第69話 絶好調のお店達
各お店が開店してから毎週、エルフ達と集まって、現状の確認をしていたが、一か月経った今当初の想定より早く繁盛している。
そこで、お父様やアルメリア伯爵、本部のミモザさんも集まっている。
場所は本部の会議室。
「それでは、各店から1か月経った報告をお願いします。まずはランタナ。パン屋《エルフの竈》から報告お願いします。」
「はい!まずはこちらをご覧ください。」
資料を渡してくれる。
ありがたい。
その資料には、開店からの来客数、種族、購入額、リピートの有無、二回目、三回目に買ったものなどの資料、売れ筋ランキングなどが載っている。
しかも、本店版と委託スペース版の2種類ある。
「ほう…本店は売り上げが1日あたり大金貨一枚、商会は金貨5枚か。出だしとしては悪くない数字では無いか?」
「お父様、ありがとうございます。ですが、初月はむしろもの珍しさで売り上げが上がる傾向にありますので、むしろ勝負は今からかと。」
「方策はあるのか?」
「ええ、ランタナとも話し合いまして。パン職人を新たに5名採用する事にいたしました。」
「それはまた、思い切りましたな。コーデリア嬢。」
「はい、伯爵。ですが現状では売り切れが、続いておりますので、このままでは機会の損失とお客様の不満を招いてしまいます。そこで、新たに増員を図り生産性を高めます。追加採用の5名には、誓約の魔道具を使い、生産の方法や材料を一切秘匿する事、および許可なく店外でパンを製造できない、レシピの全部または一部変更しての製造も不可という誓約を立てていただきました。その5名は、すでにランタナがレクチャーを開始しています。」
「なるほど…必要な措置であろうな。」
「はい、お父様。お父様に選んでいただいた最初のメンバー以外はまだ、完全に信用できませんから。」
その言葉で、ランタナをはじめとしたエルフ達が相好を崩した。
パン屋以外には、ケーキ屋は6名、レストランも6名追加採用している。
「この資料によると、予約販売も開始…とありますが?」
アルメリア伯爵が資料を眺めながら尋ねる。
「実は、すでにたくさんの貴族の屋敷からランタナを引き抜きたいというお話を、いただいておりまして…もちろんランタナだけではなく、全員なのですが。私としては了承できませんので、せめてもの代替案として、前日朝までに知らせていただければ、翌日商会本部で取り置くという予約サービスを始めようと思っています。」
「それで、落ち着いたらお前が前に言っていた、貴族のパン職人向け講座を始めるのかね?」
「ええ、お父様。ですが、世の常として、出せば必ず模倣する者が現れます。模倣者が原理を打ち立てる前に!情報はそれ自体に価値があるうちに売り切らなくてはなりません。」
「一理あるな。機が過ぎれば無為無価値よな。」
「はい!その通りなのです。思いの外、早く人気が出ましたので、実は明日から講座の予約を受け付けて…再来週から、全5回の初心者向け講座を開催します。」
「して価格は…?」
「ミスリル金貨一枚…を予定しておりますが…」
やっぱりボッタクリすぎ…?
前世でもレシピ開発者は結構高く売っていたし、いけたらいいな…くらいなのだけど。
「…む?」
やっぱりダメ?
お父様が眉間に皺を寄せる。
「コーデリア嬢、それはいくらなんでも破格すぎますぞ!!」
アルメリア伯爵もびっくりしている。
「そうよな…最低でもミスリル金貨3枚は取らなくては…」
「はい!公爵様。あのレシピを一部にせよ公開するのに、一枚は安すぎます!!」
「…そうですか?」
「ああ、娘よ。あの製法の秘密であれば、皆5枚でも喜んで出すだろう。我々貴族にとっては、ちょっとした投資額に過ぎん。」
貴族すごい…
貴族すごいよ…
ちょっと前まで無一文の私にはまだ、持てない感覚だ。
「では…思い切って5枚にしてみます。」
「うむ、それが良い。」
余談だが、この講座は大成功して何年も後まで予約が絶えない人気講座になったのだった。
ちなみに、講師は基本は私。
店も上手くいって、ギル君の顔に泥を塗る事も無さそうなので顔出ししたのだ。
最初こそ幼女が出てきて皆驚くが、スキルで色々やって見せると、あっという間に静かになった。
ついでに、屋敷でも失敗なく作れるように、ドライイーストをお土産にプレゼントしたところ、商会でドライイーストが、安定的に売れるようになった。
「なるほど…各店舗合わせた売り上げ高が、白金金貨2枚か…」
「ええ、人件費や材料費、お父様への毎月の返済額を除いても、まだかなりの額が残りますわ。」
これでもし、講座に5人来てくれたらお父様への支払いは完済できるな。
「コーデリアよ。上手くいっているご褒美に何かやろう。何が良い?王子との縁談でもなんでも用意するぞ」
えっ?
縁談はいらないわ。
しかも王子とか1番いらないわ。
お父様の顔を見ると、からかうような色があるので、面白がっているのだろう。
まあ、義理妹のフランソワだったら一も二もなく飛びついていただろうしね。
「いえ、お父様。縁談は不要です…私は、海の近くと、森の中にちょっとした蔵をいただきたいですわ。できれば、あまり騒がしく無い静かな場所が良いのですが。」
ウィスキーを作りたいのだが、上質なウィスキーには潮風や果樹園、山の香りは欠かせないからなぁ。
「ふむ、また変わったものを。良いだろう、要望をまた手紙でまとめてよこすが良い。」
こうして…
念願のウィスキー蔵を手に入れたのだった。
ちなみに…
パン屋の売り上げNo.1はバターロール。
ケーキ屋 《ステラミラ》の売り上げNo.1はシフォンケーキ。
レストラン《ネムスノヴァ》はテリヤキチキンだった。
商会でもテリヤキソースは売れ筋となり、私は嬉しい限りだった。
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