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海の民 第一章  作者: 来栖 傳
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黙っていれば、聖女に見えるのに

何故か、厨房見習いの俺が糧食担当官になった。


カンジによると似たようなものだそうだ。

(んなわけねえべ)

しかも何故か、ヒメさんのそばで軍師の役割もするらしい。


「かってわれらは※※※※※※※※※※--、いにしえの約定に基づきて-」

壇上では出陣の聖典が営まれている。


結局、サクラもヒメさんのお付きとして乗船することに、正式になった。

だが、大丈夫か、あの二人。

さっきから、壇上と裾でにらみ合いながら、火花を散らしている。


ヒメさんはヒメさんで、サクラに懐いていた黒い歴史が有るからな。

「はあ、宝塚」とか言って、憧れていたことを恥じているのだろう。


三十か所の港の代表が次々とヒメさんに挨拶をしていく。

どの顔もうれしそうだ。

「それでは、私たち黄金を取りにちょっと行ってきます」

「ははは、ヒメミコト様もなかなかな冗談で楽しませてくれようになりましたな」

「えっ?」

「えっ?」


よしよし、お互い好印象でよかった。

何がなんでも好印象ということにしておこう。

「賢者」

「なんだ、あんたか」

「この流れ、段取りと報告に感謝する」

「馬鹿に感謝されてもな、意味があるのかどうか?」

「まあ、そう言うな。お前も出世ができただろ」

筋肉バカが、俺の肩をバンバン叩いて笑いやがる。


実はこの戦略を描いたのは、ヒメさんと俺だ。

俺としては義勇軍として参加できれば良かっただけなのだが。

「黄金の国」に安全に行き来して、何かを持ち帰られるかも知れないというのが、一番助けになった。しかし発想はさすがだ。黒い。なかなかに黒い。俺の弟子なだけはある。


ジダンも近衛の副将だ。

あのバカが…

よほどに忠心を買われたんだろう。

肉の盾として。


まあ死なない程度には活躍させてやる。

何とは言っても、俺自身にしてもこれまでの冒険とは規模の違う戦いになる。

「賢者って、そういう意味だったんだ」と酒場のジジイどもに言われたくはない。


飼っていた白鳥が放たれた。

「おお、瑞兆だ」

いやオメーラ知っていたよね、舞台のそでで白鳥を押さえていたの。

ヒメさんなんか一羽一羽に名前まで付けていたし。


「さあ、黄金、黄金」

ヒメさんが緩みっ放しになった笑顔で鼻歌を口ずさんでいる。

黙っていれば、聖女に見えるのに、なぜか俺の周りは残念な奴が多い。


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