↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/121

入り混じる感情⑦

 文官の人と何かを話していたクルル様がイリュス様に視線を向け、二人同時に立ち上がる。

 

「分かった。すぐに向かう」

「殿下」

「お願いいたします」


 何か重要なことなのかな? クルル様の顔がちょっとだけ引き攣ってる気がする。

 その様子に、あたしは不安を覚えた。


「クリスティア。今日はこれで帰らせてもらう。

 ハク、部屋まで送ろう」

「えぇ、わかりましたわ」


 硬い表情になったクルル様が、そう言うとあたしに手を差し出す。クリスティアちゃんも笑顔が消えて、真面目な表情になると頷いた。

 部屋を出る間際、また話そうね。そう言い残し、自分の部屋へ帰る。

 

「ハク。オリジン様は側にいるか?」


 聞かれた質問に首を振って答えたあたしは、更に不安を募らせた。

 何だろうこの不安な感じ。何が不安なのかわからないけど、とにかく怖い感じがするよぅ。

 オリジン? どこにいるの?


 いつもなら、声をかければすぐに返事があるか姿を現すはずなのに一切なにもない。

 それがさらに不安に拍車をかける。


 部屋に向かい歩を進めていたクルル様が、足を止め顎に手を当てて何事か考えた素振りを見せる。

 

「クルル様?」


 恐る恐る声をかけるあたしに、クルル様はハッとしたように顔を上げた。

 

「すまない。ハクは気にしなくていい」


 そう言って、表情を緩めたクルル様は、あしの頭をポンポンしてくれる。

 大丈夫だって顔してるけど、全然大丈夫じゃなさそう。ポンポンしてくれるのは嬉しいけど……絶対、気にしなくていいような雰囲気じゃないよね? 


「部屋におくろう」


 その後は、特に会話もなくクルル様はあたしを部屋に送り届けると何処かへ行ってしまった。

 室内に戻ったあたしは、メアリーさんに手伝って貰い着替えをすませる。

 ソファーに座り、紅茶を啜った。


「はぁ~」


 知らず知らずの内に溜息を零していたらしく、メアリーさんが心配するような表情で「どうかされましたか?」と声をかけてくれた。


「うーん。上手く言えないんだけど、なんかこう、ここがスカスカする感じがするんだよね~」


 胸元を抑えて、上手く表わせない不安をメアリーさんに伝えた。

 自分でもどう言えばいいのかわからないんだけど、とにかく何かがかけた感じで不安としか言えないんだ


「スカスカですか?」

「そう、スカスカ」

「はぁ~?」


 やっぱり理解はして貰えないみたい。

 首を傾げたメアリーさんは、落ち着くようにと言っていつも通り、オリジンの分までお菓子を出してくれた。

 いつもは、真っ先にクッキーをねだるオリジンが今日は居ない。

 それをあたしはとても、寂しく感じた――。







 一方とある国のとある屋敷。

 

 精霊がざわめいたため足取りを辿り来てみれば、檻に囚われた仲間を発見してしまった。

 檻の中の個体は、どの個体も首に足に鎖のようなものを撒かれ元気が無く弱っているように見える。

 このままでは、死んでしまう可能性がある。これは早めに、救い出さねば……。

 

 とにかくこの檻をどうにかしよう。そう思って檻に触れた刹那、バチバチっと雷のようなものが発生し我の手をはじき返す。

 不安そうに我を見る仲間達へ、気丈に振る舞い安心するよう声をかけた。


「そなたたち無事か? 安心するがよい。このオリジンが必ずそなたらを助けてやろう」

「……」


 檻に入れられた仲間たちに聞こえるよう声をかけてみたが……あちらからの返事は、ない。口は動いているようだが……何らかの魔法によって遮断されているようで聞こえない。

 これでは、我の声も届いているかどうかすら分からんではないか!

 しかし、何故精霊を捕えているのだ? このような事をして、無事で済むと思っているのか?

 

 弱った仲間に対する憐れみと仲間を捕えた人に対し憤りを感じて思考に陥る我の耳が、人の足音を捕える。

 慌てて、檻の影に入り小さな小人になって姿を隠す。


 現れたのは、二人で髭を生やした小太りの男と体躯の良いがっちりした赤髪の男だった。

 二人は、室内を見回し精霊の方へ視線を向けながら会話を始めた。


「それで、リンクス。守備はどうだ?」

「ご覧の通りですよ。旦那」


 赤髪の男に小太りの男が問いかけた。

 それに答えたリンクスと言う男がニヤっと笑みを浮かべ答える。

 

 なんと醜悪な顔だ!  


「ふむ。アリュスートに流す分にはもう少し足りんな」

「えぇ、あと数日中には数は揃えられましょう」


 アリュスート? どこかで聞いた事はあるが、人の世界の事はよく分からぬ。戻り次第クルルに聞いてみるとしよう。

 

「あぁ、頼むぞ! これで我が家も……フフハハハハハ!」

「報酬の方は、弾んで頂きますよ? こっちも、命がけなんで」

「あぁ、任せておくがいい。聖女様が、十分に支払ってくださるさ!」


 聖女……聖女が何故精霊を? 聖女とは、精霊に愛された娘の事だ。私の知る者で聖女と言えば白だが、アレは精霊をこのようにすることはない。であれば、どこかの国の聖女ということか?


 男たちがその場を去りしばし考えたが、考えても分からない事だと思考を切りかえた。


 城に帰り、クルルに協力を仰ぐためその場を後にしようと思ったが、あまりにも元気のない精霊たちが気に掛る。

 思考の末、元気のない彼らを回復させる魔法を使い、檻の中に囚われた仲間達を癒した。


 待っていろ、すぐに助けてやるからな。そう心の中で、彼らに伝えオリジンはその場から消えた――。


足を運んで頂きありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。