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第2話 転生後の世界

ゲームの世界と言うからどんなものかと思ったけれど、思いの外普通の外国って感じだ。


国の名前は聖リアトリス竜王国。

生まれ変わった名前は、コーデリア・ハヴェルカ。

赤ちゃんからやり直したので、今が丁度8歳。

見た目は、カールががかった金髪に緑の目。

ハーフエルフのお母さん譲りみたい。


みたいと言うのは、私を産んでくれたお母さんは、流行病で2歳の頃亡くなってしまった。

お父さんはと言うと、こちらは見事に関心なし。

むしろ、お母さんの死の元凶と嫌われてすらいるかも。

後妻と連れ子からは毎日嫌がらせをされているし…

つくづく家族運がない。

お陰で貴族のお嬢様らしからぬ質素生活だ。

おまけに家庭教師もつけてもらえないので、こっそり本を読むくらいでしか知識が得られない。

まあ、杏弥と話したいだけで選んだ世界にアレコレ期待してもダメだよね。

家族といえば、杏弥はどうしているかな?

「イクスブック!!」

本魔法の使い方にもだいぶ慣れたが、まだ通信機能は解放されていない。

早くおしゃべりしたいんだけどな。


それにしても、子爵家だとあれかな。

いわゆるモブの家かな?

悪役令嬢なら少なくとも伯爵とかだよね…?

主人公ではない事は、転生前に確認したから、まあやりたいようにやって良さそうだ。


今使える本の機能はというと。

・目次

・百科辞典

・収納庫

上記3点だけ。

実質2つなんだけど、百科辞典がとにかく便利すぎる。

辞典といっても、見た目は完全に電子版で、後ろにカメラが付いている。

機能としては、周囲半径2メートルくらいの物に対して。

・名称

・写真

・概要説明

・市場価格(入手先)

・分布(植物や動物など)

5点の情報が自動的に入力される。

だから、私はウロウロしていれば勝手にいろいろ知識を得られ大変重宝している。

カメラの使い道は、対象物をスキャンすると、組成を教えてくれる。

例えば、ご飯をスキャンすると(米・水)などと出てくる。

米をタップすると、米の説明にジャンプできる。

この機能は、父の最近結婚した後妻が完全に私を敵視しているので、一緒に食事を取る時は必ず使うようにしている。

本は手のひらくらいに小さくできるので、怪しまれないようにコッソリやっているので、今のところバレていない。

今までも、私にだけ肉が毒蛙だったり…嘔吐を起こす草が使われていたり…

そんな時は効いたフリをして、本の収納庫にしまっている。

本を開いて右下に《収納》のボタンがあり、左側に《取り出す》のボタンがある。

しまうと、入れたものがイラストタッチになり、個数が表示される。

そのアイコンをタッチして、取り出すボタンを押すと、取り出せる。


家族はこのスキルを、童話か何かが読める役に立たないモノ、だと思ってくれている。

後妻の連れ子の兄2人に、妹1人まで加わり何かしら嫌がらせをしてくるので、中身成人済みの私じゃなかったらとっくに捻くれてるよ。


長男が赤毛で痩せぎすの、アレックス。

次男も赤毛で神経質そうなカイル。

妹が明るい赤毛のフランソワだ。

その1番上の兄が15歳になるので、今日は記念に特能の授与式をやるらしい。

この世界の魔法は、自分で発現するスキル以外に、家系で脈々と受け継いでいる特殊技能系がある。

お母さんは、植物の成長を促す特能があったはずだけど、私は受け継ぐ前に死んじゃったはず。

特能に関して言えば、受け継いでも本人が使えなくなるわけでもないが、強いものは受け継げる人数が決まっている。

大概は子供の中の有望な子か長子に渡す。

炎を起こすとか、水を出す、とかは魔石を使える魔力があれば誰にでも使える汎用魔法もある。


「お嬢様、旦那様がお呼びです」

執事が迎えにきた。

まあ、行くしかないし…行くか。


「来たか。では始めよう」

義母や義兄達は何かにやけていて嫌な感じだ。

「まず、アレックス誕生日おめでとう。お前には私から、蒼き炎を操る力を譲ろうぞ」

「ありがとうございます!!父上!」

父が呪文を唱えると、兄が青白く光った。

「まぁ!!アレックス!!素晴らしい力だわ!」

義母アリアナは感激して、指先に炎を灯した息子を見た。

…カセットコンロかな?

4人とも意地悪くこちらを見ているけど、羨ましくもなんともない。

義母は得意そうに続ける。

「私からは貴方に贈りますわ。カイルこちらへ」

「はい、母様」

「貴方は、ウチの家系の特別な冷気を操る術を贈ります」

義母が触れると、カイルがやはり青白く光った。

「おお、中々強力ではないか」

父が喜色満面でいう。

カイルが魔法を発動すると、涼しい風が巻き起こった。

…うーん。

クーラーかな?

父がさらに続ける。

「フランソワ、お前にはな伯爵家との縁談が来ているぞ」

「まあ!!伯爵家?!」

「ああ、それに長男だ」

「まあ、どなたかしら?私、楽しみですわ」

フランソワは、まだ小さいのにこの嫌がらせに参加している。

帰ろうかな、と思うと父から声がかかる。

「待ちなさい、お前にも贈るものがある」

そこまで言うと、手元にあった魔道具を発動させ、なんの説明なしに術を開始した。

私が一瞬光って…消えた。

「それはね、コーデリア。私の亡くなった主人の力を預かっていたものよ」

義母は最高に意地悪そうな笑顔で続ける。

「力としてはね、物を腐らせる力よ。どう?貴女にとってもお似合いでしょう?嬉しくってたまらないわよね。貴女には縁談は無いわ。…それに、今後も無いかもしれないわね。だから力をあげたの。ありがたく思って頂戴ね?あの役立たずだった主人だけれど、いい土産を残してくれたこと。」

父が庇うこともなく続ける。

「明日からお前をサバルディ男爵の保養地に送る事にした。風光明媚で良い場所だ。ゆるりと過ごせ」

そこまで言うと、さっさと部屋から追い出した。

後から義母の高笑いする声が追いかけてくる。

「腐敗能力!!平民の嫁にピッタリだわ!」

「お姉さまの魔法で、平民の旦那さんが殺到するわね。私、伯爵夫人になって新鮮なお野菜を買って差し上げに行くわ!」


パタン、とドアが閉まる。

明日からこの家を出る?

腐敗能力をくれた?

……超ラッキー!!

腐敗能力ってもしかして…もしかしてパンとかふかっふかにできるのでは?

この世界、食事イマイチすぎるんだよね。

そもそも、美味しくする気がない気すらする。

ここのパンは無発酵らしく硬いし、肉は焼きすぎ。

とても美味しいとは言えない。

嫌がらせの一環で残りものを食べさせられた時もそうだったから、そもそもそういう文化なんだろう。

そこに来てこの能力…

やばい、夢が広がりすぎるんだけど…


いいのかな。

ろくでもない呼び出しかと思っていたら、こんな幸せ呼び出しだったなんて…

カセットコンロやクーラーなんかより、私にはよほどいいって知らないのかな?

知らないだろうな、所詮貴族だし。

まあ、肥料作りくらいは知っていたみたいだけど…

むしろそれしか知らないから、私に嫌がらせとして押し付けたんだろうな。

特能は個人の魔力に依存するところも大きいから、魔力の少ないあの2人では使いこなせないだろうな。


来た時とは違い、ウキウキと部屋にもどり、追い出される準備をしようと思った。


キャラクター紹介

☆コーデリア・ハヴェルカ

主人公の子爵令嬢。カールがかかった金髪に緑の目のクォーターエルフ。未プレイの乙女ゲームに転生し、パンやワインが作れる腐敗能力とあらゆる本に変化するマルチブックスキルを持つ。

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