第16話 ティータイム
「メルヴィンありがとう。助かったわ。」
メルヴィンの家に着くと、セシルがいて掃除をしてくれていた。
「大したことではない。」
「そう…私は助かったわ。さすがに刃物に立ち向かうのは面倒だったし。」
奴等の胃の内容物を腐敗させて、あの場に居られなくしようかと思ったけど、下手すると死にかねないしね。
脅しに指とか腐敗させたら、収拾がつかなくなりそうだし。
「何かございましたか?」
セシルが気遣わしげに尋ねる。
「不良少年達に絡まれたんだけどね。メルヴィンが追い払ってくれたのよ。」
ずっと動いていて、疲れたからここらで一息入れようかな。
セシルがお湯を温めてくれていたので、紅茶を淹れる。
「もしかして…ルードバック様ですか?」
「そうだけど、よく知っているわね。」
「メルヴィン様の次に、実力があるとされているのが彼ですから。」
「そうなの?」
「…実際は爵位を振り翳しているだけ、という噂もございます。」
そっちだろうな。
作り置きのクッキーも出してテーブルに並べる。
発酵バターを使って作ったもので、なかなか美味しい。
ついでに、焼いたショートブレット生地の間に少し柔かめの生クリームと、イチゴを挟んだデザートも出す。
疲れた時には甘いものだよね。
「そう言えば、彼ら私の髪飾り見てなんか逃げて行ったのよね。」
「それはそうだと思います。そちらは、狼人族が気に入りに持たせるお守りで、普通は恋人や妻に持たせるものですから。身につけている者に危機が迫ると知らせる機能もあります。」
「え?メルヴィン、そうなの?」
「ああ、そうだ。」
だからつけとけって言われた訳ね。
お気に入りって言うのは嬉しいけど…
でも…メルヴィンに限って恋愛感情は無さそう…
聞くまでも無いと思う。
明らかに弱そうだからくれたんだろうな。
「ありがとう。大事にするわね。」
「気にするな。…こっちをあと2つ。」
イチゴのクッキーサンドがお気に召したらしい。
「これ美味しいよね。」
でも食べすぎると太る…と言おうと思ったが、メルヴィンの筋肉質な体型を見る限り、全然大丈夫そうだ。
私は大人しく、一つにしておきますよ。
あと、やっぱりあれね。
これからはもっとメルヴィンの家とかギルバートの家にある本を借りて読んで、この世界の知識を身につけないと。
本の強化ばかりに気を取られていたけど、やっぱり今の目標のためには知識が必要よね。
家庭教師をつけたくても、あの両親が許可してくれるとは思えないので、自分でやらないと。
「ねぇセシル。ちょっとお金が手に入ったから、買い物お願いしていい?」
「もちろんでございます。」
「じゃあ…カカオって言うのがあれば欲しいのと、さつまいもと玉ねぎ、にんじん、じゃがいも…ブルベリー、ラズベリー、お茶の木、あれば大麦とホップ買ってきてくれる?」
「かしこまりました。早速行ってまいります。」
セシルは一礼すると去っていった。
じゃあ念願の味噌作りを始めますか。
味噌のページを開いて…
「味噌はまあまあ種類作れそうね。」
まずは基本の信州味噌作り。
塩加減や熟成期間は真ん中くらい。
甘すぎず、普段の味わいに近いものにしよう。
レバーで調節してボタンをポチ!
また小人達がせっせと豆を洗って煮て濾して…
麹と塩と合わせて…
魔力を流し込み、発酵を進める。
一年熟成を作るつもりなので、大体また5分発酵させて完成した。
完成品は、倉庫にあるガラスの器に入れてくれている。
これで味噌が完成した!
味噌!
料理の幅も広がるし幸せ。




