悪役令嬢①
カタっとなった音で目が覚めたあたしは、瞼をこすりながら上半身を起こした。
「ふぁ~~~。もう朝?」
まだ眠いと船を漕ぎながらなんとか持ち上げた瞼の隙間から、音のした方を見る。まだ真っ暗な室内は視界に移るものも無く、再び身体を倒す。
と、突然口を塞がれ「騒げば殺す」と言われた。
え? コロス? ん? どういう状況これ?
寝起きの頭ではこの程度しか考えられないあたしの可哀想な脳みそで言葉を反芻する内に、自分が誰かに脅されていると気付いた。
「この女で間違いない」
「行くぞ!」
いつの間にか後ろ手に縛られて口に布を噛まされ、見知らぬ黒装束の男に担がれていた。颯爽と庭へ走り出す男達に大混乱状態のあたしは……。
ちょ、やばくない? あたしこのまま殺される? ま、まさか、話したから……神様があたしを排除しに来た……とか? いやいや、まさか神様がこの黒覆面達をよこしたなんてことないよね? アレ……だったらなんであたしこんなことに??
『ふにゅ。神様とは精霊王達にょことにゃにょか?』
『ハク~どこいくの~? 僕も一緒にいくぅぅ~』
色々可笑しな方向で考えていたあたしの側で、いつも通りのオリジンとニマ君が黒服の男たちに運ばれるあたしと一緒について来ていた。
あ、えっと……助けて貰いたいんだけど?
『助けるにょは良いが、こやつらにょ親玉を確認したいにょだ』
『匂いは、王宮にあった匂いと似てるけど……うーん』
確実に今回の事件の親玉の所まで運ばれることになりました。まじかああああああああ! あ、そうだ。一応クルル様達に知らせておいて欲しいんだけどいい?
『僕が行ってくるよ~』
『アーニマたにょむのだ』
颯爽とかけていくニマ君に手を触れないのが残念だと思いながら見送った。与えられた離宮から道へと出た所で黒塗りの馬車に乗せられた。あたし一人かと思いきや、男たちも一緒に乗り込んでくる。馬車が走り出した事で安心したらしい男たちは狭い車内で寛ぐように足を延ばす。
ちょ、狭い! 四人乗りの馬車に六人+あたしだとマジで狭いって! しかも、なんであたしだけ床なの……ちょっと、おっさん髪踏まないで! じゃないとメアリーが、マジギレするんだからね。
笑っていない眼をあたしに向けつついい笑顔で向けるメアリーの姿が脳裏に浮かび、ブルッと身体が震えた。そんなあたしの様子に覆面をしたままの男たちは厭味ったらしい声で「こいつ震えてるぜ」とか言って話だした。
「しかしよー。なんで騎士である俺らが……こんな、見た目も大したことない馬鹿そうな女を拐さなきゃいけないんだ」
大したことなくてわるーございましたね? て言うか、あたしだってあんた達みたいな足のくさい人と一緒に居たくないわ!
あぁ、腹立つ。見た目が大したことないのは十分わかってるよ。だって、クルル様とかクリスティアちゃんとかお義理母様とか……皆、美形だしね……トホホ。
「しかたないだろ。上の命令には逆らえないのが俺ら下っ端だ」
「王女殿下にも困ったもんだな」
「あのヒステリー女には逆らわないのが一番だ」
「まったくだ」と頷き合う騎士の皆さんの言葉に、主犯が王女であることがわかる。それを聞いていたオリジンが可愛い小人の顔を歪め笑うと『下らぬ事を考えるもにょもいるにょだな』と吐き捨てた。
それから少しして、クルル様達のとこへ伝言? にいったニマ君が戻ってくる。戻ってきたはいいけど狭い車内が更に狭くなった。
それに耐えていたあたしは、吐き気に見舞われる事になる。
やばっ、車酔いがっ。うっ、気持ち悪い……あぁ、リバースしそう。ここでやっちゃうともれなく被害はあたしに振りかかる……我慢、我慢しなきゃ!
『それでクルル達はどうすると言っていたにょだ?』
『えっとね。とりあえず、場所が分かったらすぐに知らせて欲しいって。一応王城の方に向かうと思うよ~とは伝えておいたから近くで待機するみたいだよ~』
『ふにゅ』
王城だとクルル様出入りできないんじゃないかな? こういうのってその国の人でも難しいって言うし、このままあたしが王城に連れていかれたら大変な事になるんじゃないのかな?
『大丈夫だよ~。クルル達は僕が魔法で浮かせて中に居れるから心配しないで~』
『ハク。クルルにょ事よりも先に、己の事を考えるにょだ』
当然のように言うニマ君は、あたしの上にふわりと浮かんだ状態で尻尾を振る。いつもならそこでナデナデしてあげるところだけど……今は縛られてるから無理だよ。ごめん。
オリジンの諭すような言葉に、あたしは確かにそうだと考えを改めた。
揺れる馬車がひときは激しく揺れたかと思うと揺れが一気になくなる。馬の嘶きが聞こえ、そして、馬車は停車した。
扉が開き、周囲を見回した男たちはそこで降りる。五人が落ちた所であたしの髪を踏みつけていた男が何やらゴソゴソと馬車を漁り、黒い袋のようなものを取り出した。
袋を受け取った外の男はそれを広げ、髪を踏んだ男があたしを抱えずぼっとその中へ押し込んだ。
「周囲の警戒しろ」
「大丈夫です」
緊張したような声が袋の外から響く。そしてあたしは袋に入れられたまま担がれどこかへ連れていかれた。
足を運んで頂きありがとうございます。




