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僕は君をあと10秒だけ待つ  作者: 宇音
第1章 出会い
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1-4 主張と証明

 倉木さなは続けて言う。

 「そうだよね。信じれないよね。でも、本当なの」

 「だいたい高校の入学式の前くらいから、高校3年生の夏くらいまでを繰り返し生きてるの」



 そうか。倉木さなはそういう人なのか。

 彼女は、僕をこの公園に連れてきた時に僕の腕を掴んだ。その時から僕の体温は高くなっていた。だが彼女の思い込み発言は僕の体温を急激に下げ、思考を冷静に、かつ心を落ち込ませていた。


 「そっか。それで?」

 僕はどうでもよくなっていた。


 「うん。なんでかは分からないけど、ずっと同じ期間を繰り返してて、先に進めないの」

 彼女は自分がタイムリープしていると主張しているのだ。

 「そうか。でも、どうしてそのことを僕に言うの?」

 「うん。今回は初めて起こることが多いの。三島くんはわたしの中身がズレてるって言ったけど、これも今までなかったの。だから、私のこの状況を打開できる何かを見つけることができるかもって思ったのよ」


 「そっか」

 彼女が僕をからかっているようには思えない。だから、彼女は少し、そういった意味でもずれているのだろう。

 もう帰ろう。


 彼女は僕が帰りたくなったことを察したようだ。

 「そうよね。証拠が必要よね」

 「この夏に、『ZADA』は解散するわ」

 彼女は自信ありげに言った。

 「ZADA」は国民的アイドルグループである。40台の男性アイドル6人で構成されており、もう20年以上は活動している。テレビ番組でもよく見かける。知らない日本人はいないだろう。

 そんな「ZADA」が解散するなんてありえない。僕は芸能情報に詳しくないが、それでも彼らが深い友情を築いていることは分かるし、まず事務所が解散など許さないだろう。


 「はは…」

 僕は愛想笑いすら途中で出来なくなった。


 「そっか。僕、ちょっと用事があるからもう帰るね。また学校で」

 僕は帰ることにした。彼女に軽く手を振って歩き出した。ひどい対応だが、僕はそれくらい落ち込んでいた。彼女との接点に喜びを感じていた自分がとても恥ずかしく思えてきたのだ。また、これぐらいの事で気分が上下する自分に幼稚さを感じていた。それらが僕を自暴自棄にさせているのだろう。


 歩き出してすぐ、僕の背中の後ろから彼女の声が飛んできた。

 「あと―、ここの花火大会、今年は無くなるわよー」


 僕は軽く手を振った。彼女の顔は見なかった。





 それから2週間ほどが経った。その間、彼女とは話していない。いつも通りに戻っただけだ。彼女はたまに僕のほうを見ているようだったが、僕は気まずくて目を合わせることが出来なかった。





 そして花火大会の日、花火は上がらなかった。雨が降っていたわけではない。

 僕の心は形容し難い何かに満たされていた。






 そして、1週間後、

 テレビや新聞、ネット上ではある話題でもちきりとなった。




 アイドルグループ「ZADA」の解散である。

 

 


アイドルグループはもちろん架空です。

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