第89話 新薬開発
昨日のアリアとの話し合いの後、色々と考えてみたが、竜の巫女という単語が少し気になっていた。
そういえば、作品名に巫女とか入っていた気がするけど、それの事だろうか。
後で詳細をカロンに聞いてみなくては。
同郷だし、せっかくヒロインに転生したなら、ぜひ幸せになってもらいたいけれど…
まあ、彼女には彼女のやり方があるみたいだし、しばらくは様子見ね。
王妃側につかないようにだけ見張っていましょう。
今日は新しい薬ができないか、いろいろと実験をしている。
「何しているの?」
ひょこっとギルバートが顔を出す。
「あら、いらっしゃい。今ちょっと調薬実験中よ。」
調薬の本で作った薬を混ぜ合わせてみたり、ハーブを入れてみたり、いろいろ実験して、結果を百科辞典で読みとっている。
「へー。何かいいのはできた?」
ギルバートは手近にあった瓶を目の前に掲げている。
「それはね、貧血の薬よ。」
「貧血?」
「ええ、鉄分貧血が一発で良くなるお薬ができたの。女性には嬉しい発明だわ。」
「そっか。流石は、リアだね。」
ギルバートはこちらをみて破顔する。
改めて見てみると、流石は乙女ゲームの攻略対象のモデル。
イケメン極まれりって感じよね。
なんか、子供の頃から一緒にいると。
ギルバートはワシが育てた、って気持ちになるわ。
「どうかした?」
目線を感じたのか、ギルバートがこちらを覗き込む。
「いえ、別に…」
慌てて、他の薬の説明に戻る。
「他には、ポーションをベースに薬草を混ぜ合わせたら、体力回復薬の強力なのができたり…」
これはかなり強力なので、発売するなら薄めないと…
小さな小瓶を指し示す。
「どんなに疲れた状態でも、コレを飲むと2日程元気いっぱいで、それこそ、一切寝ないで働く事ができるのだけど…反動で3日目に爆睡しちゃうのよ。」
「連続で飲んでも効果なしなの?」
「ううん、一応2本で4日までは試したけど、それ以上は流石に危ないと思うわ。」
「……。」
素晴らしい物をみた!!という顔をしているけど…
「ギル君?開発しておいていうのはアレだけど、あまり頼り過ぎると後で反動が、くるのよ?」
「そうだろうね。でも、疲れすぎて身体が動かない。それでもあと少し!動いて欲しい…という瞬間はかなりあるのだよ。それに、戦いの場にあれば、心強い事この上ないね。」
そうか…
そう言う世界だった。
戦いが長引き、双方が疲弊する中…
片方だけが体力を全回復してしまったら、相手としてはたまったものではない。
それに、本当なら4日かかる行軍が2日に短縮されるし…
敵の戦略をガタガタにしたりできるわけね…
「ふふふ…その顔、リア、今この薬は封印しておこうって思ったよね?」
「えっ…バレた?」
「平和が訪れるまで販売しない、と言う君の意思は尊重するけど、私や味方の為にある程度数を作って欲しいな。」
「…。でも、貴方が倒れるのは嫌だから…ちょっと効果弱めても?」
「そう言ってもらえて嬉しいけど、これはそのままで欲しいな。」
いつになく力強いギルバートの言葉に、それなら仕方ない…とできた分30本程を渡す。
「ありがとう!!リア。」
そうこうしている間に、今実験中の薬ができそうだ。
その薬は、最上級ポーションを蒸留して更に熟成発酵させた物だ。
ポーションが植物を発酵させたものなら、最上級ポーションなら何かできるかな…と言う純粋な好奇心だ。
ワインを蒸留したらブランデーになるように、ポーションも蒸留したら違う物になったりしないかな…なんて。
「うわ。なんか色悪いわね…」
「うーん、リアこの真っ赤な液体はなんです?」
出来上がったのは、淡いグリーンのポーションの面影などない、赤い怪しげな液体Xだ。
とりあえず、百科辞典でスキャンしてみると…
「えっ!」
「どうしたの?」
見間違いかと、なんども確認してしまう。
なぜなら…
【エリクサー】
死の淵からも回復させる万能回復薬。
加齢により、命運尽きた者の寿命を一本につき一年伸ばす。
飲める本数はその者の資質により異なる。
上限1〜999本
「みてないわ。」
「……。」
「見なかったわ。」
「……。」
ギルバートの視線が痛い。
「毒薬なの?」
「えっ?違うわ…むしろ逆なのだけど…」
「それなら、飲んでもいい?」
「いいけど…」
もう言うしかないか。
ギルバートならエリクサーを寄越せとか大量生産せよとは言わないだろう。
「コレ、エリクサーよ。」
「え?流石に…リアでもそんなものは…」
「本当なの。」
ギルバートの信じないよ、と笑う笑顔が真剣になる。
「まさか…本当にコレが?」
「そうなの。」
「………。」
しばらくギルバートは黙っていたが…
不意にケラケラと笑い出した。
「リア!!流石リアだよ。研究者の憧れ!夢の宝を趣味の研究で作ってしまうなんて…ああ…やっぱり、僕リア以上に素敵な女性には出会えそうもないです。」
しばらく笑うと落ち着いたのか…
真面目な顔になる。
「リアは売るつもりはないだろうから、私も内緒にしておくよ。」
優しく笑うと、エリクサーをはい、と返してくれる。
「あげるわ。」
「これ?」
「ええ、だって貴方が1番危ない立場でしょう?カロンの守りはあるけど、持っていてくれたら安心するもの。」
彼なら悪用はしないだろうし、むしろ御守り程度に持っていて欲しいかも。
「ありがとう、リア。みんなには内緒で持っている事にするね。」




