第52話 会議とチョコレート
「それで、コーデリア嬢は早めに竜の谷に行きたいと言っておりましたが、間違いありませんか?」
「はい!可能な限り早く行きたいですね。」
「殿下も同じ気持ちですか?」
「はい、僕自身はもちろんですが、今この国は竜の守護を失った状態にあります。加護を失っても、すぐさま荒廃する事はありませんが、この状態が続けば、将来的に作物の収穫は少なくなり疫病にも晒されてしまいます。そして何より、抑止力としての働きがなくなってしまっておりますので、竜の加護がないと国際社会にバレてしまうと、争いの種になりかねません。」
「そうですね…現王に加護がないとバレるのも時間の問題。そうなる前に正統な後継者である殿下を先に消してしまおうなどと、あの王も思うかもしれませんからね。」
レオナルト様は思案顔だ。
「…わかりました。しかし、今日明日と言うわけには参りませんので、支度を整えてからにしなくては。特に、ここを離れたとバレてしまうと、ギルバート様に追っ手が差し向けられてしまうかもしれませんし、コーデリア嬢やメルヴィンまでいなくなれば、何かあったとすぐにバレてしまいます。」
「…たしかに、私も実家にバレてしまうと厄介ですね。」
早く行きたいけれど、軍隊とか差し向けられたら面倒な事になるし、実家にバレてここから連れ戻された挙句、王子をさらった犯人として処刑されるかも…
場に重い空気が流れ始めた時、天井からのんびりとした声が聞こえた。
「やあ!なんだか力になれそうな話をしているね!」
「!!リュカ様?どうしてここに?」
そもそも、どうして普通な顔をして天井に立っているのか…
重力が仕事をしていない。
「この方も、リアお姉ちゃんのお友達…ですか?」
「ええ、友人のリュカ・ムーンリット様です。」
「突然申し訳ありません。殿下、お初にお目にかかります。リュカ・ムーンリット、ヴァンパイアです。」
「リュカ様、いつからいらしたのですか?」
「いやー。そこのローゼンハウス卿が隠蔽の魔道具を遮断してくれたでしょう?実は前々からこの隠された場所にいるのはどんな方なのか、とても興味があってね。そしたら、今日ははっきりと道が見えてさ。行けそうだから、ついね。来たのは先程だから、コーデリア嬢達がここを抜け出したい…あたりからしか聞いていないよ。」
「それで、力になれると言うのは?」
「殿下、こういう事です。」
そう言うと、リュカ様がみるみるギルバートの姿に変わった。
「ギルくんそっくり!!」
「ええ、実は内緒なのですが、ヴァンパイアは好きな姿に見た目をいくらでも変えられるのです。」
「誘惑系のスキルで、相手の好みに姿を変えられると聞いた事がありますが…リュカは誰にでもなれるのですか?」
「はい、殿下。幻を見せて、好みの姿になる…と言うのは、この能力がばれてしまわないように広めた噂です。最も、下級の若かったり魔力の少ない者はその程度しか出来ませんが。」
「それで、旅の間身代わりをつとめると?」
「その通りです。」
「でも、なんのために?」
「私はコーデリア嬢の味方ですから。」
なんの事はない、とニッコリして答える。
「ああ、お姉ちゃんの味方ですか。それなら、信頼がおけますね。」
ギルバートまでニコニコしている。
「でも、僕以外の方の分はどうしますか?」
「それも心配ありませんよ。」
リュカ様がパチン!!と指を鳴らすと、私、メルヴィン、レオナルト様…のそっくりさんが現れた。
「わぁ…!私だ…」
「すごいですね。」
「…愛想が悪くないか?」
自分をしげしげと見ながら、メルヴィンがいう。
いや、メルヴィンはそんな感じだよ。
感じ悪い訳じゃないし、いいじゃない。
まさかもっと愛想がいいつもりだったの?
「このように、少しは使える部下がおりますので、いつまでもは難しいですが…しばらくはごまかして差し上げられますよ。」
「リュカ様!!ありがとうございます。」
それなら、あとは水や卵とか食料を確保すれば、あとは本で調理できるし、野菜とかは畑に行けばいくらでも手に入る。
あとは宿泊道具もかな。
「必要な品集めもお手伝いするから、なんでも言ってね。」
「私も必要な魔道具があれば、作りますので言ってくださいね。」
「わかりました!2人ともありがとうございます。」
こんなに早く行けるようになると思わなかったから、持っていくものまで考えていなかったな。
リストアップして集めないと。
よし、話がついてきたし。
お茶にしようかな?
「じゃあ、よかったら一旦お茶にしようか?」
「はい!リアお姉ちゃんのオヤツ楽しみです!」
「コーデリア嬢の作る物なら美味しそうです。」
みんな楽しみにしてくれているようで嬉しい。
「我々は失礼いたします。」
そう言うと、私達のそっくりさん達は引き止める間もなくいなくなった。
「今日は、まず…みんなに試食してもらいたい物があって…」
そう、チョコレートだ。
チョコレートは前世では最初、全然受けなかったらしいから、ちょっと心配だ。
今までの食べ物とは全然違うしな…
ドキドキしながらサーブする。
ギルバートにはミルクチョコレート。
メルヴィンには生チョコ。
レオナルト様には、生クリームをチョコレートでコーティングした物。
リュカ様には、ホットチョコレートにチリペッパーを振った飲み物。
最初だから、なるべくみんなの好みに合いそうなラインナップにしたけれど…
「溶けやすいので、気をつけてくださいね。」
ドキドキしながら見守る。
「!!美味しい!なんです?これは、不思議な食べ物です…甘くて、幸せな味がします!」
「……!」
メルヴィンは無言で次々と食べている。
「甘い、ガツンとくる甘さと、食べた事がないような味ですが…言える事は、美味しいと言う事です。」
「私はこの飲み物、とても気に入ったよ。スパイシーさもあって、とても私好みだ。」
「ありがとうございます!…あの、これ貴族で販売したら、売れると思いますか?」
それぞれの物の後に、ギルバートと同じミルクチョコレートと、ビターチョコレートを食べてもらう。
「僕は買いますよ!」
元気にギルバートは返事をする。
本当に、ギルくんはいい子ね。
「…全くなかった味わいですが…これを一度食べれば、また食べたいと思うでしょう。」
「私も欲しいですね…茶会や社交の場で出せば、話題性もありますし…いいと思うよ。」
みんな私に優しいから、もしかしたら最初は失敗するかもしれないけど、チョコレートも広めて行けそうね。
そして、何年かしたら、ショコラティエとか生まれて、自分の中にはないアイデアのチョコが食べられたりして…
楽しみだわ。
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誤字脱字すみません…




