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第110話 誤解と

オベロンから教えてもらった事実は、レオナルト様以外にも、お父様や皆にも喜ばれた。

アイアンラットの皮は、安価な防具として流通しているらしく、各領地の兵士の訓練用の防具にも使用されているものがあるらしい。

魔法に対しての防御が無に等しいので、今まで魔法を用いない訓練用にされていた物だ。


レオナルト様が早速、それらに魔法に対する耐性を強化する魔道具の開発に入った。

近日中には、なんとか形になりそうだと喜んでいた。

お父様は早速、海運業者に連絡して、アイアンラットの皮を大量に輸入するよう手配をかけた。

商会の会頭曰く、タブついた在庫があるので、かなりの数が期待できるとのことだった。


私が最新式の防具を取り出すよりも、数が期待できる上に、元々この世界にあった物の方が、後々都合が良い。


こうして、銃に対する対策がまとまって来たため、アリア様のお見舞いに行く事にした。

彼女はまだアカデミーには来ていない。


「お見舞いの品は何がいいかしら…」

せっかくなら、少しでも傷心が和らぐ物がいい。

「お酒…は飲まなそうよね。切り花の花束と、お菓子がいいかしら?」

定番ではあるけれど、やはりもらうと嬉しい品ではあるし…


セシルに身支度を整えてもらい、伺う旨の手紙を出す。

了解の旨、返事が来たので、屋敷へ向かった。


屋敷で出迎えてくれたのは、メイドだった。

「こんにちは、アリア様のお見舞いに参りましたの」

「大変申し訳ございません!!アリア様は、お加減が悪くお会いになれない、との事でございます」

「…そう。それなら、こちら、お見舞いの品ですので、お渡しいただけますか?」

アリア様から話が聞けないのは残念だが、あのような事の後では致し方ないのだろう。


「また来ます、とお伝えいただけますか?」

「はい!!もちろんです」

アリア様…

ショックよね。

大丈夫かしら…と心配になるが、ここで無理に会っても向こうは嬉しくないかもしれない。

とりあえず今日は帰ろう。


…………………………………………………………

「どうして追い返した?」

「決まっているじゃない!!犯人だからよ」

「じゃあなぜ会うと返事をした」

「あの女の化けの皮を剥がすためよ…今回は貴方もいるもの。いきなり撃ってきたりはしないでしょうし…きっとあの見舞いの品々に毒か何か仕込まれているのだわ!」

「普通の花だぞ?…こっちは美味いだけだ」

ウリセスは、お見舞いの紅茶のシフォンケーキをモリモリ食べている。


「ちょっと!!何するのよ!証拠よ!証拠」

「証拠って…何もないぞ?」

「あるわ」

「何言ってやがる」

「ここよ」

にっこりと笑いながら、小瓶を出す。


「なんだ?それは…ひどい匂いだが」

「?匂いはしないはずよ。これはね、以前治療に行った先で謝礼代わりにもらった品よ。これをこのケーキに垂らせば…」

ウリセスは呆れた顔をする。

「そんな事をして何になる?」

「あの女の正体を皆に暴露するのよ!そうすれば、取り調べが始まって、襲撃事件の犯人だという確かな証拠が出るハズなのよ」

「出ないと思うがね…」

「でるわ!今回はきっと、私を助けてくれたギルバートが動くわ。あの女が見舞いに来た証拠もあるし、やるなら今なの。邪魔しないで」


「はあ…んな面倒な事…もうやめにしないか?」

「何を言って…」

「だからよ、その王妃になるって野望、やめようぜ。お前には、この国の王妃は全然似合わない」

「何ですって!?失礼ね…第一、貴方の雇い主のアンナやソフィアは、私が王妃になる事に賛成なのよ?主人に歯向かうつもり?!」

「そうかねぇ」

「……。」

「お前だって薄々違和感を感じているだろ?」

「そんな事…ないわ。2人は大切な…と、友達…だもの」

「そうかよ」

「そうよ!…貴方には、女の友情がわからないだけよ」


「まあいい。俺はただ、こんな事やめにして、俺の妻にならないかって聞きたいだけだからな」

「はあ?…………………………」

「だから妻にならないか?」

「意味不明よ」

「意味ならわかるだろう?俺はお前を気に入っている。だから、妻にならないか?金はあるし、毎日ぼんやり茶菓子を食ってる以外に大した仕事もないぞ?中々にお前の理想と合っていると思うが」

「いやよ!平民なんて…」

「平民は嫌か」

「当たり前よ。いくらお金があっても、貴方の妻なら貴族の社交会にも出られないし、せっかくの財産を自慢する場面も無いのでは無意味じゃない。第一、せっかく手に入れた貴族身分を手放せと?」

「婿入りという手もあるな」

「ないわ!!私、男爵家程度では満足できないの。わかるでしょう?」

「まあ、それもそうか」

「気持ちは嬉しいけど。無理。今まで通り、ただの友達の配下で十分だわ」

「はいはい、今はそれでいい。…だけどそれはやめとけ。そのケーキは中々美味い。全部食べてやるから毒入りにするな」


くだらないやりとりで毒気を抜かれた私は、大人しくウリセスに毒の瓶を渡した。

それにしても…

妻にって本気かしら?

毎回持って来るプレゼントの趣味もいいし、かなり上等。

これで身分さえ高ければ、迷わない物件なのだけど…

平民同士結婚したと揶揄されながら、一生を送るなど考えられない。

ウリセスには悪いけど、私達は身分違いなのだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 狙ったようにハズレを選んで墓穴を掘ってるな 毒殺の濡衣着せようとか自殺願望でもあるのか
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