第36話 お茶会のお誘い
ある日、天気がいいので、セシルと一緒に芝生の庭で散歩をしていた。
前に絡まれた後も、たまに別の男子やごく稀に令嬢に難癖をつけられていたが、さりげなく髪飾りを見せると、みんな血相を変えて逃げて行った。
「何したのか知らないけど…ここの問題児達も尻尾巻いて逃げるなんて、メルヴィンの威光はすごいわね。」
まあ、私は面倒な対応が減ったからいいのだけどね。
でも、メルヴィンの魔法を見た身からすると、大戦時代の英雄種族、ダイアウルフはやっぱり凄かったのだなぁと思うし。
背の高い薔薇の迷宮に入る気にはなれないけれど、たまにこういうお散歩も悪くないわよね。
今日のお夕飯はどうしようかしら…
ケチャップがあるから、ロールキャベツにしようかな。
ひき肉はお肉を細かくすればいけるかな。
そんな事を考えながら歩いていると、前から呼ぶ声が聞こえる。
「コーデリア様!こちらですわ。」
声のする方を向くと、フローレンス様とメアリ様がお茶をしているところだった。
フローレンス様か嬉しげに、こちらに手を振っている。
2人の側には、メイドと護衛騎士らしき姿がある。
「まあ、フローレンス様とメアリ様。お久しぶりでございますわ。」
「ええ、メアリとまたコーデリア様のパンを食べたいなと話していたところでしたのよ。」
「そうでしたか。嬉しいですわ。お父上をご紹介いただいたのに、お礼もできておりませんでしたわね。」
パンじゃお礼には些細すぎるかな。
今度、セシルかモリスさんに頼んで何か買おうかな。
「いいえ!!違いますわ。むしろ、私がお礼申し上げなければいけなかったのです。」
「?」
「実は…融通していただいているワインが、貴族の間で大層人気が高いそうで。厄介な相手との交渉に手土産にすると、面白い程上手くいく…と父が大層喜んでおりまして。」
「そうでしたか。」
「ええ、よくぞ紹介してくれたと、私やメアリにたっぷりとご褒美をいただきましたの。」
無邪気に笑うと、胸元の美しいエメラルドのブローチと、お揃いの髪飾りを見せてくれる。
メアリ様は、おずおずとトパーズのブローチと髪飾りを見せてくれる。
「とても美しいですね!お2人の髪色にもお似合いですわ。」
「……。ありがとうございます。」
メアリ様がぽそりとお礼をいう。
なんか小動物的で可愛いな。
「ええ、他にもドレスやら香水やらと。それはそれはたくさん!」
なんだろう。
フローレンス様は、こういう会話が嫌味に聞こえない才能があるな。
本人がウキウキワクワク、嬉しいって気持ちが伝わってきて、よかったね!ってなる。
「それは、私としても嬉しいですわ。でも、何かお礼をさせて頂かないと。」
「私、そんなつもりでご紹介したのではありませんし、むしろ家門を助けていただき、お礼をするのはこちらですわ。」
「いえ…でも。」
中々折れないフローレンス様との押し問答は、次のメアリ様の提案で終わる。
「…では。その、コーデリア様のご迷惑でなければ…また…パンを、フローレンスにプレゼントするのは、いかがでしょうか?」
「パン?もちろん構いませんが…」
「パン!!いい考えね!さすがメアリだわ。コーデリア様、もしお礼をいただくなら…パンをいただきたく思います。」
フローレンス様の目は本気だ。
「わかりました。それでは、お2人に明日何かつくってまいりますね。」
「まぁ!!嬉しいわ。メアリ、楽しみね!」
「うん。…とても楽しみ。」
フローレンス様は目をキラキラさせ、メアリ様はほんのり微笑んでいる。
パン…パンか。
「では、また明日こちらの庭園で、お茶会にしましょう!」
フローレンス様が提案すると、メアリ様は嬉しそうにこくこくと頷いた。
明日も特に決まった予定はない…
「ええ、ぜひお願いいたしますわ。」
私が返事を返して、お茶会が決定したのだった。




