第55話 販売会議 中編
セシルに合図して、トンカツにソースをかけたもの、鶏肉のテリヤキを出してもらう。
この2つを食べた時点で、公爵は何事かを決意したらしい。
「ふむ…どれも驚くような品ばかり。コーデリア、少し人を呼んでもいいかな?」
「はい、もちろんですわ。」
まさか商会の人を呼んであるとか?
従者から合図を受けて、5人のエルフの男女が入室してきた。
「彼らは我が城の料理人でな。参加させてもいいか?」
「はい、もちろんですわ。」
セシルに合図して、彼らにもパンやテリヤキチキンを振る舞う。
5人とも驚愕しながら食べている。
美味しい!!
美味しいと絶賛しながらも…
さすが料理人、これの材料はこうではないか…
ああではないかといいながらも、わからない部分が多いらしく、唸りながら食べている。
1人研究より、食べる方に夢中なエルフがいるが、きっとあれはあれで、研究中なのだろう。
伯爵と公爵は目玉として出したエイジングビーフのステーキを食べながら、2枚目をセシルにお願いしている。
2人ともとても気に入っているようで、用意した和風ソース、ワインベースのソース、さらには人を選ぶかと思っていた特製焼肉のタレを試し…
「よし…100本買おう…いや、毎日食べるのだ。フローレンスにもプレゼントするとなると…1000本か…」
伯爵はすっかり買い物気分だ。
販売元がせしめてどうするのか。
公爵はもう少し冷静だが…
「ふむ、レシピを秘匿して値段を高止まりさせるのが良いか…もしくは広く普及させ、広く利益をとるのが良いか…」
こちらは売る気満々だな。
最後にデザートにクッキーやらケーキを出す段階になると、驚きのあまりあたりは大混乱になった。
料理人達は、上質な素材や新たな食感に驚きを隠せず立ち上がり議論を始め…
伯爵と公爵は感動しながらも、活用方法を議論している。
大混乱の試食会が終わる頃…
話し合っていた料理人達は、皆一斉にこちらへやってきた。
代表らしき、麗しいエルフの男性が近寄ってきて、膝をついた。
「コーデリアお嬢様。本日よりお仕えする事をお許しください。」
「え?」
この方達はお父様の専属では?
「ハッハッハ!!やはりこうなるか!」
公爵は楽しそうだ。
「あの…お父様?よろしいのですか?」
「ああ、無論だ。元々、城の者共は斬新なアイデアに欠ける木偶ばかりだからな。歳だけ食って、代わり映えせん料理しか作れん奴らだが…せいぜい上手く使ってくれ。」
「…公爵領の料理人といえば…世界最高峰と名高い者達では?」
伯爵の呟きが宙に消えていくのだった。
この人達も使っていいのなら、また話が変わってくるな。
「では、どう言った商会にするかね。ワインやブランデーは引き続き販売するのだろう?」
「私としては…できれば、貴族と富裕層向けのワインや酒の専門店を出すのはどうか、と思っておりますね。そこの従業員に、今私が行っているワインやブランデーの専売を任せたいと考えております。更に、店舗に試飲スペースやチーズやチョコレートなど、酒に合う物も試せるようにすると面白いと思いますね。」
貴族向けなら、モリスさんとターゲットが被らないしいいだろう。
「いいですね。」
「それで…実際のところ、生産量は最大どのくらい可能なのだ?」
公爵が私に質問する。
ああ、公爵は私がつくっていると、バレてるみたいだな。
かなり頭がキレそうな人物だし…
この2人には、もう隠す必要ないだろう。
あと、新しく仲間になったエルフ達もだ。
「そうですね…瓶があればあっただけ…一日中かければ、1日に5000本以上でも難しくありませんわ。…もちろん、一年物の話で、年代ものを作るとなると本数は落ちますが…」
「なるほど…しばらくは娘に頼るとしても、どうだね。後進を育成するつもりはあるかね?」
「ええ、お父様もちろんですわ。」
万一私に何かあって、それで終わりはつまらない。
「そうか、人材を手配しよう。」
「ありがとうございます。」
ゆくゆくはこういった事も、自分でできるようになりたいな。
私はワインを酢にする事なく菌がコントロールできるけれど、天然でやるにはしばらく時間が必要だろう。
早ければ早いに越したことはない。
「あの…公爵様のお話だと…まさか!あのワインやブランデーはすべて、お嬢様がお造りになっていたのですか?!」
伯爵は驚きのあまりアワアワしている。
やっぱり、貴族のお嬢様がせっせと料理だの酒造りだのしないよね…
まして私、幼女だし。
「ええ…騙しているつもりはなかったのですが…」
「いえ…便利な能力を隠すのは普通の事です。俄には信じられない話ですが…いや、娘から御令嬢が料理をすると聞いた事がありますから…しかし…美味い料理だった。」
先程の料理を思い出しているらしい。
「あとは、そうだな。調味料に関してはここにいる奴らにも真似事はできるだろう。パンについてはどうだね?奴らにもできるだろうか?」
「はい!お父様。パンはコツさえ掴めれば、再現可能ですわ。」
パン酵母は失敗すると、アルコールができてしまったりするけれど、その時点で失敗か成功か分かりやすいので、再現可能だろう。
新しい本で作れるようになったドライイーストを、最悪の場合プレゼントしてもいいし…
できれば、自分達で生イーストは作れるようになって欲しい。
エルフ達の中の1人が目を輝かせて…
「パンを教えてくださるなら、ぜひ自分に!」
などといいながら進み出てきた。
美少年?美少女?
中性的な美形だ。
髪は短めのボブで、片側だけ三つ編みにされている。
「ああ、ランタナか。適任だな。」
ランタナさんは…女の子かな?
女の子とか言っているけれど、エルフだから多分私よりかなり年上だろうな。
「パン屋を開きたいと思っておりますので、まずは覚えてもらって、更に貴方が職人を育成するところまでお願いしたいのですが、よろしいかしら?」
「はい!問題ありません。」
職人を増やして…
そう、目指せチェーン展開!
「宮廷の料理人と貴族の料理人がこぞってスパイを放つでしょうが…製法は秘匿しますか?」
ランタナさんが早速質問する。
「…。むしろ、ふわふわの秘密の部分のみ、特別に大金貨何枚かで教えます、と告知してしまっても良いかもしれませんわね。」
レシピ丸ごとパクリはこまるが…
ある程度広まらなければ、利益につながりにくい。
大勢が欲しいと思えるものでなくては…
こちらの持ち駒はふわふわの秘密だけではない。
デニッシュのサクサク、バケットの歯応え、食パンのなめらかさ。
追いつくにはかなりの年数が必要だろう。
その間に、私は国中に美味しいパン屋をたくさん開く。
初号店のウチはそうそう負けないと思うが、負けたなら、相手がすごかっただけの事。
前世でもOOの発祥のお店…とかが老舗として残っていくのがあったが…
そんなポジションを目指したい。
欲を言えば、さらに流行の発信地でありたい。
山場の一つだからか…書きおわりませんでした。
次で終わります。
今日アップします!




