮流が変わった戦全体がじり貧になり、勝ち切ることが不可能になったことが見えたのでしょう。

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