幕間4 出会いイベント
いよいよもうじき、ギルバートとの出会いイベントの時期だ。
アリア・アンゼリカは、それを考えるだけでワクワクした。
昨日、男爵が夕食の席でそろそろアリアを連れて旅行に行くのはどうか…と話していたのだ。
その旅行中に、少しだけギルバートやメルヴィンがいる保養地で休憩をする…
足を伸ばした森でギルバートに出会い、どんな子にも優しい彼女は、持っていたパンを全部ギルバートに差し出す…
そんな彼女の優しさと、愛らしい陽だまりのような笑顔に釘付けになるギルバート。
「でもスチルナシの文章だけだから、どんな服着ていたのかとか、どんなパン渡したのか全然詳しくはわからないのよね。」
でも…描かれていないって事はつまり…
「全然重要じゃないって事よね。」
しかも、どんな会話をしたとか森の具体的にどんな場所で出会ったのか?とか書かれてないし…
「まあ、会えばいいのよね。会えば。」
それだけでイベント達成され、ギルバートは生涯の思い出となるはず!!
次の日の夕飯時…
「そういうわけでな、一旦サバルディ男爵の保養地で馬を休憩させた後、湖の対岸にある我々の別荘で休暇を過ごそうと思う。」
「アリアちゃん、楽しみね。」
「はい!とっても楽しみです。」
はー。
長かった…
やっと過去の出会いよ…
「アリア、旅行用に服をあつらえても良いが、どうするかね?」
服!!
「ぜひぜひお願いいたしますわ、お父様!!」
「ははは!そうかそうか、よほど楽しみと見えるな。」
そりゃそうでしょ。
未来の旦那様に会うのよ?
おしゃれしなくっちゃ。
原作には描写ないけど、ギルバートがひとめ惚れしたのだから、それなりに気合を入れた服装で行かないと!!
やっとやってきたイベントなのだから…
イベントらしいイベントは、この次は少し先じゃなかった?
コーデリアが養子に入った後の社交界で、年上組との出会いイベントがあるまでナシだっけな?
次の日…
メイドを連れたアリアは、旅行用品を買い漁りに街へ出ていた。
「うーん、このドレス…ちょっと地味じゃ無い?」
お嬢様に似合いそうです…と店主が持ってきた、モスグリーンのドレスは着ると野暮ったい気がする。
「そうですか?よくお似合いですけれど…」
メイドは不思議そうに聞く。
「では…こちらはいかがですか?」
今度はオールドローズ生地にアイボリーで薔薇の刺繍がされているドレスだ。
「ダメ!!」
そんなの着てもカーテンみたいじゃない…
もしかして…
「あのね!!私が平民上がりだからってドレスの良し悪しまでわからない…なんて思っていないでしょうね?」
「まさか!とんでもございません!…ただ、旅行用というと、移動用の服はお色味は抑えて、現地では華やかな服装をなさるのが通常でございますので…」
「それっぽい言い訳ばかりしないでちょうだい!!もうこんなお店でるわ。」
保養地で休憩ってことは、もしかしたら他のキャラクターに会う可能性がゼロではないわけじゃない?
特にオシャレなリュカに会うかもしれないのに、地味な服なんか着られない。
リュカは元々ヴァンパイアの王だし、将来的に宰相になるのよ?
レオナルトは魔道開発局の局長にして魔法部隊長、メルヴィンは狼族の族長で近衛隊の隊長…
そんな人達に会うのに、汚れなんか気にして地味な服着せようとするなんて!!
次に会った時に、あの時の可愛らしい少女がいじめられている!!って言うのと、相変わらず地味な女の子がいじめられてるのでは印象が全然違う。
アリアより、その辺の作戦なら私が上手なのだから…
選択肢とアリアの能力、それに私の頭が加わると…
「ちょっとコーデリアに同情するレベルの能力差ね…」
私はよくある転生物の登場人物みたいに、この世界を良くする為に頑張ったりしない。
「そんなことして、イベントが変わったら困るもの…」
せっかくテストの答えがわかっているのに、どうしてわざわざ変えて大変な思いをしないといけないのか。
思いもよらない方向に話が進むと、バッドエンドになりかねない。
でも、せっかく私が生きるからには、選択肢に関係ない部分では、きちんと好感度を上げていきたい。
そうすれば、よりスムーズに選択肢で高感度あげができるはずだ。
だから、あんな平民上がりをバカにした店主の言うなりにはなれない。
「お嬢様…よろしかったのですか?どれも、お嬢様の髪色にぴったりでしたよ?」
メイドがおずおずと告げる。
「ええ、別のお店に行くわ!!」
まさかあんな地味な色が似合うですって?
まるでおばさんみたいじゃない…
次のお店でアリアは店主に要望を伝え…
ふんわりとした淡いピンク色のドレスとボンネットを購入したのだった。
そんなアリアに、両親は初めての旅行だから好きにさせてあげようと苦笑したのだった。




