第56話 販売会議 後編
「そうか…あの料理を出すレストランと菓子類を扱う専門店も必要だな。」
「はい、お父様。でも…今召し上がっているプレーンのチョコレートに関しては、複雑な機械が必要ですので、再現が難しいかもしれませんわ。」
「そうか…それなら、しばらくは材料は自分で作るか?」
「はい、素材のチョコレートは用意しますので、あとの作業をお願いしたく思いますわ。そちらも繊細な温度管理が必要な仕事なのですが…」
トリュフとか生チョコとかつくって販売してもらえばいいよね。
マディアンとかナッツ入りも捨てがたいし…
「その仕事、ぜひ私に。」
黄緑に近い金髪ロングのエルフが立候補する。
「あ、お店としては、ケーキ類と当面は同じお店で扱ってもらおうと思っているのですが。」
「でしたら、僕もお願いします。」
こちらは顔まわりの髪だけが長い、ブロンドの青年。
明るい緑の瞳の美青年だ。
「ふむ、リナリアとエンジュか。」
リナリアさんが女性で、エンジュさんが男性ね。
最後の料理部門担当はシュロさんという男性…
こちらは1番年上に見える、長いプラチナブロンドのナイスミドルだ。
もう1人も男性で、こちらは見た目年齢16くらいの男性で、名前はフヨウさんというらしい。
小柄で利発そうな少年で、明るい金の短髪とエメラルドグリーンの目をしている。
「それで、大まかな人員配置や方針は決まったが、パンや料理のレクチャー、出店場所、出店規模、値段設定やメニュー決めはいつ始めるかね?」
公爵がチョコレートを食べながら言う。
「そうですね…一旦、私の材料の仕入れ元とも話をしてみますので…商品の開発も含めて、ひと月いただけますか?あと、パン担当の方には練習をお願いしたいので、この後お時間をください。」
「ああ、わかった。その間に、店舗を見繕っておこう。ワインとブランデー販売に関しては、商会の本部と倉庫がすでに準備済みだから、伯爵が希望するならば、明日からでも動けるが、どうするかね?」
「では、ぜひお願いいたします。」
伯爵は本部の担当ミモザさんに、お酒販売の方法や値段設定をレクチャーしに行く事になった。
もちろん、伯爵自身が今まで通り販売する事も可能だ。
その場合は、伯爵から商会に連絡が飛び、商会が買手にお酒を届けてくれる。
賄賂専用商品は商会では、販売しないのかもしれないけど、そこは初めに目をかけてくれた伯爵の権利なので、自由に決めてもらっていいと思っている。
ひと月時間をもらったのは、商品の為というより、早くギルバートに竜の加護をつけてあげたいからだ。
レオナルト様によれば、魔導馬車などで途中まで行けば、5日ほどで行って帰って来られるらしい。
行く準備も含めて多めにひと月。
無事に帰って来たら、ギルバートの身が少しは安全になり、私は私で商会のお仕事がはじめられる。
商会を通じて、お金と人脈を作りギルバートの味方を集める。
前王派はアルメリア伯爵など、根強くいるらしいので、ギルバートを支援してくれるよう説得していきたい。
何も持たない今なら、王を廃位する事に、躊躇されるかもしれないが、商会が上手くいき金と権威が高まり、竜を味方につけた王子の肩書きがあれば、話が違うだろう。
そもそも、加護のない人間が座っていい席ではないのだ。
竜の谷で、ギルバートの力になれるよう、竜と話せる本も手に入れておいたので、あとは谷へ行く準備を整えるだけだ。
パン担当のランタナさんにパン酵母の仕組みや、作り方をレクチャーしたのだが…
流石にプロは飲み込みが早かった。
この分なら、ひと月あれば十分に生地をコントロールして、生イーストを作れるようになりそう。
それが出来なければ、パン作りは話にならないので、練習しておいてもらう事にした。




