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僕は君をあと10秒だけ待つ  作者: 宇音
第1章 出会い
8/23

1-7 忘れることは良いことである

 翌日の放課後、僕はいつもの公園のベンチで彼女を待っていた。

 その間に、今日一日の学校でのことを思い返していた。



 クラスメイトは、僕が倉木さなに告白して玉砕したと思っているようだった。からかいつつもも慰めてくる成幸を相手にするのは大変だった。僕は、昨日のことを誰かに聞かれれば、「倉木さなに個人的なことで相談された」と言っている。小さい嘘でも付かない主義なのだ。倉木さなにもそのまま言うように言ってある。クラスメイトはどうも「僕が振られたことを互いに話題に出さないようにしている」と思っているようだが。そうじゃないと何度も言っているが、最終的に憐れんだ目をしながら頷かれて終わりだ。


 


 すこし自暴自棄な気分に浸っていると、倉木さながやってきた。

 「おまたせ。これ、はい」

 彼女は珈琲のテイクアウトカップを両手に持っていた。一つを僕に差し出す。昨日僕が買ったものと同じカフェラテだった。

 「ありがとう。払うよ」

 「ううん、いいわ。昨日は奢ってもらったし。しかも私、お金には困ってないのよ」

 「いや、僕と同じ高校生でしょ」

 「もし、三島君がタイムリープしてて、自分のしたいことを自由にするためには何が必要だと思う?」

 お金だと言いたいのだろう。

 彼女は僕の返答を待たずに続ける。

 「そう。しかも、将来起こることが分かるなら簡単にお金を手に入れる方法があるでしょ?」

 彼女はそう言って財布からカードを見せる。僕には何のカードか分からなかったが、「制限なく使えるお金がある」ということだろう。

 僕は、彼女がどうやってお金を手に入れたかはあまり考えないようにした。そもそも前提から完全には信じていないのだから。




 少し雑談した後、僕たちは本題に入ることにした。

 「まだまだ聞きたいことがあるんだけどいい?」

 「ええ。なんでも聞いて」


 「数百回はタイムリープしたって言ったけど、全部覚えてるの?」

 「いいえ。全然よ。三島君は今までの十数年の出来事全部覚えてる?」

 「いや、もちろん大きい出来事は覚えてるけど」

 「そう、まさしくそんな感じよ。私が思うに脳の記憶にも限界があるのよね。もちろん、脳の記憶領域限界まで使ったわけじゃないと思う。でも人間の脳って不要なことは忘れるようになっているじゃない?だから、タイムリープで経験したことではっきり覚えていることもあるけれど、大抵のことは忘れてしまっているわ。だって数百年生きているのよ?まあこの年数もだいたいだけど」


 彼女の言っていることは確かに筋が通っていると思う。百歳のおばあちゃんがすべての事を順序正しく覚えていることはなく、それが数回分の人生となればなおさら曖昧になるだろう。たとえ高校生の劣化していない脳であったとしてもそうだろう。


 もちろん、事細かくすべてを記憶できる人はいる。ただそれが普通であるわけではない。逆に忘れることができずに苦痛を味わい続ける人が多いと聞く。忘れることは良いことなのだ。


 脳の事を考えると、余計に疑問が出てくる。「彼女の脳細胞や脳内電気信号はどうなっているのか」だ。タイムリープ時に高校一年生の脳に前回のループ分の記憶(つまり細胞変化や電気信号)が与えられているのか?




 「みーしーまくーーん」


 「あ、ごめん。考え事」

 悪い癖が出た。人前でも思考に没頭してしまった。


 僕は今考えた疑問を彼女に話してみた。

 彼女もその分野を調べたことはあるらしい。細かいことを忘れてしまったが、当時は原因究明に至らなかったようだ。



 一旦、脳科学の話は置いておこう。

 

 それで、僕は一番のキーポイントを彼女に聞くことにした。





 「一番初めにループした時、倉木さんは何をしていたの?」






 

 

結構めんどくさい主人公です。本気で考えてあげるなんて優しいとも言える。

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