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大好きなカレはツンツンでした。①

公開した分の1話目です。

再編集かけて少しずつ変更しています。

 「はぁ~。クルル様、あたしも愛してます」


 今日も日課を終えると、これも日課で彼への愛を叫んだ。

 大好きな乙女ゲーム【love with you】を、毎日時間が許す限りこのゲームを攻略する。


 友達と遊ぶなんてことは絶対にしない……と言うより友達なんて存在しない。

 だからこそ、引篭りのあたしは、毎日2~3回は、キャラとの恋愛ストーリーを巡ってる。


 イチ推しのキャラクターは、裏ルートで出てくる、隣国の王太子、クルル・リシュカーナ・ファン・ヒスタリカ様!! 襟足が少しだけ長めの黒髪に、凛々しいけど濃すぎない眉、藍の瞳に整った顔立ちをしてて、細マッチョ体系のクールガイ!! 


 もうリアルに居たら絶対告白してる! って思うぐらい好きだけど。正直に言えば、本当に居たら絶対近寄れないどころか、会うこともないけど……。アハハハ。……空しい想像をしてしまった。


 無事、クルル様とのハッピーエンドを2回目を迎えて、大満足のあたしはモソモソとベットにもぐりこんだ。

 クルル様と夢デート出来ますようにになんて乙女チックに祈りを捧げてみれば、直ぐに緩やかに心地良いまどろみを感じた。そのまま受け入れると自然と意識が遠のいていった。


 爽やかな風が吹きぬけ頬を撫でると、甘い香りが鼻腔を擽って目を覚ました。

 目を開けてみればぼんやりとした視界に一面に緑色した何かが移った。見たことのない景色に、両目を手で擦って瞼を開けば、ベットで寝てたはずなのに、どっかの庭園の桜の木の根元に寄りかかるようにして座ってる。


「っ……?」


 なんだ、ゆめかぁ~なんて気楽に思って、木に寄りかかってもう1度瞼を閉じてもまったく眠れない……。

 

「これ夢だよね?」


 徐々に不安が戸惑いになり、焦りを産み冷静な判断力を失わせていく。全身に寒気が走ると振るた。なんとか冷静になろうと試してみても、何も変わらない。

 

「冗談でしょ? ベットで寝たはずなのに……!! なんで?」


 ただ自分の心臓だけが早くなるのを感じる。辺りを見回して、なんとか立ち上がって大きな声で叫んだ。


「お母さん! お父さん! どこにいるの?」


 どんなに叫んでも誰も答えてはくれない。

 恐怖に動揺し涙が溢れてくる。誰の姿も無いそこで、自分の太ももに拳を打ちつけてその痛みを感じると、駄々をこねる子供みたいに泣いた。


「ヤダよ……ヤダ、ヤダ……!!」


 ガサガサと植木を掻き分け、誰かが近付いてくる音が聞こえる。

 熊? もしかして、家族が探しに来てくれたのかも? 

 音のする方を警戒して振り返れば、視界に見えた麗しい姿に全てを一気に持って行かれ固まった……。


「はぁぇ……?」


 相手もあたしを見て固まってたけど、即座に凛々しい顔に戻ると腰に刺した剣に手を添えるとその美しい眉根を寄せて、切れ長な目を細めた。


「何者だ! 貴様!!」


 耳鳴りしそうななほど緊迫した状況の中、剣を引き抜きながら彼が言う。 


「う……でしょ……? クッ、クルル様??」


 あたしの目の前に、いち推しキャラのクルル・リシュカーナ・ファン・ヒスタリカ様が生身で剣を構えて立ってる……!!


「何者だ? と聞いている!」


 知ってる顔を見て腰を抜かしたあたしは、口をパクパクさせるだけで何も言えなかった。


「……まさか、言葉が通じないのか?」


 眉間に皺が数本増えた厳しい顔をしたクルル様は、徐々にあたしに近付いてくる。


 さっきまで死ぬほど怖くて動揺してたはずなのに、クルル様がいると分っただけであたしの脳内に大量のアドレナリンが放出された。


 興奮と共に鼻息が荒くなってるのも気づかず……、近付いてくる彼をマジマジと見つめる。


 やっっっ、ばぁ~!! 何、もしかしてあたし、神様にお願い聞いてもらえちゃった? 超萌えるんですけど……あの服、マントの作りとかもう、クルル様の為に作られたとしか思えない! 格好良い。


 チッと舌打をしたクルル様が、剣を構えたまま後5メールの位置まで詰めてくる。空気を読めないボッチなあたしは、ずっとずっと大好きな彼に勇気を振り絞ってお友達からお願いすることにした。


「ハァハァ……。クルル様……あっ、あの、お友達になって下さい!」


 まるで、テレビでみたお見合いする番組の男性みたいに頭を下げて、目を閉じると片手を突き出した。

 突き出した片手に痛みが走る……。驚いて顔をあげてみれば、私の右腕にパックリ開いた傷が出来ている。ドクドクと滴る血を視覚に収めた脳が痛みを急激に加速させた。


「いやアァ! 痛い、痛い、痛いよぅ……」


 大声で叫び、あまりの痛みに涙が流れた。必死に傷を抑え、血を一生懸命止めようと、なくなくネットで買った【love with you】限定Tシャツを破り、腕にグルグル巻きつけた。


「確かに中学の頃着てた、イモジャーにTシャツ姿だと不審者に見えるかもしれないけど……切らなくてもいいじゃん! クルル様のばかぁ~!」


 叫び声を聞きつけた鎧を着た男人たちが、ワラワラと周りに集まって来る。

 ゲームの中でこういうシーンがあると必ず助けてくれたはずのクルル様は、冷ややかな視線を向けて立っているだけで何もしてくれない……。


 縋る視線を彼に向ければ、麗しいその顔が不快そうに歪んだ。

 フンと鼻を鳴らして踵を返しその場を離れたクルル様を追いかけようと立ち上がってみれば、囲んだ鎧の男の人たちが縄で縛りつけてきくると、罪人みたいに引き摺られて移動させられた。


 ゲームのクルル様パートでハッピーエンドを迎えると少しだけ出てくる、精霊樹の輝きを受けた白亜のお城の綺麗な姿に、感想を言う暇も与えてもらえずそのまま中に連行された。


 たどり着いた場所は、誰かの書斎? にみえる部屋だった。中に誰かいるのかと思えば誰もいない。引き摺っていた鎧の人に背中を押され。ドサっと重い音を立て顔面から倒れた。


「ぶっ……痛い! ただでさえ怪我してるのにもぉ~! これでも、か弱い女の子なのに……」


 ぷぅと頬を膨らませ睨んでみれば。見事にスルーされイラっとして悪態を吐いても、鎧の男はチラリと視線を向けて鼻を鳴らして笑われた。


 まじむかつく! なんなのこのブサ男! 無職になってそのうち○ダ男になっちゃえ!

 心の中で鎧男に悪態をついていると、部屋の扉が開き姿を現したのはクルル様とその補佐をしているイリュス様だった。

 麗しい二人の姿に、あたしは顔の痛みも、腕のケガも忘れて興奮する。


 イリュス様の正式な名前は、イリュス・ニルア・クリストフ。灰色の髪を肩口で揃え、童顔な瞳に眼鏡をかけた姿の超天才! クルル様の親友であり、将来宰相と謳われるほどの人物だ。


 二人は、連れ立ってソファーに座ると、あたしへと視線を送る。その瞳は酷く冷たいけど……。

 あたし的には、その瞳に映れただけでもラッキーなんて考えてたら、はぁ~。と溜息を零したクルル様が、低く掠れた声で話しかけてくれた!!


「それで、お前は何故あそこにいたのだ?」


 ふふ。良い声。この声に”愛してる”って毎日言われてた! 生で聞けるなら、もぉ死んでもいい!! などと、妄想に耽っているあたしを、クルル様が苛々した顔で、イリュス様は呆れた顔で見つめていた。


 ドンと机を何かが叩く音で、妄想から帰還させられる。


「それで! お前は何故あそこにいたのだ?」


 やっぱりここは素直に答えて高感度アップさせるべきだよね!


「えっと~。ベットで寝たはずが……、いつの間にかあの桜の木に寄りかかってたみたいで、なんででしょう?」


 質問に質問で返すと言う、曖昧な答えを聞いた、クルル様はジト目になり、イリュス様はクスクスと笑っている。

 側で一緒にお茶したいなぁ~。この縄解いてくれないかなぁ?


「あのぉ? せめてこの縄ほどいてくれませんか?」


 少しだけドキドキしながら、縄を解いてくれるように頼んでみる。


「却下だ! ……それで? お前はだれだ?」


 不機嫌そうな顔を隠しもしないで、クルル様があたしの方を向いて質問してる……、ハァ~イケメンスギマセンカ?!

 やばい、また妄想に浸りそうになった……。ここは高感度をあげるために……そうそう、聞きたいことがあったんだった!


「そうだ、ここってアストラル王国の王城リルベージュで間違いないんですよね?」


「そうだが?」


 訝しむ視線で見つめてくるも、律儀に答えてくれるクルル様に萌えっとする。


「やっぱり!! 建国する時に、四大精霊から送られた城で、4つある各区画ごとに、其々の特徴が入った部屋があるって本当ですか? 

 それに、その区画を結ぶ中央広場には、その精霊たちが宿ったとされる、精霊樹が植えられているんですよね? 

 あぁ、見てみたいなぁ!! 色彩豊かな葉をつけた木なんて絶対素敵!! love with you のコアなファンとしては絶対見なきゃ!!」


 ゲームの中で、アストラル王国の精霊に愛された国として有名で、小さな国だけれど、大地の恵み、風の恵み、水の恵み、日(火)の恵み全てを受けた国だと……。


 そして、王城リルベージュは消滅しそうになっていた精霊の女王を助けたお礼として、精霊が送った城と言われている。中央にある、精霊樹は、王族が婚姻する時、必ず訪れる場所でその木が輝くかどうかで相手を判断するとクルル様はとても楽しそうに語ってくれたなぁ――。

 お読みいただきありがとうございます。

 評価・ブックマークを頂きありがとうございます。少しでも気に入って頂けるようであればよろしくお願いします。

 また、既に頂いている方もそうでない方もお時間ある時で構いませんので感想をいただければ嬉しいです。

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