第27話 エールとビールと販売と
「そうでしたか。よかったですわ。…こちら、秘密のルートで入手したエールなのですが、私は生憎いただけませんので…」
「では、遠慮なく。」
一口飲むと…
モリスさんの顔色がみるみる変わった。
先程までの人の良さそうな笑顔は消え、真剣そのものだ。
最後まで飲みきり、もう片方のビールにも口をつけた。
こちらも一気に飲み…
「ハヴェルカ子爵令嬢!!」
「?!はい?」
「こちらは、もしかして…どこかの地方の秘蔵酒ですかな?つまり…お聞きしたいのは、一般には売られていないかと。」
「ええ。一般販売は一切しておりませんわ。」
「こちら、定期的に手に入れることは可能でしょうか?」
「ええ、もちろん可能ですが…現状の保存方法では、なかなか長くは持たせられませんよ。」
そう、ワインばかり販売していたのは、瓶の構造上、ビールだと炭酸が抜けやすくて、スキルで最大限に持ちを良くしても、流石にしばらく経つと気が抜けてしまうからだった。
「いえ、それには他のエールにも使われております、小さな保存魔石を仕込んだコルクがございますので。」
「そうなの?」
「はい、それで相談と言うのが、こちらをワタクシに販売させていただけないかと。」
「販売を?」
試飲のつもりがいきなり販売とは…
流石に商人は違うわね。
「はい、我々モリス商会は、種子や苗に限らず、あらゆるものを、仲介させていただいておりますので。ぜひ我々にお任せいただけませんか?もしよろしければ、私自ら現地に赴き、量産に向けて話を進めてまいりますので。コルクや瓶の量産も、もちろんお手伝いさせていただきますよ。」
先程までは、やっつけ仕事だったと感じる程の変わりっぷりだ。
まあ、実際そうだったのかもだけど。
私が乗り気に見えなかったのか。
「失礼いたしました。ハヴェルカ子爵令嬢にも、販売利益の一定割合を収めるお約束も、喜んでさせていただきます。」
こういう人は嫌いじゃない。
たぶん私は、適当なおべっか使って褒めたり、今回の代金をタダにするから、原産地を教えろ、とか子供扱いして言われていたら、きっとこのまま帰してた。
「そうですね…実は場所は本当に秘密なので、ビンとコルクを私にいただいて、私を介するやり方でもよろしければ、ご協力させていただきますわ。」
「もちろん、それでも構いません。」
最初から、信用されるとは思っていないらしく、アッサリと折れてくれた。
「それで、ビンとコルク…ラベル生産もご協力いただくとして…」
大百科でエールの相場を調べる。
小銀貨1枚ね。
それなら…
「こちらからモリス様に販売する価格は、3本で小銀貨2枚はいかがでしょうか?」
「なんと!この味で、よろしいのですか?全く薄めたり、ごまかしの味付けが感じられない、上等の品ですぞ。」
「それなら、販売が軌道に乗るまではその価格。売り上げが上がってきたら…一本小銀貨1枚は、いかがかしら?」
「…ふむ。なるほど…最初は瓶の開発などの経費を考えていただいての事でしたか…子爵令嬢は、ワタクシが考えていた以上に聡明ですな。」
何やら感心している。
「ええ、また価格は都度相談いたしましょう?」
「わかりました。それでは、その価格で。」
「あの、モリス様。どちらか特に気に入ったお味がございましたら、本日のお土産にお持ちください。」
私は倉庫から、エールとビールを3本ずつ取り出す。
「ワタクシは最初に飲んだ方が、どちらかと言えば好みでしたな。後も美味でしたが、最初のエールの口当たりのまろやかさと、素晴らしい香りは感動いたしました。」
「そうですか、ではこちらを。」
エールを3本渡し、次回は瓶の打ち合わせに近いうちにくると言われて、モリスさんはすこぶるご機嫌でかえって行った。
今日は頑張って3話書いてみました!




