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僕は君をあと10秒だけ待つ  作者: 宇音
第1章 出会い
7/23

1-6 協力

「どうしたの?固まってるわよ?」



 倉木さなが自宅での話し合いを提案してから数秒間、僕の頭には様々な情景が流れた。今の思考速度は僕の人生史上最速であろう。


 そして、僕のコンピュータは結論をだした。

 「いやいや。さすがに倉木さんの自宅には行けないよ。どこか。『人はいないけど、人目に付く所』にしようよ」

 矛盾しているようでしていない、と思う。


 「そう?まあ、いいけど。いつもの公園にする?」

 「うん。そうしよう」


 彼女が先を歩き、後ろからついていく。歩き始めてすぐ彼女の声が聞こえた。

 「紳士的ね」


 単なるつぶやきか、僕に投げかけた言葉なのかは分からない。ただ、僕は良い判断をしたようだ。うん、きっとそうだ。そうに違いない。後悔はしない。多分。




 「どうせだから、何か飲みながら話しましょ?珈琲は飲める?」

 「うん」

 公園に向かう途中、コーヒーショップでコーヒーをテイクアウトした。僕はカフェラテを頼んだ。彼女は「クリームとデコレーションたっぷりの何か」を注文していた。彼女がさらっと僕の分まで会計しようとしたので、僕は慌てた。強引に僕がまとめて支払うことにした。

 「いいの?ありがとう」

 彼女はすぐに引き下がってお礼を言ってくれた。頑張る子供を愛でるような眼差しで終始微笑んでいた。僕を立ててくれたんだろう。やはり、内面の年齢差を感じる。大人だ。



 公園に着いて、ベンチに座った。やっと本題に入れる。

 「それでなんだけど、どうして、花火大会中止とか『ZADA』の解散とか知ってたの?」


 「これまで、何度も経験してきたもの。内部情報を知ってたわけじゃないわ」

 「倉木さんは本当に自分がタイムリープしてるって言いたいの?」

 「タイムリープ?そうね、タイムトラベルじゃなく、タイムリープね。私の記憶と経験だけがループしてるわ。信じてくれた?」

 「信じたくはない。けど、信じそうになっているかもしれない」


 倉木さなはとてもうれしそうに目を見開いた。

 「そう!ありがとう。いいのよ、それで。ちょっとずつ確信していけばいいのよ。やっぱり三島君っていい思考力ね!」

 微妙な気分だ。タイムリープを信じる人の思考力は「良い」のだろうか?ツッコミを入れたくなる。


 彼女は続ける。

 「それでね。もし良かったらだけど、三島君にタイムリープからの脱出手伝ってほしいの」

 「うーん…。そもそも、完全に信じているわけじゃないからなあ…」

 「お願い!私、本気で困っているのよ!協力者なんて今まで滅多になかったんだから!」

 「そんな笑顔で言われても。全然困ってなさそうなんだけど」

 「なんでよ!困ってるわよ!もちろん、この人生自体は楽しんでいるわ。そうじゃないともったいないでしょ?でも、いつまでもループしたままってのも嫌なのよ」

 かなり彼女の言葉遣いが崩れてきている。本来はこういう話し方なのだろうか。まあ、それだけ本気だということかもしれない。


 「わかった。わかったよ。協力するよ」

 彼女は勢いよく僕の手を両手で握ってきた。

 「ありがとう!」



 



 こうして僕たちは、放課後や休日を使ってタイムリープの原因と解決策を探ることになった。







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