絶望の2日目
悲鳴と怒号そして何かが壊れる音。
聴き続ければ心が壊れてしまうと思うほどの絶望の音。
それはいつまで経っても消える事も小さくなる事もなく、時には家の少し前で悲鳴が聞こえる事もあった。
最初は聞きたくなくてどうにか耳栓なんかを探したが、残念ながら家には耳栓なんてものはなかった。ある家の方が少ないとは思うが。
だから俺はイヤホンをした。そして歌を大音量で流す。外の音が全く聞こえないようにして。
だが途切れる歌の途中に聞こえる音があまりにも生々しく、現実的で無視するには精神がもたなと思えた。
だが、だからといって助ける為に外に出るという選択肢は存在しなかった。
2階から様子を見た時に分かったがあいつらは走るタイプのゾンビらしく、力もかなり強いようだ。
なんの対策もなく外に出るのは自殺と一緒だ。助ける助けないの前に、外に出れば自分が助からない。
行動の善悪を問う前に自分の命が優先される。
情がないわけじゃない。俺は自分の事を普通の人と一緒だと考えている。だが、情を与えることが出来るのは状況に対して余裕がある奴だけだ。
俺には、いや俺達にはそんな余裕は全く存在しなかった。
だがそれでも、後になってから考えると誰か一人でも助けるよう行動すれば何か変わったのだろうかと考えてしまう。
これもまた余裕があるからこそ生まれる思考だと知りながら。