番外編 つながる倉庫
ある日、ふとスキルを発動すると、倉庫のページに新しい項が増えていた。
「ん?何かしら、これ。」
詳しく見てみる。
『共有倉庫〜入れた物を双方が出し入れできる。サイズが縦横1メートルを超えるもの、生き物、魔道具等魔力を帯びた品は収納不可。〜』
「もしかして、杏弥に差し入れできるの!?」
嬉しすぎる。
早速試さなければ。
「何がいいかしら?最初だし…やっぱりおにぎり?アサリのお味噌汁?それとも肉じゃが…カレーもいいわよね…」
倉庫のページには、10品目まで入るようなので、ぜひぜひ厳選して送ってあげたい。
「杏弥…オムライス好きだったわよね。でもせっかく飲める体になったのだから、お祝いにお酒を送る?」
そうこう迷っていると…
ピコン!!と倉庫にアイコンが増える。
品名は、杏弥からのプレゼントだ。
「早い!……何かしら。開けていいのよね?」
取り出して開けてみる。
中身は、コロンと、可愛らしい香水瓶だった。
「いい匂い!!バラとスミレベースの香水ね。」
またピコン!!とアイコンが増える。
「今度は何?」
ゴソゴソと開けると…
「綺麗だけど…なんか高そう。」
大粒のエメラルドと周りに花模様を描くように、ダイヤモンドやらパールやらが品よくあしらわれている。
びっくりしていると、杏弥から通話がある。
「あ、もしもし?早苗ちゃん?」
「私よ?」
「届いたかな?」
「ええ、届いたけれど…これはなあに?」
「誕生日プレゼントさ!今までの分まとめてね。」
「でも…」
「香水は、たまたま作る機会があったんだけど、僕は別に送る相手がいないから、早苗ちゃんをイメージして作ってもらってさ。エメラルドの方は…功労賞としてもらった貰い物なんだけど…買った物じゃなくてゴメンね。」
「むしろ…いいのかしら?こんなにたくさん…杏弥にお醤油が送れる!!ってはしゃいでいた私が恥ずかしいわ。」
「ええ?!早苗ちゃん。お願いだから、お醤油やめないでね?僕、豪華なペンとか宝石のペーパーウェイトとかより、ずっとそっちが欲しいからね?!」
しまった!
先に送るんじゃなかった、と焦る声が聞こえる。
「……お醤油とお味噌でいいの?」
「もちろん!欲を言えば…アサリのお味噌汁だと一層嬉しいのだけど。」
「ふふ。やっぱりアサリね…肉じゃがとおにぎりも入れるわね?」
「早苗ちゃん!!待ちきれないよ!急かすわけじゃないけど、いつ入れるか教えてくれる?早苗ちゃんが入れたら、すぐに受け取りたいんだ。」
「今手元にあるものは、とりあえず入れるわよ?」
味噌とネギの焼きおにぎり。
カツ丼。
チョコレート。
食パン。
イチゴジャム。
筑前煮。
豆腐のお味噌汁。
入れるたびに、向こうから歓声が上がる。
「今はこのくらいだから、また明後日のこの時間に入れるけど、アサリのお味噌汁以外にリクエストはある?」
「なんだろう…なんでも食べたい!!こっちは料理があんまり美味しくなくてさ…久しぶりに美味しい物が食べられそうで、嬉しくてたまらないよ!」
実際、楽しみで仕方がない様子が伝わってくる。
「あ、杏弥。お酒平気よね?」
「うん!下戸じゃなかったよ。むしろちょっと強いかも。あんまり美味しい酒じゃないから、頻繁には飲まないけど。」
「それなら、お酒も入れるわ。それならたくさんあるのよ。」
追加でアイスワインと新作のウィスキーを投入する。
「わ!ありがとう早苗ちゃん…」
ソワソワしているのに、引き留めても可哀想ね。
「じゃあ、杏弥。また明後日!」
「うん、ありがとう早苗ちゃん!!」
「こちらこそ、大事に使うわ。」
杏弥との通話を終え、仕送り料理を楽しく考えるコーデリアだった。