第14話 アルメリア伯爵
しばらくすると、コンコンとノックの音がしてフローレンス様のメイドが迎えに来た。
「アルメリア伯爵がご到着になり、お嬢様と談話室でお待ちでございます。」
「ありがとう。今行くわ。」
屋敷の談話室には、フローレンス様と同じ赤髪の男性と、フローレンス様がいた。
「コーデリア様!ご機嫌よう。こちら、私の父のローレンス・アルメリア伯爵ですわ!」
にこやかに紹介される。
「やあ!はじめまして、コーデリア・ハヴェルカ子爵令嬢だね。娘と仲良くしてくれているようだね。ありがとう!」
爽やかにいうこの人は、娘をこんなところに押し込めるタイプには見えない。
「お父様は宮殿で働く事が多くて…私の母は身体が良くないので…こうしてちょくちょく様子を見に来てくださっておりますの。」
もしかして、表向きの風光明媚で子供達がたくさんいるってだけで預けたパターンか?
「友人のメアリ嬢がここに越すから、私もぜひにと言われて心配していたが…元気そうでよかったよ。」
あ、そういうパターンね。
「お父様!」
あわあわとフローレンス様が慌てている。
「フローレンス、ハヴェルカ子爵令嬢が私に何か用があるのだろう。」
「ええ、そうでした!コーデリア様!お願いいたしますわ。」
「コーデリアとお呼びください。実は今日伺いましたのは、伯爵がワインがお好きと聞いたからでして…」
ワインを倉庫から取り出し、談話室のワイングラスに注ぐ。
まずは、普通の赤ワイン。
でもコクと香りとほのかな甘味は最高なはず。
味見できない年齢が恨めしい。
「これは…?」
訝しげに匂いを、嗅いだりしていたが…
「お父様!ぜひどうぞ。コーデリア様のおすすめならきっと美味しいですわ。」
娘に促され、口をつける。
「!!!!なんと!!これがワインか?」
「ワインですが…?」
ひどすぎではないはず。
「お口に合いませんでしたか?」
セシルは反応良かったけど、種族が違えばやっぱりダメかな。
「…いや。子供達は知らないだろうが…通常ワインと言うのは、蜂蜜で甘味をつけたりローズマリーなどで香りを整えたものなんだ。そうしないと酸っぱくて飲めないからね。でも…これは…明らかに違う味わいだ。普段のものとは全く違いすぎる。」
ヤバ!
そうなの?知らなかった…
食事もイマイチだけど、ワインもだったなんて…
「申し訳…」
謝ろうとしたその時…
グラスに残った残りを一気に煽り。
「美味い!…もう一杯いただいてもいいだろうか。」
「…!はい!いくらでもどうぞ。他にもおもちしましたので、いろいろお試しください。」
アルメリア伯爵はたくさん試飲し、普段甘いワインを飲んでいるからか、甘めなワインが気に入ったようだ。
「いや、実に素晴らしい。ハヴェルカ嬢は素晴らしいツテをお持ちだ。」
まさか私が作ったとは、思わないのだろう。
「あの…実は。」
私がいいかけると。
「これを販売したい、と言うお話かな?それならぜひ力になろう。この酒造の責任者との話し合いも任せてくれて構わないよ。」
「いえ、当面は数が作れませんので、アルメリア伯爵が私からお買い上げいただき、それをご自分で飲んでいただいたり、販売していただく方針だとありがたいのですが…」
「なるほど…まさか責任者というのは…。」
「はい、私です。」
「なるほど…では販売を任せていただくにあたって、この瓶はありふれたものなので、専用の瓶を用意してもいいかな?」
「ありがとうございます!ぜひ、お願いします!」
「ふむ、価格だがね。君から一本金貨2枚はどうかな?」
金貨2枚?
金貨1枚が10万円くらいだから…20万円!!
「よろしいのですか?」
「いや、実はもっと払ってもいいと思っているのだが…まずはこの価格で、また後で価格交渉したくなったらいつでも言って欲しい。」
やった!
意外とあっさり販売経路が獲得できたわ。
気に入っていた甘いワインを中心に、30本買い取ってくれた。
「ありがとうございます!今後ともよろしくお願いします。」
「こちらこそ。こんなに美味い酒に出会えるとは思っても見なかったよ。」




