第49話 竜の番人
せっかくオベロンにもらった、クラルス草の苗が枯れないようにノーマンに渡しに行こうかな。
「ご主人様!!いらっしゃいませ。作物は滞りなく栽培してございますよ。」
最初の平原が嘘のように、立派な畑が広がっている。
果樹園、ハーブ園、スパイス園もあり、壮観だ。
「いつもありがとう。これ、またよければ食べてね。」
ドライフルーツたっぷりのパウンドケーキと、クッキーの袋を渡す。
「ご主人!!ありがたき幸せにございます。」
わあ!!と周りから歓声が上がる。
これだけ喜んで貰えると、つくりがいがあるわね。
「それでね、ちょっとコレお願いできるか聞きたいのだけど…」
「…!!なんと!まさか…いや、そんな…」
ノーマンはブルブル震えている。
期待と畏れが入り混じった複雑な表情をしている。
「これは…クラルス草では?」
名前を口にするのも畏れ多い様子だ。
「やっぱりすごいもの?」
「もちろんでございます!!ヒール系の植物はクラート草、クーロー草、クラルス草の順番で効果が高くなりますが、クラルス草はタイターニア様の庭だけにしか存在しない、幻の植物でございます。」
「え?幻…ここにあるのだけど。」
「はい!!目にできただけでも、光栄の極みにござります。」
「これ、それなら栽培は難しいかな?できれば、コッソリ増やしたいんだけど…」
これがあれば、ギルバートやメルヴィンの身に危機が訪れても、助けになるかも。
もちろんそんな時はない方がいいが、備えあって憂いなしだ。
「…いよいよ我々のシークレットガーデンの出番ですな。」
何その強そうなネーミング。
「シークレットガーデン?」
「はい!我々の種族の特殊スキルの一つでして…我々とご主人様のみが立ち入る事ができる庭を、作り出します。スキル解放には、一定の条件がございますが、ご主人は満たしております。」
「それなら、そこで栽培お願いできる?」
「はい!もちろんでございます。…しかし、普通の植物とは異なり、この植物は我々の力を持ってしても、お時間をいただきますが、よろしいでしょうか?」
「ええ、もちろん。」
秘密で増やせるだけでも万々歳だ。
「ちなみさ、そのクラート草とクーロー草なら手に入りやすいのかな?」
「そうですね、クラート草は効果が薄いですが、比較的容易に入手できるかと…クーロー草は希少ですので、こちらは中々入手が難しいかもしれません。」
そっちも入手しておきたいな。
「そうなのね…」
ノーマンはやる気満々だから、クラルス草はきっと無事に増やしてくれるだろう。
「じゃあ、これからもよろしくね。」
収穫物を収納し、畑を後にした。
よし、クラルス草については解決したし、いよいよレオナルト様のところに乗り込もうかな。
小鳥の手紙を飛ばす。
場所は応接室。
図書室だとほかに人が来るかもしれないから、念のためだ。
「コーデリア嬢。どうしました?何か問題でも?」
レオナルト様は、呼び出し場所が普段の図書室の休憩室ではないので、不審そうだ。
いろいろ考えたけれど、上手い言い訳は私には思いつかない。
ここは、いつも助けてくれるレオナルト様を信じるしかない気がする。
「レオナルト様。…ご相談したい事があります。」
「……。それは、竜について…ですか?」
レオナルト様の冷たい美貌には、なんの表情も浮かんでいない。
やっぱり、竜について調べていたのはバレていたか…と思いながら続ける。
知っていて、手伝ってくれていたなら…
「はい。私は、竜の谷の場所を知りたいのです。」
「それは、なんの為にですか?」
「決してこの世を支配したいとか、王に私がとって代わりたい訳ではないのです。ただ、私には守りたいものがあって…」
レオナルト様は、しばらく私の顔を凝視していたが、やがて口を開いた。
「もしや…貴女、ギルバート殿下の居場所をご存知なのですか?」
「レオナルト様は、ギルバートを探しているのですか?」
「ええ、もちろんです。我々竜人族は元々、竜と人の間を取り持つ者として、この国の王に仕える為に生まれた種族です。そして私はギルバート殿下に仕える為に生まれた竜人です。ほかの竜人達は、王のお役に立つべく日々魔道具の開発や、魔法の研究をしております。」
「それ、私に話して問題ないのですか?」
「貴女も、殿下の味方であると先に明かしてくれたではありませんか。」
「そうですね…質問いただいた居場所を知っているか、と言う事でしたら、知っています。…わりと近い森の中なのですが…」
「なんと…我々竜人族から隠蔽する魔道具がかなりの数仕掛けられていますので、この保養地にあたりをつけてやって来ましたが…まさか、そんなに近くにいらしたとは…」
盲点だった、と言いたげだ。
「それで、ギルバートを守る為に、彼を早めに竜の谷へ連れて行きたいのです!文献を見る限り、10歳でなくてはいけない理由も見つかりませんでしたし…竜の加護が正式に得られれば、強い味方になりますよね?」
「…そうですね。ギルバート殿下が、そう望み応える竜によりますが。」
「?弱い竜もいるのですか?」
竜だと強そうだけど。
「いえ、得意不得意に過ぎませんが…例えば、先代に加護を与えた、緑竜の得意分野は大地を豊穣に導く事で、争いはあまり得意ではありません。」
「そうなのですね…では、争いが得意な竜だと疫病に民がかかりやすくなってしまったりするのでしょうか?」
「いえ、得意分野の問題なので、竜の加護にはどの竜から加護を得ても、ある程度の豊穣と疫病からの守護の力はあります。ただ、際立って得意かというような問題に過ぎません。」
なるほど…
それなら、仮に王妃への対策で戦闘に長けた竜に加護をもらっても、その後の民が苦しむ事は少なそうね。
「それで…先程の質問なのですが、レオナルト様は、竜の谷の場所はご存知ですか?」
「ええ、もちろんです。谷へたどり着くには、いくつか難所がありますので、いく時はもちろんお供いたしますのでご安心ください。」
「ありがとうございます!」
やっと少しずつ、身体に体温が戻ってきた気がする。
「あ、レオナルト様。お茶もお出しせずに話し始めてしまい、申し訳ございませんでした。」
廊下にいるセシルに合図をして、お茶を持ってきてもらう。
「いえ、僕の方こそ気が付きませんでしたから。」
「お茶と一緒に、よろしければこちらをどうぞ。」
昨日焼いておいたミルクレープをだす。
「これはまた、美味しそうですね。」
「お口に合えば良いのですが…」
「…!これは、もちもちしっとりな生地とクリームの甘さがとてもいいですね。見た目もシンプルながら美しく好みです。」
ミルクレープもお気に召したようでよかった。
「レオナルト様はクリーム系がお好きなようでしたので。」
「ええ、とても美味しいです。」
しばらくして、レオナルト様はこれは言わなくては、と言う様子で話し出した。
「あの、コーデリア嬢。ギルバート殿下はお元気なのでしょうか?」
「ええ、とても元気ですよ。」
「僕もぜひ、逢いに行きたいのですが、ご一緒させていただけますか?」
「メルヴィンに連れて行ってもらっていますので、彼に聞いてみますね。」
「ありがとうございます!!…ぜひにとお伝えいただけるとありがたいのですが。」
「…たぶんメルヴィンは断らないと思いますが、お伝えしますね。」
「念のため、こちらをお持ちください。前王と親交が深かった狼族のローダンセ卿であれば、この竜の紋の意味がわかるはずですので。」
そう言うと、胸の中にかけていたネックレスを差し出してくる。
小さな雫型の石に金の紋様が描かれている。
「わかりました。たしかにお預かりします。」
念のため、本の中にしまう。
こうして、レオナルト様からの協力を取り付けられ、少し安堵した一日だった。
誤字脱字報告ありがとうございます!
いつもすみません…
たくさんのブクマや星5評価いただき感謝いたします♪
コーデリアは、もし別の世界で冒険者とかになってもそこそこ強そうですよね。




