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第48話 竜の谷への手がかり

今日もオベロンが朝ごはんを食べている。

朝ごはんはシフォンケーキだ。


紅茶とプレーン、キャラメルの3種を用意してふわふわの生クリームも添えた力作だ。


材料は卵、油、水、砂糖、小麦粉。

それと混ぜたいもの。

まず、卵黄と卵白に分けて、卵黄に砂糖3分の2以外の材料を全部入れる。

卵白を泡立てて、ツノが立ったらひとすくい馴染ませる。

後はさっくりと泡を潰さないように混ぜるだけ。

シンプルながら、本格的なので、手土産とかにもいいのよね。


もちろん、オベロンには卵を泡立てるのを手伝ってもらったので、楽しく作れた。

「やっぱり、ふわふわのシフォンケーキはいいわよね。」

シフォンケーキは意外と日本以外では、もう人気低迷していて、アメリカではエンジェルフードケーキって言う、シフォンケーキから油と卵黄を抜いたレシピが人気って聞いた事がある。

こんなに美味しい物が廃れるなんて信じられないけど…

やっぱりこの、しっとりふわふわは日本人好みなのかな?

エンジェルフードケーキは逆に日本だとあんまり見ないし…

こっちは食感は、シフォンケーキに似ているけれど、キメが細かくてアッサリしている。

あと、名前が可愛すぎる。

何、天使の食べ物って。

思わずかわいい天使がフワッフワ真っ白なケーキを食べてるところを想像しちゃうじゃない?

しかも、ノンオイル黄身ナシでヘルシー、ギルティフリー。


でも私はギルティでいい。

くちどけと口当たり最高!!

減らすなら、昼食を野菜たっぷりミネストローネだけにする。

オベロンも気に入ったようで、楽しそうに残りのケーキをワンホールまるごと抱えている。


「なんだ?これは!!まるで雲を食べているような…滑らかで溶けるような食べ物は、初めて食べたぞ!!本当にこれは菓子か?手伝っていなければ、雲を固めたものだと思ったが…」

「気に入ったならよかったです。」

「うむ。中々の食い物だ。……そうだ!!今日の土産はコレにしよう!」

奥さんへのお土産に決まったみたいね。

この食べぶりならもう一回焼かないと。


「何味をお土産にしますか?」

「そうだな…この紅茶というものとぷれーんをもらうか!!」

「わかりました。今からつくりますが、もちろん、卵白はお願いしますね!」

ニッコリと笑いかける。

「…コーデリア、お主少しずつ俺様への対応が雑になっていまいか?」

「お友達ですから。」

「そうか!!友達だな。」

私より、よほど長く生きているだろうに、子供みたいだな。

ご機嫌でシフォンケーキの続きを食べるオベロンを見ながら思うのだった。


「それはそうと、妻のタイターニアが、異世界の料理はどれも美味いと大層褒めていたぞ。」

「それは嬉しいですね。」

「ああ、何か欲しいものがあれば言うが良い、とか言ってたな。おかげで人間界をフラフラしていても何にも言われなくなったしよ!いやー助かるってものよ!」

こんなにやりたい放題にしか見えない男でも、奥さん怖いのか。

「あ、俺と違ってかなり律儀だからな!!言えばいいって言った限り、欲しいもん言えばくれるぜ。」

「うーん。前回すごく素敵な苗いただきましたし…」

今は特に思いつかない。

「そうか。まあ、考えとけよ。」

軽く言うと、最後の一欠片をパクっと口にいれた。


お土産分も焼き終わり、やっと一段落…

午後からはピアノのレッスンもあるし、短い時間でも図書室に行こうかな。

「探し物か?」

「ええ、ちょっと調べ物が。」

勘がいいな。

「妖精族は人の願望を読むのに長けているからな!!」

そうか…

妖精といえば、人間の願望を読みとっておちょくったりするのが大好きな種族だっけな。

その王様だものね。

私の願望読むくらいは軽いか。

でも、オベロンはこの性格だと、誰か人間の王になるかとかは特に興味もないだろうから、知られても問題ないだろう。

「そうですか…図書室に探しに行こうと思って。」

「ハッハッハ!!まさかコーデリアよ。お主が探しているほどの情報が、一介の男爵ごときの図書室だの幽閉されている王子がようやく集めた程度の資料に、書かれていると思っているのか?」

「……。」

では、どうしろと言うのか。

まさか王宮の図書館には忍び込めないし。


「なんだ、まさか困っていたのか?」

「あのね、オベロン。私は子供で、なんの権力もないわけ。今できる事なんて限られて…」

「なぜあの竜人族の小僧に聞かない?」

「へ?」

思わず変な声がでる。

「だから、初日にやってきた青髪の小僧だ。アレは竜人だろう?」


…。

レオナルト様って竜人なの?

「知らなかったか?」

「はい…」

「まあ、種族で相手を見ないところは、お主の美点だが…もう少し友にあれこれ質問しても、皆嫌がるまいよ。」

なぜかオベロンは暖かい眼差しになっている。

残念な子だと思われたのかしら。

でも…

確かにそうね。

私、もう少し仲良くしてくれるみんなを信用すべきかも。

「竜人は元々は竜の谷の番人の種族。少なくとも、およその場所くらいはわかっている筈だ。」

「そうだったのですね。」

レオナルト様が竜人だったとは…

頼めば場所教えてくれるかな。

でも、メルヴィンやリュカ様と違って、そこまで私に好意的とは思えないし…

でも、せっかくオベロンからもらったチャンスなのだから頑張らないと!

「また来る。次もシフォンケーキでも良いぞ!」

そう言うと、オベロンはいなくなった。

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