第66話 料理のレクチャー パン編
「あ、そういえば…殿下の替玉をしていた部下からこんな物を預かっているよ。」
「?これは…」
リュカ様がくれた袋には、3つのツルツルの真珠のような魔石が入っている。
「それは映像の魔石だよ。一応殿下のところに来た訪問客を全員撮影しておいたから、渡してもらえると嬉しいな。」
「ありがとうございます!」
「特に変わったところは無いと思うけど…」
「ギルくんに食べ物を届けに行くので、その時に渡しますね。」
「よろしく頼むよ。」
リュカ様には、お礼に気に入ってくれているワインを10本ほど渡す。
「うわあ、これは嬉しいなぁ…飲むのが楽しみだよ!」
何本か新作がある事に気がついたらしい。
「ロゼワインという種類を作ってみたので、よければ感想教えてください。」
「ああ、もちろんだよ。ありがとう!」
リュカ様はニコニコ顔で帰って行った。
翌日食べ物を届けにギルバートの家に向かい、早速例の魔石を見てみる。
カロンは不参加。
イオはどこかに散歩に行っている。
「映像の魔石ですか!僕初めてみますよ。」
ギルバートはワクワクしている。
メルヴィンは我関ぜず、持ってきたキャラメルシフォンケーキに夢中だ。
1つ目の魔石は、ローズマリーだった。
また食べ物を持って来たらしい。
2つ目の魔石は、見知らぬ女の子が映っていた。
「アリアさんってこの屋敷にいたかしら?見たことが無い気がする。」
「いない。」
「メルヴィン、やっぱりいないよね?」
「ああ。」
見てないのかと思ったら、きちんと見ているのね。
「…。」
「どうしたの?ギルくん。」
「いえ、なんでもありません。ただ…お姉ちゃんは優しかったなって思い出しただけです。」
「そう…それならいいのだけど。」
普通の貴族の娘さんに見えたし、たまたま森に立ち寄った子よね?
たぶん、ギルバートの調査に来た王妃のスパイではないと思う。
なんだかものすごく嫌そうなのに、わざわざギルバートの家に近寄って行ったのが気になるけど…
普通嫌なら帰るよね?
「リアお姉ちゃん、心配しなくてもスパイや暗殺者は接触対象に対して、こんなに露骨に嫌そうな顔は見せませんよ。」
そうかな…
逆にそれを逆手にとったとか…
考えすぎか。
「そうね。次、見ようか?」
最後の映像は傷んだ食べ物を持って来たメイドだった。
見終わった後は3人で昼食を取る。
今日はロールキャベツと温野菜サラダ。
それにバターロールだ。
ケチャップがあると色んなメニューに使えてとても便利。
その日は、ギルバートの家に散乱している竜の谷の資料を片付けて解散になった。
翌日。
パン担当のランタナさんがやってきた。
相変わらず、中性的な美形だけど…
性別って聞きにくい。
今日も髪は短めのボブで、片側だけ三つ編みにされている。
「では、お嬢様。改めまして、ランタナと申します。どうぞよろしくお願い申し上げます。」
「ええ、ランタナさんよろしくお願いしますね。」
「私にさん付けは不要です。」
「では、ランタナ。」
「はい。」
「私もできれば、名前で呼ばれたいわ。」
お嬢様はちょっとくすぐったいし。
「では、コーデリア様と。」
「それで、パン酵母の練習はどうかしら?早めに呼んでしまったからまだかしら?」
「いえ…大分安定して制作できるようになってきました。」
ランタナの作って来た生イーストを見ると、なかなかに良い状態だった。
「あら!いいじゃない。」
「お褒めいただき、光栄です。」
「ええ、このまま使えそうだから。今日は基本のバターロールを作りましょうか。」
ランタナと一緒にバターロールを作る。
発酵をスキルでやってしまう訳にはいかないので、やはり時間がかかったが、なんとか焼き上がる。
「わあ…はじめてにしては、よく焼けていると思うわ。」
流石に伊達に何年も料理人やって無いって事ね。
「食べてみましょう?」
ランタナにロールパンを渡す。
「!!美味しい…」
「焼きたては格別よね。」
ふんわりと焼き上がったロールパンは、表面は狐色に焼き上がり、中はしっとりふわふわで弾力がありとても美味しく焼けている。
少しだけ過発酵に感じるものの、十分に美味しい。
まだ時間があるので、くるみパンと食パンを練習する。
食パンは実は結構難易度が高くて、綺麗にできるまでが大変な部類のパンだ。
そのあとも、2週間毎日来てもらって基本の練習。
気温や湿度で発酵の進みは変わってしまうので、その匙加減を学んでもらっていた。
でもやはり飲み込みの早さが際だっており、最初の1週間でオーブンでの焼き加減や発酵種の仕込みはマスターしてしまった。
2週間後からは、チョコレートとケーキのレクチャーを開始したため、毎日の顔合わせはなくなったが、ランタナは個人的に毎日遅くまで練習していると言っており、レクチャーの日によく焼けた物を持ってくるのが恒例になっていった。
ちなみに、ランタナが開店までに焼けるようになったもの…
食パン
バターロール
シナモンロール
メロンパン
クリームパン
バケット
クロワッサン
デニッシュ各種
ランタナは手の周りを冷気や熱気で覆う事ができるので、クロワッサン系も難なく作ることができて羨ましい…
ランタナ曰く、この程度であれば城の料理人エルフはほぼ全員できるのだとか。
流石に魔力の高い種族は違うわね。
感想いただき、リュカからの報告まだ書いていなかった!と気がついたので書きました。
落ち着いたらお返事をと思っていたら、無くなっておりましたのでので…
この場でお礼申し上げます。




