第75話 アカデミー
アカデミー入学にあたり、ギルバートからアカデミーの説明を受けた。
「アカデミーは国から独立した、若者の研究機関のような場所なのです。」
「学校みたいな場所?」
「がっこうですか?」
「学校はこの国にはないの?子供達が集まって教育を受ける場所よ。」
「貴族の子供達は、個別に家庭教師をつけますからね…それに平民達は学問ではなく実際の実学が多いと聞いていますが…」
そっか、私も確かに学校行ってないわね。
「そうなのね。話の腰を折ってごめんなさい。」
「いえ、大丈夫ですよ。…アカデミーと言うのは、成人前後の貴族の子供達が集まり、2年間実力を高めたり、いかにして自分の能力を世の中に役立てていくか、実践を交えて考えたり研究したりする場所です。実際にそこで出来た人脈で商会を開いたり、魔道具を開発したりと自分自身の価値を、実家ないしは王宮に示して、大臣や内政官吏になるなどの実力披露の良い場所になります。特に、次男以降の爵位や領地を継げない子供達が多く集っていました。それと、実力重視な家系では、ここでの成果を一旦見る家庭もあります。」
「逆に何も成果がないと大変ね…」
「そうですね…なので今まではアカデミーには実力があって向上心や野心がある者しか来ませんでした。」
「でした?」
「はい、近年それを逆手に取って、貴族が子供を入学させて、自分の後継者がアカデミーを出た実力者だと見せかけるようになっています。」
「じゃあ今は人数増えたの?」
「はい、そうですね。三年程前から、成人したら一旦アカデミーに入れて、その後に後継にしたり嫁に出すのがはやっていますので、まとまった人数がいますよ。だからこそ、今はさらに人脈作りには良い場所になっているのです。」
それだと、ただのモラトリアムの場所というか…
若者の溜まり場と化していないのかしら。
「でも、もちろん当初の開発とか研究もあるのよね?」
「はい、もちろんです。依然として高レベルの研究で、その研究チームごと王宮の魔導局に配属になるほどですよ。」
「ところで、アカデミー側はそんな風に利用されてもいいの?」
「アカデミーとしては、特に試験がある訳ではないですし…そもそも、国をより良くしようと言う志ある若者を集めた場所なので…」
「…志なんて、如何様にも説明できるわね。」
「はい、入学方法も手紙と入学金のみですし…」
「ところで、アカデミーでは具体的にどう過ごすの?」
学校ではないならイメージが湧かない。
「そうですね、魔導局の講師が有志で来たり、騎士団がスカウト目的で開いている講座などがありますが…メインはコミュニティ活動ですね。」
「コミュニティ?」
「はい、それこそたくさんの団体がありますよ。」
ギルバートは分厚めな冊子をくれる。
「…攻撃スキル向上の会、薬学部、炎魔法研究会、妖精魔法研究会、大衆娯楽普及会…いろいろあるのね。」
様々な会と、主な功績が載っている。
へぇ、馬車の速度向上の魔道具もアカデミー発なのか…
「新規に、団体を立ち上げる人もたくさんいますし…団体は色々な会に所属する方がほとんどです。」
「ギルくんはもう考えているのよね?」
「はい、一応大体は…いくつかリアとご一緒出来ると嬉しいのですが。」
ギルバートはいつのまにか背が伸びて、リアと愛称で呼ぶようになった。
今は私より長身細身の、とても美形な王子様に仕上がっている。
「もちろんよ!手伝うために行くのだからね。」
「でも、リアのやりたい魔導具研究会はレオナルトと参加してくださいね。とても楽しみにしているの、知っていますよ。」
レオナルト様が、アカデミーに行けば自分レベルの才能が他にもいるだろうから、作りたくても作れないでいる、あんな機械やこんな機械を一緒に発明してくれる人が見つかるだろうって言っていたので、正直楽しみにしていました。
やっぱりバレていたわけね。
「ありがとう。ギル君」
「他にも薬学部とか、好みの物は気にせず参加してくださいね。」
「でも…」
「リアの役割は、この国の食文化関係なのですから、気にせず好きに動いていいのですよ。それに、現時点で自分が思っている以上に助かっているのですよ?」
「そう?」
ギルバートはこんな風に時々、私以上に大人に見える時がある。
「はい、もちろんです。それに、一部は一緒に入会してくださいね?寂しいですから、ずっと別々は嫌ですよ。」
やっぱり、私の可愛い弟分かも。
冊子を見ると、会は多岐に渡り、戰を想定した戦術を研究する会から、会話術を鍛える会、保存魔法の拡張や、マジックボックスの研究会などもある。
大規模の会の一つに、スキル活用を考える会がある。
氷系、幻術系など細分化した会もあるが、とりあえず皆ここには入るみたい。
ここでは、個々の能力の活かし方をみんなで討論するらしい。
あまり使い道がわからなかった能力の意外な活用法が見つかったりと、実績も中々あるようだ。
「これも参加してみようかしら…」
「ちなみに、3回目までは試験参加で、4回目からが本番参加なので、一回見てみて合わないと思ったらやめられますよ。」
説明を受けた私は、どの会に参加するか、真剣に考えるのだった。




