1-3 告白
16:30 公園。昨日の晩に倉木さなと会った公園だ。
彼女は僕のおかしな問いに答えることは無く、僕をこの公園に引っ張ってきた。
その間、彼女はとても真剣な表情をしていた。ずっと何かを考えているようだった。
僕はというと、彼女に掴まれている腕にすべての意識を持っていかれていた。彼女の手のひらから伝わる感触と体温は僕の鼓動を速くさせた。
公園に着くと、ベンチに座らされた。
倉木さなは大げさに深呼吸した後、少しの間、目を閉じた。
それから、意を決したように目を開け、僕のほうを見た。
「あのね、とても真剣な質問なんだけど、三島君はなんで私の年齢を聞いたの?」
僕は変な質問をしてしまったことを謝ろうと考えていた。
しかし、彼女はそんな言葉を求めてはいないようだ。
「うん。そうだね。なんて言うか、倉木さんのしぐさに違和感を感じたからかな」
「倉木さんのしぐさは洗練されすぎてて、それで…」
僕は自分が発そうとした言葉の愚かさに気付き、口をつぐんだ。
「それで?」
しかし、彼女はその先を求める。
「うん、それで、中身がもっと年取ってるように思っちゃったんだよ。ごめん。馬鹿な答えだし、失礼だよね」
倉木さなは嬉しそうに首を横に振った。
「ううん。全然大丈夫。でも、普通そんなこと考えないし、思いついたとしても、言葉には出さないよね。なんで?」
「いや。言葉に出したのはほんとごめん。僕、今日はなんか頭がうまく回ってないのかも」
「今日?ってことは、いつもはそんなこと考えないんだね?」
「うん。昨日の夜中会った時に何か言ってたでしょ?倉木さんのしぐさも合わせて、なんか違和感を感じちゃったんだよ」
「そっか、やっぱり私の見た目と中身がちょっとズレてるって言いたいのね?」
彼女は何故かとてもうれしそうだ。
「いや、だからごめん。僕なんか今日おかしいんだよ」
彼女は急に黙った。
そして、僕がずっと彼女を見ていると、真剣な顔でこう言い放った。
「三島君。すごいよ。すごい観察力と洞察力だよ!思考力もいいよね!」
彼女は僕に感心しているようだ。
僕の中の違和感は途端に加速する。
どう考えても、一般的な女子高校生の表現ではない。
「私ね。もう、数百回は高校生してるんだよね」
高校生の告白すべてが、愛の告白とは限らないです。