幕間 コーデリアの茶会
今日はコーデリアからお茶会に誘われていた。
メンバーはコーデリアの友人のサラ令嬢とシーラ令嬢を含む8名程のメンバーだ。
先日の顔合わせ以来、何故かコーデリアが自分に絡んでくる。
しかも、やたらと優しいのだ。
なんとかして化けの皮を剥がそうと苦心するものの、毎回空振りに終わっている。
せっかく悪評を流したり、いじめられたとさめざめと泣きたいのに、全く上手くいかない。
こちらはニコニコいい子ぶりながら対応しなければいけないと言うのに、ちょっとした嫌味にも相手は気にもしていない雰囲気だ。
「原作のコーデリアは、生まれの為に人の悪意に敏感で、下位の序列の貴族にはやたらと厳しかったはずなのに…」
今日も…
「前回昼食にお誘いできませんでしたから、ぜひ一度お茶会に参加くださいませ。」
などと裏表の無さそうな笑顔で言われてしまい、参加する事になった。
ここで上手く彼女の悪評を流せれば良いのだが…
コーデリアはワガママでレッスンなど碌に受けずに育った異端児として描かれていたが、実際のコーデリアはいつ見ても実に優雅で原作を知らなければ、素敵なお姫様だと見惚れていただろう。
会場に到着し、明るい黄緑色のドレスを纏った彼女をみてそう思う。
もしも、彼女が性格が破綻していないとしたら、自分のこのスペックでどう彼女に太刀打ちしたら良いのか…
つらつらと考えていると、コーデリアが嬉しそうに近寄ってきた。
「アンゼリカ令嬢、ご機嫌よう!さあ、こちらへおかけくださいませ。」
円卓の席に案内してくれる。
テーブルの中心には、白いウサギの花瓶にオレンジ色のガーベラが飾られている。
テーブルクロスには、ロイヤルブルーのリボンで縁取りがされており、全体的とても可愛らしい。
派手好みな彼女のテイストとは思えない、趣味の良さだ。
「お招きいただきありがとうございます。今日を楽しみにしておりました。これはお土産です。」
侍女にお土産を渡す。
中身は無難にラベンダーのポプリだ。
特に細工もしていない、侍女が作った普通の品だ。
「まあ!!よろしいのですか?」
コーデリアは大喜びで匂いを嗅いでいる。
「ありがとうございます。私、ラベンダー大好きなので、嬉しいですわ。」
コーデリアの侍女がお茶を配り、いよいよ茶会が始まる。
お菓子は、この世界では中々見ないレベルにハイレベルな品々だ。
流石に金にあかせた公爵令嬢ね。
ショートケーキにモンブラン…シュークリームにスコーン、サンドイッチにマカロン、それにたくさんの焼き菓子。
こんな物が毎日食べられるようになるなら、早く結婚したいわ…
そう思っていると…
「やっぱり、コーデリアのお菓子は最高なのですぅ。」
シーラ令嬢が声を上げる。
「そうね。こんなに美味しい品々を普及させてくれたコーデリアには感謝致しますわ!」
サラ令嬢までおかしな事を言い始めた。
続いて、他の令嬢までいい出した。
「コーデリア様、次はぜひぜひ我が領地に支店を置いていただけませんか?」
「あら!抜け駆けはよくなくてよ?規模でいえば、まずは温泉街スプリングスでは?」
「ふふふ…貴女の領地に近いですものね。」
「バレてしまいましたか?」
きゃっきゃと楽しそうだが…
「こちら…すべてコーデリア…様がお作りになったのですか?」
一気に血の気が引き、手は震え、身体がずっしりと重たく感じる…
現実から切り離されたような感覚が襲う。
「ええ、今日はせっかくのお茶会ですので。あ、でもチョコレートとスコーンはアカデミーそばの商会支店から取り寄せたものですわ!」
「コーデリアはすでに大きな商会を運営していますからねぇ。商才があって誇らしいのです。」
シーラ令嬢が得意げな顔をする。
「え?チョコレート。スコーン?」
まさか。
まさか!!
そんな!!ありえないわ。
考えた中にはなかった最悪のシナリオだ。
コーデリアは私と同じ転生者だと言うの?!
だとしたら…
なぜか仲良さげなギルバートや日本にあった馴染み深いスイーツの数々にも納得できる。
やられた…!
どうしよう…
まさか悪役に先に攻略されてしまうなんて!!
…それなら、どうしてギルバートが王妃の断罪イベントしていないのかしら。
…もしかして…ただただ転生しただけとか?
そんな都合の良い事ある?
それにしても、状況はかなり悪い。
悪役令嬢は転生者で前世の知識で無双の真っ最中。
しかも攻略対象との関係は良好…
どうしたら、この関係に割って入れるのか。
①いっそのことお友達になる。
②王妃側について私が悪役令嬢になる。
③私も知識無双をする。
④攻略を諦めて穏やかに過ごす。
ゲームのイベントクラッシャーのコーデリアがいる限り、もうゲームシナリオ通りの展開は望めないだろう。
それなら…
①はなんだか嫌。
転生者同士仲良くしましょう!とでも言えば仲良くしてくれそうな雰囲気があるが、そうすれば目標であるギルバートとの結婚が上手くいかないかもしれない。
②は下手を打てば、私まで処刑されかねないけれど…
上手くいけば、意趣返しに先王暗殺の証拠を上手いこと消してあげて、ギルバートが即位できないように邪魔する事はできるかもしれない。
でも、王妃が私まで消さない保証はないしなあ。
③はありよね!
ギルバート達がコーデリアに魅力を感じているのは、前世知識が原因だろうから、私も披露すれば、簡単にお金と好感度が手に入るはずだ。
④は今のところ無しよね。
まだまだ諦めるには早いわ。
そうと決まれば!
早速私も無双しなくては。
「あの…アリア様?何かございましたか?」
ふと顔を上げると、コーデリアがこちらを心配そうに見ている。
どうもヒロインと知っている風ではないから、やはりただの転生者だろう。
「…いえ、あまりにも美味しくて少しボーっとしてしまいましたわ。申し訳ありません。」
「あらまあ!そうですわよね。コーデリアは本当に料理が上手で驚きますわよね?」
サラ令嬢が頷きながら力強く言う。
「そうですか…それでしたら良いのですが。もう一つマカロンいかがですか?」
「いただきますわ。」
マカロンを齧りながら、自分が出すお店や披露する知識の妄想をする。
帰り際。
「アリア様が気に入ってくださっていたようですので…」
そう言うと、マカロンとチョレートの包みを持たせてくれる。
「ありがとうございます。コーデリア様、とても有意義な時間でしたわ。」
ええ、貴女の正体がわかりましたので…
とてもね。
「まあ!それはよかったですわ。またお誘い差し上げても?」
「もちろんです。私でよければぜひ!」
次はできればなんの意味もない女子ではなくて、攻略対象連れてきて欲しいけどね。
お土産を手に、会場を去るアリアだった。
タイトル修正しました!




