第8話 ギルバート
その後は3日に一度はギルバートの家に通い、ご飯を食べて、しばらくの備蓄を補充しに行った。
ギルバートはすっかり懐いてくれていて、もう1人弟ができたみたいでとっても楽しい。
家もキレイなので、時々台所を借りて料理して出来立てを食べてもらうこともある。
なんでもリスのように食べて、最近はあのガリガリは誰だったのか、と言うくらい健康的になった。
頬はほんのりピンクがかり、目つきが圧倒的に健康になった。
「はあ、ギル君かわいい…」
焼きたてのピザトーストをハムハム食べる美少年は見ているだけで癒しだ。
「そんな事言うの、リアお姉ちゃんだけですよ。」
赤くなり蜂蜜入りのミルクを飲む様まで可愛らしい。
「俺は?」
「へ?」
なんでメルヴィン?
かわいいかって?
「メルヴィンはどっちかというと、カッコいいよ。美形だし。」
少なくとも普段はかわいい感じではない。
尻尾振れてるのはかわいいけど…
頼もしい部類だよね。
いた事ないけどマイペースなお兄ちゃん系。
答えに満足したのか再び、フィラデルフィアサンドを食べ始める。
ガッツリ系のサンドイッチで、薄切りの牛肉ととろけるチーズがたっぷりと挟んである。
一度作ったらお気に入りで、また食べたいとリクエストが頻繁にくる。
肉はもちろん、エイジングビーフのステーキを細切れにしたものだから、かなり美味しいんだけどね。
チーズもパンも自家製だし。
「美味かった。また、頼む。」
「よかったわ。でも、お肉がだいぶなくなってきちゃって。あと2回分くらいしかないのよね。」
「何?!すぐに用意させる。」
やっぱりお肉は一大事なんだ。
でもそろそろ、自分のお金も欲しいなあ。
そうじゃないと自由に買い物しにくい…
メルヴィンはなんでも言えっていってくれるけど、あんまり甘えっぱなしは性に合わない。
「リアお姉ちゃん、どうしたんですか?」
「あー。ちょっと考え事していて。」
「悩みですか?」
「まあ、そうね。畑欲しいなぁと思ってさ。広い畑。」
それにはやっぱりお金がかかる。
「畑?ですか。」
「うん、いろいろ育ててみたいのよね。」
トマト栽培してトマトソースとか米作ったりとか…
やりたいけどやっぱり農業素人には無理かな?
しばらくギルバートは考えていたが、やがて巾着の奥から小さな鍵を取り出した。
「これ、お姉ちゃんに貸してあげます」
「これなぁに?」
「そのかわり、できたものでまた美味しいご飯つくってくれたら嬉しいです。」
そういうと、空中で鍵を開ける動作をした。
「こちらへどうぞ。リアお姉ちゃん。」
近寄ってみると、透明なドアの外はそとにつながっている。
出てみると、一面の広ーい平原で所々に、何か育てていたのか木がうわっている。
「近くに川もありますし、育てるには良い場所ですよ。」
ニコニコしながら鍵を渡してくれる。
「え?ここ使っていいの?」
「もちろんです。しばらく自由に使っててください。ないとは思いますが、僕に必要になったら前もっていいます。」
自由にしていいなんて!!
嬉しい〜!
「…でもギル君、どうしてこんな広い土地持ってるの?」
「……」
「あ、ごめん。言いたくないならいいの!!」
詮索したかったわけではない。
ギルバートは少し迷った顔をしたが、やがて穏やかに笑うと。
「リアお姉ちゃん、僕は実はこの国の前王の長子です。」
「ええ!!…たしか、王子様は重病で…それで今の王様、前王の従兄弟が即位したんじゃなかった?」
途端に苦々しげな顔になってしまう。
あ!また聞いてしまった、と思ったが。
「いいんです、聞いてください。僕もいつまでも、大好きなリアお姉ちゃんに、黙っていたくありませんから。」
「そうだったの…」
「ここは母方の土地で、元々直営でやっていた農地の跡地です。今は使うものも来るものもいませんので、どうぞ好きに使ってください。」
なるほど…
歳のわりにしっかりしているというか、賢いのはそのせいなのね。
でもどうして王子様ともあろうものが、あんな扱いだったんだろう。
「僕があんな扱いだったのは、現王妃の嫌がらせですよ。たぶん…本当に重病になって死ぬ事を期待しているんだと思います。ここにいる事は、元々の城の人達は知らず、メルヴィンだけが前王から狼族への依頼があったので来てくれたんです。…もっとも、まだ主と認めてくれないので、暗殺者が来た時に退けてくれるだけで、お願いなどはできません。」
「そうだったの?」
メルヴィンに聞く。
だから森に行きたいって言ったら、理由聞かれたのかな?
「ああ、認めたのはまだリアだけだ。」
「そうですよね。メルヴィンは誇り高きダイアウルフの先祖返りですから、認めてもらうのは大変そうです。リアお姉ちゃんはどうやったんですか?」
メルヴィンってそんなすごいの?
むしろ、私なんで認められたのかな?
「初対面で俺と肉、交換した。」
「えっ!!メルヴィンに、肉の交換を持ちかけたんですか!?…それは、さすがお姉ちゃんです。」
何?そんなにやばい事なわけ?
「……そもそも狼族は、下のものから上位者に肉を贈る事が主従を表しますからね。肉の交換は対等の証。断られれば命はありません。それだけの資質を示したんですね」
うーん、さすがですとギルバートは唸っている。
やばい、私全然知らなかった。
そんなに大事な事なら、先に教えて欲しかった。
だからあの後から、なぜかメルヴィンがいろいろ助けてくれるんだ。
何がよかったのかな?
無知すぎて逆に堂々としてたから?
それともやっぱり肉?




