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長命花と7日族のコビト

作者: ゆきの

花が咲いていました。


いつもそこに咲いていました。


けれど 誰も花には気づきません。



ぱたぱたぱた 大変だ大変だ 遅刻だ 仕事に遅れるぞ

ぶんぶんぶん 今日はいい天気だ 良い花に巡り会えるといいな



みんな忙しそうにして 

目の前を通り過ぎてゆきます。


「どうして 誰も おいらに気づかないのかな。

 おいらここにいるのに・・・」


もっと綺麗に咲かないと

ダメなんだろうか。



花はとても不安になりました。


※※※


次の日 コビトがやってきました。

歌の大好きな コビトです。


 ランランラ〜♫ 


 ああー見えたらいいのになぁ♫


 君は今 どんな気持ちー♫


 嬉しいのかな♪ 笑ってるのかな♪


 泣いてるのかな♪ 悲しいのかな…♪



…あれ?


コビトは落ち込んでいる花を

見つけました。友達の”メウ”です。


「やほーメウー!どうしたの?元気ないね」

「…ソラ」


落ち込んでいたメウは友達のソラに

悩みを打ち明けました。


「そっかー。またダメだったんだね」

「…うん。…昔はこんなことなかったのにね。」

「そうだね。」

「みんな忙しいのかな」

「うん、そうかもしれない。歩いてる人みんなバタバタしてるもん。」

「…そっかぁ。さみしいね。」

「うん。そうだね…」


二人はしばらく夜を見上げて

綺麗な星空やお月さまを静かに眺めていました。


「…おいら、もういいかな。」

「? なにが?」

「今日が最後の夜なんだ。さみしいけど誰も見てくれないなら、

 もう眠ってしまおうかな…って。」

「!メウ、今日だったんだ。」

「ふふふ、うん。」

「そっかぁ、明日なら一緒だったのにね。」

「ソラ、明日なの?」


ソラは夜に流れてゆく星を眺めてにこりと微笑いました。


「うん、今日で6日目だから、明日で7日。

 7日族は7日が天寿だからね。」


メウはソラをじっと見つめて、

やがて地面を見つめ、

ぽつりとつぶやきました。


「そっかぁ、それならおいらも明日が良かったなぁ。」

「ほんとだねー!」

「…でもまたどこかで会えるよね。きっと…」

「へへへ〜、そうだね。きっと会えるよ。」

「うん!」


メウは笑いながらでもやはりどこか寂しそうにしていました。

ソラは微笑みながらメウをじっと見てこう言いました。


「あきらめないで頑張っていたら絶対夢は叶うって」

「?」

「ママが言ってたんだ。さっき、メウ言ってたでしょう?

 もう眠ろうかなって。

 ねぇ、メウ。あとちょっとだけど、最後まで頑張ろうよ。

 もう一度だれかに見てもらいたかったんでしょう?」

「…」

「きっと大丈夫だから。まだ時間あるのに、途中でやめちゃったら

 もったいないよ。」

「…うん、そうだね。」


メウはソラの笑顔を見て、心のさみしさが少しだけ

和らいだのを感じました。ソラの言う通りまだ時間はある。

最後まで頑張ってみようとそうメウが考えていたところ…


(ソラ!誰か来るよ!!)

(え?)


「あ、お母さーん。花咲いてるよぉー。」


(ヒトだ!)

(大丈夫だよメウ。僕、人には見えないから)

(あ、そうだったね)


メウは慌てていました。数百年ぶりに人に気づいてもらえたことが嬉しくて、

自分の内側にある何かが熱くなってドキドキしはじめたのを感じました。


「あらどこに?」

「ほら、ここー」

「まぁ、本当ねー、いつも通るのに気づかなかったわ。」


女の子はメウを見て宝物を見つけたように瞳をキラキラさせて

こう言いました。


「わぁ、綺麗な花だねー…」


「こんなところに咲いてたんだねー」


メウは知っていました。

その言葉が温かいものだと。

自分の中にあった寂しさがゆるやかに消えて、

かわりに温かいもので満たされていくのを、

メウはちゃんと

覚えていました。


「あら、大変もうこんな時間。急ぎましょう。」

「はーい」


女の子は笑顔でメウに手をひらひらさせて、バイバイと

小さな声で言いました。そうして、お母さんと手をつないで、

帰っていきました。


「………さ、さいごって何があるか本当にわからないね。」

「…でしょ?」


メウはしばらくドキドキしていましたが、やがて落ち着いて、

だけどまだ温かい気持ちのままソラに言いました。


「…ありがとう、ソラ。嬉しかった。」

「うん!!」


ソラも嬉しそうに笑っていました。


「ソラはどうするの?」

「んー…、もう少し散歩してから

 ここにまた戻ってくるよ。」

「そっか!それじゃおいら先にいくね」

「うん」

「またね、ソラ」

「うん、またどこかで…」


メウの身体は瞬きのうちに消えて、光の種子となってふわふわと

風と共に空へと舞い上がっていきました。


ソラはやはり夜を見上げて、流れゆく星と共にその光を眺め、

しばらくそこに留まっていましたが、

ソラもしばらくして、最後の散歩に出かけました。



 ランランラ〜♫ 


 ああー見えたらいいのになぁ♫


 君は今 どんな気持ちー♫


 嬉しいのかな♪ 笑ってるのかな♪


 泣いてるのかな♪ 悲しいのかな…♪




 君は 知らない いつだって

 

 ぼくの最期 君は長生きのくせに


 忘れっぽくって 寂しがりさ


 だから ぼくが 君の最期


 いつだって 笑顔にしてやるんだ。


 だから ぼくは 全部 思い出す


 夢は叶うよいつだって


 夢は夢だよいつだって


 ぼくは 知ってる いつだって


 だから ぼくは 君より 博識さ


 たった7日のいのちでも 頭の中は


 君より長生きしてるよ


 僕の身体は砂に還るけど また新しい身体で


 君におはようって真っ先に言うよ


 君を起こすのも 僕の役目さ


 君には君の人生 僕には僕の人生


 いつも側にはいられないけど


 それだけは 僕の役目さ いつだって

ちなみに二人のはじめての会話と第一印象

ソラ:水をたくさん吸ったスポンジみたいにぶよぶよしていて、おもしろいね。

(ちょっとぶさいくな花だな。)

メウ:そのヘンテコなとんがり帽子とっても素敵だね。

(はちの毒針より痛そうだな、あの帽子の先っちょ)

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