第10話 ノーマン達
なら、早速あの畑をなんとかしないと。
私の力を生かすなら、ワインにしろパンにしろ素材が必要だ。
とりあえず行ってみよう。
「ギル君、私ちょっと借りてる畑にいくね。」
相変わらず、広ーい平原が広がっている。
うん、物は試しだ。
「草も木もまとめて腐葉土にしてやる!」
全力全開でスキルを使う。
これで草刈りいらず、肥料要らずだ。
うぉー!!と気合いを入れて、ガンガン土にしていくと、おずおずとした小さな声が後ろから聞こえた。
「あのー。我らのご主人様。よろしければ、我々に何かお命じいただけませんか?」
振り返ると、一歳くらいの子供サイズの小人妖精がたくさん集まっていた。
「あなた達は?」
「あなた様のシモベにございます。」
「シモベ?」
「はい、我々は植物の管理を行う妖精。グリーンエルフマンです。あなた様は、我々の王の資格をお持ちです。どうぞお命じください。」
頬を紅潮させ、光栄の極みというような顔をしている。
「え?でも大変よ。広いし重い仕事もあるだろし。」
「「「本望にございます!!!!」」」
びっくりしていると代表が続ける。
「実は、我々は王の命に従い、植物を育てる事を至上とする種族ながら…もう何百年も、王を得ておりません。もし、我らの主として仰がせていただけるならば、主の畑をお望みの作物でいかようにも、満たして差し上げられます。」
「お邪魔になったら切って捨てて構いませんので…」
別の子も進み出てお願いします!と必死だ。
「…あなた達、もしかしてお母様の特能関係?」
「はい!残念ながら、先代様のお役に立つ事は叶いませんでしたが…」
そうなんだ。
お母様、私に残してくれていたのね。
ありがたく使わせてもらいます。
「そう、あなた名前は?」
「私はノーマンと申します。我が主。」
「そう、ノーマン。大変だけどよろしく頼むわね!!」
わぁ!!っと小人達が喜んでいる。
「では、何からいたしましょうか?」
「そうね、あなた達は何ができるの?」
「はい、畑をたがやす、開墾する、地質改善、作物、植物の育成、収穫、管理、水やり、害虫駆除までなんでも致します。種をいたければ、こういう風にして欲しい、というご品種改善要望も可能です。」
チートか。
有能すぎる。
お母様みたいに、貴族のエルフに受け継がれてなかったら、物すごくお役立ちスキルなのにもったいない。
エルフは長命だから、なかなか代替わりしないもんね。
「なるほど、なら初めにこの辺をお願いできるかしら?」
ぶどうの種とりんごの種、小麦の種、それからメルヴィンに頼んで取り寄せた大豆と米の原種。
「全部増やしながら育てて欲しいんだけどできる?」
「もちろんでございます。」
「ありがとう、あとね。この種、米っていうんだけどこれは適度な粘りを持つようにしたくて…でもちょっと作りたいものもあるから、増やす分と料理用と開発用で分けて栽培してもらえる?」
「承知いたしました。栽培は水耕栽培が良さそうと判断いたしましたが、いかがでしょうか?」
!!
できる!
この子できるこだ。
さすがに専門家は違うわね。
「えぇ、お願いしたいわ。何か他に必要な物はある?」
「いえ、今のところはございません。早速取り掛からせていただきましょう!!」
わあ、畑問題あっさり解決したっぽい。
3日後の昼過ぎ、彼らの仕事ぶりを見に行くとそこでは信じられない光景が広がっていた。
「え?何これ…どうなってるの?」
「リアお姉ちゃんの仲間達、すごいですね!!3日で葡萄畑やりんご農園、立派な畑までできてます!」
すごいなんてもんじゃない。
まさに魔法のようだ。
目の前にはギルバートが言ったような畑の他に、大きな小屋が3つあり、そこに小人達がせっせと麻袋に詰めた収穫物を運び込んでいる。
「あ!ご主人様ようこそいらっしゃいました!ちょうど少しばかりの収穫があったところですよ!」
ノーマンがニコニコ小屋に案内してくれる。
少しって…
すでに20キロくらいの麻袋三つ分米ができている。
しかも、一つは精米してくれている。
「こちらがご主人様のイメージに合う型かと思いましたが、いかがでしょうか?」
「ありがとう!有能すぎてびっくりしたわ。」
「!!もったいない言葉でございます!」
ノーマンは嬉しそうに満面の笑みになる。
「小麦も粉に挽いたものがございますので、もう少し粗くなど、お好みがあればなんなりとお申し付けください。」
ぶどうもかなりの量がある。
これだけあればワインでも作れそう。
「ノーマン、お願いがあるんだけど。このぶどうなんだけど、甘みが強い品種とか身が固い品種とか…できれば白ぶどうとかいろいろ開発してもらう事はできる?」
「はい、もちろん可能でございます。また3日後にお越しいただけますか?」
「わかったわ!本当にありがとう。」
「無上の悦びでございます!!」
去り際まで他の子たちも主様!!ご主人様!と大人気だ。