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幕間 フローレンスの誕生日

今日はフローレンスの誕生日。

娘に何をしたいか?と聞いたところ、コーデリア嬢が出したお店にまた行きたい、との事。


アルメリア伯爵は、商会のメンバーなのでレストランやケーキ屋のオーナーが誰かよく知っている。

そして、フローレンスもコーデリア嬢から直接聞いたようだが、コーデリア嬢からはできればしばらく内緒にしたいと言われているため、社交の場では口にしない。

口にはしないが、娘は友人が有能な事を大層嬉しく思っていて、実は他の人達にも自慢して周りたい気持ちだと言う事を、伯爵は知っている。


それなのに、伯爵がちょっと困った気持ちになったのは…

その店は今、大人気なのだ。

劇場前という好立地もあるが、そもそも出す品々のレベルは次元が違う。

宮廷で料理を食べた自分でさえ、プレオープンだから特別にと、娘と友人のメアリと共に招かれた時は度肝を抜かれた。

まずはふわふわすぎるパンに腰を抜かしそうになり…

野菜のドレッシングやスープの味、肉の焼き加減…

すべてが素晴らしかった。

さらに、デザートに食べた白桃のタルトとカスタードプリンという食べ物など、甘い物がそう好きでは無い自分でさえ、気がついたらなくなっていた。

妻や娘など、もう一つ食べるか持ち帰りたいと言って聞かなかった。


「いかがでしたか?」

帰り際にコーデリア嬢が恐る恐る聞いてきた際は、一切のお世辞抜きで…

「最高の夜でした。」

あまりの満足に感想はそれだった。


オープンから少しの間は、新しいもの好きな貴族や成り上がり貴族がちらほら出入りするに過ぎず、予約が取りやすかったのだが…

ひと月も立たないうちに、超人気店になってしまった。


この店はなかなか使える!!と思った伯爵が、ドヤ顔で、こんな素晴らしい店を知っているのですよ!と方々の会合に使いまくったからか…

「それともあれがまずかったか?」

妻のロザリンドが先日…

「今度の婦人たちの昼食会ウチの番なのですが、何か工夫できないかしら…?」

などと言うので、2階の半個室を予約してやったのだ。

「ご婦人達でしたら、スイーツを種類多めにお出ししますね!」

コーデリア嬢はそう言って婦人会向けのメニューを組んでくれた。

なんでもデザートプレートなるものが出るコースだかで…

サラダやパン、スープを婦人たちに合わせた気持ち少なめな量に抑えて、デザートを充実させた物らしい。


その会は大成功になり…

妻は社交界での発言権が増したとニコニコしていた。

なんでも、会合に参加した社交界の中心人物の1人、ロザリック侯爵夫人が絶賛したのだとか。

特にパンを気に入り、毎日商会のパンコーナーに朝から並ばせて確保しているらしい。

他にも、甘いもの好きなご婦人や、夫婦の記念日を迷っていたご婦人達にも、良い店を教えてもらったと感謝された!といつに無く喜んでいたのだ。

さらにその夫人達が夫を連れて行き…

夫が取引相手を連れて行き…

こんな具合にあっという間に人気店になってしまった。


レストランは3階建てになっており、一階は広いフロア席。

2階は半個室の席。

3階は完全個室で3部屋しか部屋が無い。

専ら、伯爵以上の貴族は2階以上の席が人気なのだが…


「これは、コーデリア嬢にダメ元でも頼んで見るしかないか…」

意を決して、手紙を送った伯爵だが…

直後に…

《3階の個室を抑えておきました。レストランを選んでいただき光栄です。お誕生日のスペシャルメニューを考えますので、苦手な食べ物があれば事前に教えてください。  コーデリア・アッシュベリー》

「素晴らしい返答の速さだな。いや、ありがたい。フローレンスは良い友人を持ったな。」


伯爵の中でコーデリアの株が密かに上がる。


そして誕生日当日。

3階の広々とした個室には、アルメリア伯爵の親戚や親しい相手。フローレンスの友人、妻の友人達が大勢やって来ていた。

コーデリア嬢は、フローレンスの誕生日であれば、料理を作る側に回りたいと言っていた。

フローレンスもメアリとコーデリア嬢は特別仲良し3人組でお誕生日会を別で済ませたから良いと言っていた。

コーデリア嬢からは、可愛い宝石をあしらった菓子入れにマカロンをたっぷり詰めた物をもらったと喜んでいた。


会場には、軽食やスイーツの乗ったテーブル、酒類のテーブルが用意されている。

通常は軽食やスイーツには全く人がいないのが常だが…

「フローレンス様!こちらのフルーツタルト、たまりませんわ。」

「フローレンス様、こちらのガトーショコラもはじめての味わいですが…大変美味しいですわ!」

内気なメアリまで、人の輪に参加してスイーツを食べている。

「私は…このシフォンケーキが…その…とても…とても美味しいと思います…」

もちろん夫人達も負けずにモリモリ食べている。


その向こうでは、男性達が酒と肴を褒めながらいい気分で会話をしている。

「皆様、お母様も…この後お料理が来るのですから、食べ過ぎはもったいないですわよ?」

「ええ、たしかにそうね、フローレンスちゃん。でもなかなか止まらないのよ!」

母は大人専用と言われたお酒入りのチョコレートを確保している。


「このお菓子…毎日食べたいわ。」

「ああ、実はある貴族が、シェフを屋敷に招きたいとミスリル金貨を積んだらしいのだが…キッパリと断られてしまったらしい。」

「おや、スタッドフォード子爵。そういう事でしたら、私が経営する商会にパンとスイーツと酒類でしたら取り扱いがありますよ。」

さりげなく、商会の宣伝をする。

「まあ!!それは嬉しい情報ですわね!あなた。」

「そうだな…料理は店に来るしか無いが…酒があるのは何よりですな。」


何人かの貴族は、下のフロア席にコッソリと自分の料理人を食べに来させる予定を立てているようだ。


このレストランの店内構造は、中々上手いと思う。

一階のフロアは、ソファ席の少し豪華な予約専用の席。

それと、椅子とテーブルの席がある。

この椅子とテーブルの席は、余裕がある平民や商人も利用できる。

平民や商人には衣装の貸し出しもしてくれるらしい。

気後れせずに食事を楽しめるように…との事だが。

貴族令嬢とは思えない斬新なアイデアだ。

これなら、店の雰囲気を守りつつも、貴族以外も取り込める。

密かに廉価版のメニューもあるんです、と悪戯っぽく笑っていた。


一階では、ソファ席の貴族がテーブル席の平民から優位を感じられ、2階はそんな者達を見下ろしながら食べられる。

3階はプライベートが保てる上に、個室を借り切れる財力がアピールできる。

1番下の一階席でさえ、大通りに面しているので、この人気店で食事をしてると言う優越感を味わえる。

もちろん、料理も最高だ。


ちなみに、食用花をあしらった美しいサラダ、タルタルソースと言うソースをつけるエビフライなるもの、コーンクリームコロッケというとろける食べ物、熟成肉のステーキなどからなる、お誕生日メニューは大好評だった。

フローレンスも大いに喜び。

「お父様、私の誕生日は毎年このお店がいいわ!!」

などと喜んでいた。

念のため、来年の予約を帰りに入れておくか…と考える伯爵だった。

幕間だから短めに…と思ったら長くなってしまいました。


いつも優しい感想、たくさんのブクマや星5評価をいただきありがとうございます!

皆様のおかげで、1か月毎日更新ができています。

今月も頑張ります♪


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