第95話 広がる波紋
今日はみんなで集まって緊急会議を開いている。
議題は商会と最近の攻撃についてだ。
私達だけでは無く、運営するレストランやパン屋にまで連日小さな嫌がらせが起こっているのだ。
「それで、リア。レストランや商会への被害状況はどういう感じかな?」
ギルバートが促す。
「資料を渡すわね。」
合図をだすと、セシルが素早く資料を配ってくれる。
皆、一斉に資料をめくり出す。
私もこうして、まとまった資料をもらったのはつい昨日なのだ。
今までは、チラホラとしかなかった難癖や言いがかりがどうも最近増えて来たな、と思っていたら一昨日あたりから、随分と勢いが激しく内容が過激になっている。
例えば…
買ってきたパンが腐っていたので、腹を壊した。
主人が大層怒っているので、今すぐ店を畳むか、慰謝料として白金金貨3枚以上をよこすまでは帰らない!!とか…
レストランの食事を食べたら、スキルが一切発動しなくなった!!どうしてくれる!と毎日叫びにくる客など…
パン屋には、今までは安全な無発酵パンを食べる文化だった我が国国民が、悪女コーデリアによって、菌に汚染されたパンを食べさせられている!!というポスターが店に貼られていたり…
実際、カロンからは店舗への呪詛を確認したので、跳ね返しておいた、という報告ももらっている。
カロンがいなければ、今頃本当にお腹を壊したお客様が出ていたかもしれない。
今のところ、営業にはそこまで影響していないが、放っておく訳にもいかないのでこうして会議を開いているのだ。
リュカ様が資料を見ながら苦笑する。
「レストランでは皿に頻繁に虫が入っている…厨房ではネズミが這いまわっている…肉はヘビや虫を潰して使っている…中々散々な言われようだね。」
「ええ…虫は厨房にも店内にも入れないように、高い妨害魔道具を全店舗完備ですし…完全ないいがかりなのですが。」
「印象は良くないよね。」
「ええ…一度噂になれば、事実無根と証明した後でも、悪い方を信じる人間は一定数いますしね…まあ、そのような方に頼らずとも、全店好調なのですが。」
「それで、リュカ。何か掴めたかな?」
ギルバートが資料を置き、リュカ様に促す。
「はい、殿下…アマルディア帝国と聖ウルズリリア皇国の関与が主で、王宮からの物も一定数ございました。」
「敵国が…?」
「おそらく、戦争を見越して、これ以上海運などで外貨を稼ぎ力をつけたり、ギルバート殿下にプラスに働く要素を潰しておきたいものかと…」
そうか…
私の商会が潰れたら、ギルバートへの資金も止められるし…
悪評が流れれば、即位に疑問を持つ声が上がるかもね。
敵国からすれば、できるだけ長く加護がない王に玉座にいてほしいだろうし…
「どうする?リア。」
ギルバートがなんのことは無い、という調子で尋ねる。
「実行犯の捕獲は?」
「いつでも可能です。」
リュカ様がゆっくりと笑みを浮かべて応える。
「だって。」
捕獲って…
どうするのが1番良いのか。
敵国が噛んでいる以上、今回の実行犯を血祭りにあげたところで、また別の人間が出てきてしまうだろう。
最終的にどうにもならなくなったら、イオやカロンに相手の国ごとこんがり焼いてもらえば収まるだろうけど…
あまりに脳筋作戦すぎるから、何か考えないと。
うちに嫌がらせするとこうなるよ!!とわかりやすい形で知らしめないと。
でも、できれば痛くないやり方がいいな。
痛みは治れば忘れたり、復讐心も生むからね。
「とりあえず…一旦実行犯を全員集めていただいて…」
痛くないけどダメージとインパクトを狙うなら…
「全員の毛という毛を私が腐敗させます。ついでに毛根も死滅させます。」
男性陣が一斉にビクッとなる。
「その段階で折れれば、カロンに魔導契約を結んでもらい、これ以上嫌がらせや悪評を立てない、最低一回は、むしゃくしゃしてやった…と店舗に謝罪に来ること。本国や、王宮で次にやったら、全員同じ目に合わせると警告する事…などはどうでしょうか。」
レオナルト様が、ギクシャクと動きながら尋ねる。
「そ、それでも抗ったら?」
「そうですね…あまり苦痛や痛みを与えるのは好みませんが…はじめに、腸内の善玉菌を全て悪玉菌に転換し、お腹を無限に下すようにします。次に、全身の汗腺を腐敗させて、匂いを…」
「リア、多分第一段階でいけると思うよ。」
ギルバートが止める。
「でしたら、初めは代表1人の頭頂部限定にしようかしら。」
「それでも、充分に見た目と精神的なインパクトがあるよ!」
ギルバートは最初から全員、全身ツルツルは厳しいとアピールする。
「それなら、そうするわ。」
私がそう言うと、みんなからほっとした空気が流れる。
店への被害への報復はまとまった。




