第26話 モリス商会
「…やっぱり、もっと作物増やしたいなぁ…」
「どうしたの?悩み?」
「はい、リュカ様。実は畑の作物を増やしたくて…」
「そう。それなら、種売りの行商人を呼べばいいじゃない?」
ある日の午後、リュカ様がメルヴィンの家に遊びに来ていた。
「そういうのも呼べるんですか?」
「うん、もちろんだよ。私がプレゼントしてもいいけど、自分で選びたいよね?」
「はい!選びたいです。」
「なら、明後日呼んでおくから、午後に談話室に来てくるかな?」
「そんなにすぐに!?ありがとうございます。楽しみです。」
「リクエストがあれば伝えておくよ。」
「はい、では今から紙に書いてお渡ししますね。」
リュカ様に渡したメモ。
希望品
トマトの種もしくは苗
ナスの種もしくは苗
とうもろこしの種
キャベツの種
ほうれん草の種
大根の種
バジルの種
ローズマリーの種
セージの種
かぼちゃの種
ピーナツ
うん…
この辺くらいあれば、当面は過ごせるかな?
セージの種があるのは、美味しいソーセージが食べたくなってきたから。
茹でたてソーセージを、パンに挟んでホットドックも悪くない。
でも、1番欲しいのはトマトだな。
トマトがあると、料理の幅がグンと広がるのよね…
トマトの種ありますように。
「わかったよ。コレを先に伝えておくね。」
リュカ様は微笑みながら、魔法のシーリングで封をした。
パァっと明るい光が封筒を包み…
光が収まると、封筒がなくなっていた。
「ありがとうございます!」
翌日…
ふと、この商人たちにもお酒をプレゼントしたら、いいんじゃないかと思った。
ちょうどおあつらえ向きに、大麦とホップをノーマン達が栽培してくれているし…
そう、ビールだ。
でもいきなり、ラガービールを作っても流行らないかも…
ラガービールはスッキリゴクゴク飲めるのが魅力だけど、こっちのワイン文化とかを聞く限りでは、フルーティで味わい豊かな、エールの方が売れ行き伸びやすいかも。
人間いきなり味覚を変えるのは大変だし…
明日来た商人に味見してもらって、反応がよかった方を多めにプレゼント…
あわよくば、周りの反応も聞いて欲しい。
ふむ、ならビールとエールも作っておきますか。
私ビールもエールも好きなのよね。
夏の暑い日のビールは最高なんだけど…
あの香りと、ちょっとなめらかな口当たりが好きだった。
現世でも、海外ものはまろやかで、いろんな味のエールがあって楽しかったなぁ…
バナナの香りとかイチゴの香りとかもあって、楽しい飲み物だったなあ…
よし!まずはホワイトエールをつくろう。
本にあるかなー
あったあった、よかったわ。
材料は、大麦と小麦とホップ。
大麦だけより好きだから混ぜちゃえ。
レバーで味を調整…
アルコール度数は5%くらい。
キレとなめらかは、なめらかに。
苦味は弱め、泡はキメ細かく量は真ん中かな。
口当たりがなめらかになっていいのよね。
選ぶと、小人達が麦を発芽させ、砕き…
茹でて、濾過しホップを入れてまた茹でる。
もう一度濾過して、冷やしたら私の出番だ。
魔力を流して発酵させる。
長く寝かせるお酒ではないので、すぐにできた。
「味わえない年齢が恨めしい…絶対美味しいのに…」
次にラガービールも作る。
こちらは大麦とホップだけで、キレと独特な苦味を追求。
「よし!明日早速反応を見てみましょう。」
翌日、セシルにおめかしをしてもらい、談話室に向かう。
商人はきっと身なりとか、よく見るだろうから、リュカ様にもらった、素敵なスカイブルーのドレスを着ていく。
手や髪も綺麗にしてもらったから…
たぶん、普段から家事しまくっているようには、見えないよね。
見えないといいな。
「ハヴェルカ子爵令嬢!!お目通りが叶い光栄です。ワタクシはモリスと申します。」
モリスさんは、小太りで人当たりの良さそうな男性だった。
「こちらこそ、ご足労いただき申し訳ございません。」
「滅相もございません。では、早速商品をご紹介させていただいてもよろしいでしょうか?」
「ええ、お願いいたしますわ。」
「ご依頼にあった物は、すべてご用意いたしました。本日は、他にもおもちいたしましたので、そちらもご覧いただけますか?」
「もちろんですわ。」
全部!
嬉しい…
他は何かな…
「まずは、イチゴ、ニンニク、アスパラ…さくらんぼとモモ。本日おもちいたしましたのは、以上です。」
「素晴らしいわ!!それぞれ30、買ったらおいくらほどかしら?」
「そうですね…金貨5枚はいかがでしょうか?」
うーん。
コッソリ、百科事典で調べた相場とそんなに差がないわね…
流石にリュカ様の紹介か…
「ええ、ではそれでお願いいたします。…今後ともお願いしたく、本日はお酒を用意させていただいたのですが、この後にご予定はございますか?」
貴族から飲めるかって聞かれたら、飲めなくても飲めるっていいそうだし、この聞き方が正解かな?
「おお〜。それはそれは!!ちょうど、喉が乾いて来た頃でして。」
メイドが出してくれたお茶も、すでに空だもんね。
追加勧めなくて悪かったな。
反省だ。
こういうのって、義理で飲んでるのかわかりにくいから困るよね。




