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第77話 アカデミー到着

入学の日…

美しい気合いを入れたローズレッドのドレスを着せてもらう。

カロンとイオは護衛としてついてくるので、2人もきちんとした正装をしている。

「窮屈でたまらん。焼いていいか?」

などといいながら服を焼こうとするイオをなんとか宥め、着てもらっている。

紺地に金色の軍服風な姿はせっかく似合っているのだから、焼かないで欲しい。


「じゃあリア、オリエンテーション会場に行こうか。」

ギルバートは白地に金糸の刺繍が入った服装で、こちらもとてもゴージャスでかっこいい。

しばらく行方知れずだった王子が公に姿を現すのだから、ちょっと豪華にするらしい。

馬車から降りると、同じく本年度の入学らしい人達が大勢いる。

皆立ち話をするか、真ん中にある大きな建物に向かっている。

何というか、ギリシャ風の白い柱のある美術館のような建物だ。

周りには他にも、レンガの塔やガラス張りのドームなどがある。

奥の大きな建物は図書館だろうか…

本を抱えた人がたくさんいる。


ギルバートが私をエスコートしながら歩き出すと、周りが俄かにザワザワし始めた。

「ちょっと…あれってもしかして…」

「うそ、そんなハズないわ。」

「殿下は療養中では?」

「隣にいるのは…コーデリア嬢ね。子爵からスキルを盗んで公爵家にまんまと養子に入ったというウワサは本当なのかしら?」

「え?どうして殿下があんな貴腐人と?…食べ残しを腐らせる腐敗能力者なのでしょう?殿下が危ないわ。」

「ええ、お助けしないと。」

「きっとご存知ないのね。」

「盗みだなんて…浅ましい方とは知らないのだわ。不潔なスキルの低俗な婦人だという事も…」

「ずっと療養されていたのだもの。教えて差し上げなくちゃ。」


うーん。

聞こえる、よく聞こえる。

私の悪口と、ギルバートが本物か疑う声が。

私のは別に気にする必要ないレベルだけど。

盗んだとか根も歯もないウソだしね。


立ち話をしていた集団のなかでも、一際華やかな集団がこちらにツカツカと近寄ってきた。

扇子で口元を隠した3人組だ。

オレンジ色の髪をモリモリに盛った猫目のお嬢様が、先頭に立っている。

その後ろには、紫色のふわふわ髪の少女と、ピンク色の髪をハーフアップにした少女がいる。


立ち塞がった3人を無視して、ギルバートがズンズン進もうとすると、慌てて呼びかけられる。

普段なら、ここで無視されるなんて事は経験がないだろうから、ちょっと気の毒だ。

そんな想いも、彼女達の発言で粉々になった。

「あの…ギルバート殿下…ですわよね?ワタクシ、エカチェリーナ・イヴォンスキーと申しますの。侯爵家の次女ですわ。」

「…。どうも、イヴォンスキー嬢。たしかに、私はギルバート・リアトリスだよ。何か私に用かな?」

せっかくの復活アピールの日なのに、なんとなくギルバートが冷たい。

あ、もしかして…さっきの聴こえていたのかな?

私なら気にしなくていいのに。

「はい!殿下…実は申し上げにくいのですが…」

扇子越しにこちらをチラッとみてくる。

「そちらの令嬢はエスコートすると、殿下の評判に良くない影響を与えますわ。」

話しかけられてもいないのに、周りの令嬢が話始める。

「ですので、エスコートするなら、エカチェリーナ様がよろしいですわ!!」

「ええ…身分も資質も揃っておりますし…こうしてみると、とってもお似合いのカップルですわ。」

きゃっきゃとし始める。

「…まあ!カップルだなんて、なるならワタクシ達の場合は、フィアンセという正式な存在ですわよね?殿下。」

侯爵令嬢だからっていいすぎじゃないのかな。

ギルバートみてテンション上がりすぎたとか?

それにしても、義母達上手いこと悪口広めたなぁ…


完全な事実無根だし、こんな事言えば後で都合が悪くなるのはそっちなのに。

しかも私、明らかに貴女より家の格は上よね。

元々子爵家だからって侮っているとか?


何か言わなくては、そう思いかけた時…

「失礼、コーデリア嬢。お久しぶりです。」

殿下が、少女達と話しているのを見て、たくさんの令嬢や令息が私に話しかけに来た。

先頭に立っているのは、サラ・コスコフ侯爵令嬢だ。

サラはスラリと背が高く、美しい波打つ茶髪に宝石の様な紫色の瞳をしている。

令嬢とは茶会で仲良くなり、今ではパンやケーキの新作を送る間柄だ。

サラは味覚が鋭くて流行りにも詳しいので、頼れる相談相手なのだ。

他にも、シーラ・マルクス伯爵令嬢は砂糖や香辛料の販売元で、香辛料の販売の際にお父様と一緒に交渉に行った時からの仲良しだ。

マルクス伯爵はアルメリア伯爵と同じく、今は香辛料部門を一部受け持ってくれている。


他にも、商会を運営する上で知り合った方達が大勢やって来て、一緒に学べるのが楽しみだと言ってくれる。

私も嬉しいくなった時…

やはりエカチェリーナ嬢は、水をさしてくる。


「あの…皆様?特にコスコフ侯爵令嬢。この方はあまり褒められたような方ではなくてよ?」

「エカチェリーナ嬢。私の友人を愚弄するのはおやめくださいませ。」

ピシャリとサラが告げる。

「まあ!ワタクシは皆様を思って…ねぇ、殿下!」

「まだいいますか。わからないなら逆に聞きますが。貴女、もし自分ならゴミからさらに腐敗臭を撒き散らせる能力を、盗んでまで欲しますか?」

「えっ?ワタクシにはそんな下劣な能力は不要…です…わ…」

「いらないのですね。」

「で、ですが…ワタクシはたしかに…」

「たしかに聞いた先が、コーデリア嬢のご実家でしたら、貴女は嘘も見抜けない間抜けという事になりますわね。」

「なっ!どうしてそんな事が…?」

「私の父は裁判所の長官なのをお忘れですか?」

「それがなんの…」

せっかく友人に会えたのに、こんなところで邪魔されてもつまらない。

さっさと終わらせて他の人と話そう。


「エカチェリーナ様、私の事をよくご存知のようですが…貴族の令嬢たるもの、格上の家門の者を無視して勝手に話しかけるのはどうかと思いますが?」

エカチェリーナ嬢がぐっと言葉に詰まる。

「勝手に話しかけて来た事は許して差し上げますので、どいていただけますか?…あと、サラ様が言うように私は盗みなどしておりませんので。殿下のお耳に入れるなら、きちんと裏を取った正しい情報にすべきだと思いますわ。」

「ですが…貴女は…」

尚もいい募ろうとしたが、先に取り巻きの方がまずいと思ったらしい。

ズルズルとエカチェリーナを引っ張っていく。

「エカチェリーナ様?ちょっと用があったのを思い出しましたの。」

「ええ、早く参りましょう?」


「コーデリア様に喧嘩をふっかけるなど…元気の良い令嬢ですわね。」

「全くですぅ。あの方たちはぁ、明日からまたカチカチパンと味無し肉でも食べれば良いのですぅ。」

シーラは藤色の髪に同じ色の瞳の神秘的な美少女なのに、かなり毒舌家だ。


私を支持してくれる人達も、貶してくる人以上にいるとわかり、これからの学園生活にほんの少し光明が見えた気がする。

コーデリアの性格がちょっと暗くなっていると指摘いただき、修正入れました!


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