第123話 辛口料理 前編
レオナルト様から手紙が来た。
なんでも、アイアンラットの皮を融通してくれている海の向こうの商人達にお礼をしたい。
できれば彼らが辛口の料理を好むので、辛い物を用意してもらえないか…との事だった。
商会にもあるタバスコはものすごく人気が高く、毎回大量に仕入れてくれている。
「辛い物…」
正直辛い物は割と好きだ。
超激辛は苦手だけど、普通の人よりは辛い物が平気で食べられる。
某辛口カップ麺が、丁度いいかなくらいだと言えばわかりやすいだろうか。
「素晴らしいリクエストだわ…エビチリ、スンドゥブ、坦々麺、トムヤンクン、カレー、ガパオライス、生春巻き、フォー、カオマンガイ、麻婆豆腐にパパイヤサラダ…火鍋にキムチ、カラシとかわさびはどうなのかしら?とにかく、普段控えめにしている中華エスニックがやりたい放題って事よね…素晴らしいわ!!」
試行錯誤しながらメニューを考え、ついにおもてなしの日がやってきた。
「どうも、公爵令嬢。お招きいただきありがとうございます。私はシーウェル商会、会頭のシモンと申します」
シモンさんはガタイが良く、筋骨隆々のスキンヘッドの男性だった。
頭に入れ墨も入っており、いかにも強面だが、何故かあまり怖い感じはしない。
「こちらこそ、お越しいただきありがとうございますわ。私はコーデリア・アッシュベリーと申します」
シモンさん以外にも、副会頭のイチハさんと航海士のミウエさん、コックのクラウドさんが一緒だ。
「では、始めさせていただきますね」
セシルに合図を送る。
料理の順番は向こうの大陸式に合わせている。
一皿目はトムヤンクンだ。
「こちらはトムヤンクンという辛口スープですわ。どうぞお召し上がりくださいませ」
「ほう…これは中々辛そうだな」
「でもよお…正直、辛い物作らせてウチのクラウドより美味い事はまずねえだろうし…」
「こら!ミウエ!」
イチハさんに航海士ミウエさんが叱られている。
レオナルト様の話では、こちらの料理はどれも辛さが彼らには物足りないらしいので、そこら辺も考えてある。
はじめは不審そうだった彼らは…
一口スープを飲むと表情が一変した。
「な、なんだ?!これは…」
「辛い!!だが…信じられないほどに美味いな」
「……酸味が強いかと思いましたが…飲めば飲むほど、この酸味なしには物足りないだろうと思えますね」
「素晴らしいの一言です。感動いたしました…まさか、辛さの中にここまで魚介の旨みや具材のおいしさをだしてある…盗みたくても盗めぬ味です」
「何?!クラウド、盗めないのか?」
会頭のシモンさんがあからさまにガッカリした顔をする。
ここ数日、頭痛がすごくて短くてすみません…
明日からがんばりますね