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大好きなカレはツンツンでした。②

公開した分の2話目です。

再編集かけて少しずつ変更しています。

 あたしの言葉に驚いた顔のクルル様とイリュス様が、突然立ち上がるとあたしから5センチと離れていないところまで、その美しい顔を寄せてくる。

 ぁ……、それ以上近寄ると鼻血がっ……!!


「……! どこでその情報を知ったのだ?」


「誰から聞いたのですか?」


 二人に詰め寄られる。ジリジリと後退するも直ぐに背中は壁に押し返される。


「だっ、誰って……。クルル様?」


「はぁ? 俺とお前は初対面だろう! 戯言を言うな!」


 怒りを漲らせた血走った眼で、全力否定するクルル様をイリュス様が宥めるが、頭に血の上った彼には何の意味も無かった。

 言葉の選択みすったかなぁ? と考え言い直す。


「えっと、ゲームの中のクルル様が、凄く楽しそうに教えてくれました!」


 ゴンッ


「ギャッ!」


 ちゃんと正直に赤裸々に言い直したしに、何でか頭に拳骨が振ってきた……。

 ぷるぷると震えるクルル様のお手があたしの頭に触ってる……!! なんて思ったのも束の間、その手は最大限の握力をもって、頭にアイアン・クローを決めた。


「ちょっ!! 痛い痛い!! 頭蓋骨割れちゃう!!」


 必死に、頭を振り逃れようとしてるのに、その手は離れるどころか更に締めあげる。


「ギャーーー!! マジで死ぬ! 異世界で死ぬならせめて、クルル様に美味しく頂かれてから死にたかったぁ……」


 叫びを聞いた、イリュス様が限界と言わんばかりに噴出して笑えば、クルル様は、耳まで真っ赤に染めた顔を横に向けその表情を隠すと、頭を掴んでいた手の力を緩めてくれた。

 暫くの間イリュス様のクグモッタ笑い声だけが室内に響いていた。


 笑い終えるのを待っていたかのようにクルル様が呆れた視線を向けてくる。


「……お前と言うやつは、淑女としての恥じらいはないのか?」


「淑女ってご令嬢とかのことを言うんでしょ? 私がいた世界ではそういうの無かったし、そう言われても……困りますよぅ」


「お前のいた世界だと?」


 目を見開いて、呆然と言うクルル様の様子に、何かおかしなことを言ったかなぁ? なんて首を傾げて考えてたら、イリュス様は真面目な顔で何かを呟いている。


「まさか……」


 イリュス様の思考をぶった切るように、クルル様が私を俵担ぎすると部屋を出て早足で歩き出した。


「ちょっ! クルル様、お尻触ってる!!」


 見事に訴えをスルーされ、彼に担がれ進む……。


 まぁ、クルル様なら全部捧げてもいいけど、でもやっぱりちゃんとそう言う雰囲気にはして欲しいよ! って思うけど……やばっ、超良い匂いする! シトラス系の香水かなぁ? ククル様ってこういう匂いなんだ……。


 もっと匂いを嗅ごうと顔を背中に張りけようとすれば、ガツっとイモジャーの上から脹脛を掴まれギリギリと締め上げられた。


「それ以上、何かしてみろ……。腕だけではなく、足も傷を負うことになるぞ?」


 確実にやる気満々の声で脅された……流石に痛いのは腕と顔と頭だけで十分だった。

 大人しく香る匂いで我慢する。何人もの従者、騎士、侍女とすれ違う、その度にみんな固まったり、口をぽかーんと開け間抜けな表情したりしている。


 急いで追いかけてきたイリュス様の顔が見えた。その顔には薄らと汗が浮かび煌いて見えた。

 イリュスの汗……!! あぁ、あれはあれで良いよね!! なんて妄想をしている内に目的地に着いたようで、ある扉の前で投げ捨てられるように開放される。


 このドエスめ! なんて思っている。あたしをイリュス様が優しく両脇を支え立たせてくれた。


「開けよ!」


 ククル様の言葉に、扉が内開きにゆっくりゆっくりと開いていく。

 扉の中には、花かと見紛うほど色彩豊かな葉を生い茂らせ、枝葉を余すことなく横に伸ばし、それをしっかりと大きな幹が支えている。


「これが、精霊樹……。なんて綺麗なんだろう!!」


 独り言のように、呟いた言葉をスルーしたククル様は、あたしに繋がった縄をひっぱると精霊樹へと近付いた。イリュス様は中には入れないようだ。


 精霊樹の姿があまりにも閑麗のせいで視界に入っていなかったけど、樹の側に薄く透けた――焦げちゃの髪に黒い瞳、肌は白く、服の代りなのかベージュの布を巻いていて、身長は、100センチあるかないかの大きさだ。――少女が立っていた。


 彼女と視線が合う。その刹那、彼女があたしの目の前に浮かんでいた。ふわふわと羽もないのに浮かぶ彼女は、少し幼い見た目に合う声音で話しかけてくる。


《はじめまちて、精霊樹に選ばれち乙女よ。わたちは、地の精霊様に仕えるクロノです。あなたのお名前は?》


 首を傾げる彼女の姿と言葉遣いがとても可愛い! 何かに気付いたクロノちゃんは、縛られ背中に括り付けられたあたしの腕にチュっとキスをしてくれた。

 切られたはずのジクジクして痛んでた腕の感覚が消えていく。


「ありがとう! 腕の痛みが引いたよぉ。あぁ、そうだった……! はじめまして、あたしは天地白(あまち はく)って言うの。よろしくね! クロノちゃん」


 ズルズルと引き摺って居た、クルル様がピタリと止まりこちらを怪訝な顔で凝視する。


「今、誰と話した?」


 そう聞いて詰寄ってくる彼に、目の前に浮かぶクロノちゃんを指差して答える。


「地の精霊様に仕えてる子にだけど?」


「っ……、み、見えるのか?」


 クルル様の言葉の意味がわからなくて、あざとく首を傾げてみればイラっとした表情を作り上げ、再度言葉を変えて聞いてきた。


「その、クロノと言う精霊様が見えるのか? と聞いたのだ!」


「はい。見えますよ? それがどうかしたんですか?」


「そんな……」


 この世の終わりのような顔をして、クルル様は項垂れ膝を着いた。

 慰める振りをして、折角だからと彼の側にしゃがみ、その顔を好きなだけ眺める。

 はぁ、やっぱどう見てもイケメンだよ~。その項垂れた姿も素敵!


《ハク様は、カレが好きなのでちか?》


 脳内シャッターを切りまくっていると、クロノちゃんが話しかけてきた。


《うん! 凄く大好き。彼と結婚できるならなんでもする! って思っちゃうぐらい好き》


《そうなのでちね!! なら、精霊様もきっと喜びます!》


 良く分らないけど、ここは感謝しておくべきかな? 


《ありがとう?》


 そう伝えると、クロノちゃんはすぅーっと消えて行った。

 クルル様を見ればまだ白くなったまま凹んでる。どうしようか悩んで、某有名アニメのセリフで励ましてみようと思った。


「私を好きになりなさい! その代わり私があなたを大好きになります」


 そう言って、肩をポンポンと叩いてみる。

 おぉ、立ち上がった! と喜んでいると、幽鬼のような顔を向け無言で縄ひっぱり入ってきた扉へと戻りはじめた。


 折角名前に因んだ、名言にしたのに失敗したみたい……。


 扉を抜けて直ぐにイリュス様が、クルル様へ声をかけようとしていたけど、その表情を見た彼は、視線を逸らすと「陛下へ報告にいきます」と言って走って行った。

 来た道とはまた違う道を引き摺られ進んでいる……。


 移動中悶々と考える。この国では、これが普通なの? ていうか、書籍系とかネット小説だと、転生した女の子って凄い大事にされてなかった?? あれ~? 引篭りだから? イモジャーが原因か?? と、見当違いの考えをグルグル繰り返し見上げれば、豪奢で大きな扉の前に居た。


 ギョッとした門番さんたちを横目にみながら、開けられた扉をくぐれば、レッドカーペットが引かれ、部屋の中央奥側に、王冠を頭に載せたクルル様に目元が良く似た男性と、煌びやかな青のドレスに紫の装飾品をつけた美人が座っている。


 もう少しで、階段っていう所でクルル様は止まった。その場で片膝をついた騎士の礼をすると、台座に座った男性が話しはじめた。


「イリュスより報告は受けている。えー、そっ、その娘が精霊樹に選ばれち乙女か……?」


 語尾上がってますよ? こんな姿ですけど、一応乙女です! と突っ込みたいけど、流石に王様に言うのはどうかと思って止めた。


 クルル様は、顔をあげて立ち上がると視線を逸らして渋々と言う感じで頷いた。


「そうか、ならば仕方あるまい……。

 クルル・リシュカーナ・ファン・ヒスタリカよ。四大精霊の言葉に従い、その娘を……名はなんと言う?」


 突然名前を聞かれて、「天地白です」って答えると、王様は何度か咳払いをして、言葉の続きを声を大きくして言い切った。


「天地白を婚約者と認める。なお、婚姻はそなたが20となる2年後に執り行うこととする」


 非常に不服そう顔でクルル様が、右手をグーにして心臓の上にあてる。


「……おっ、仰せのままに」


「はぁーい。精一杯愛します」

 お読みいただきありがとうございます。

 評価・ブックマークを頂きありがとうございます。少しでも気に入って頂けるようであればよろしくお願いします。

 また、既に頂いている方もそうでない方もお時間ある時で構いませんので感想をいただければ嬉しいです。

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