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3,反逆の少年とホムンクルス

気まぐれ投稿です。

 巨大な窓からは、一つの街が見えた。

 そこにいる人たちは、大まかに三つに分かれている。

 動いている人と、動いていない人。前者は、生活の中のワンシーンを切り抜いたかのように、動き回っていたり、遊んでいたりしているだけだ。

 片や後者は、あるところでは建物を作り続け、あるところでは誰かが下敷きになるにもかかわらず建物を壊していた。

 そして、最後の一まとまりは文字通り街の一角で殺し合いをしていた。

 どれもが、誰かにそう命じられているから、動き・作り・命じられた殺し合いをしているだけの人間に似せられた自動人形と変わりない。

 それを言うなら僕もそうか。生まれた時からこの箱庭の中にいて何をするわけでもなく、ただ家族に気を使って言われるがまま身生きているだけ。そんな自分についため息が出てしまう。


「おい、ため息なんかつくんじゃない、面白くないぞ。お前は、ここでの暮らしに慣れてきたと思ったのに全く違うようだ。何が不満だ? 何でもここではできるんだぞ? 殺し合いをさせるのも人間狩りもレイプも何でも許されるんだ。それを楽しまなくてどうすんだ。私やラプラを見習ってに楽しむがよい」


 ソファーに腰かけながら優雅に酒を傾けながら、このカオスな光景を隣で見ていた父に言われる。

 視線の先の一角では一人の少年が物語に出て来そうな悪漢たちを相手に大口径の拳銃(マグナム)を連射して辺りを血に染めていた。

 光悦とした表情で醜く笑う小太りな少年は俺とは違って(クズ)との濃い血の繋がりを見た目だけでなく、その精神からも感じさせる。


(全くため息の理由は、今の自分とお前に対する不満からなんだけどな)


 心の中ではそう思っていても言葉には出せない。出せるわけがない。


「ハハハ、そうですね父上。僕もこの創造世界で楽しい日々を送れるように頑張りたいと思います」

「ああ。そう言ってもらえると実に嬉しいぞ、この選ばれた者だけの楽園で楽しく、望むがままの毎日を過ごそうじゃあないか。どうだ、酒でも」

「すみません父上。まだ僕は飲めませんので、遠慮しておきます。それでは部屋に帰らせてもらいますね」


 浮かれながら高慢な態度で酒を仰いでいるのを横目に、部屋を出て自室に戻ろうと廊下に出る。

 

 四賢者と呼ばれた権力者、そのうちの一人があのクズだ。

 血縁関係にある者はこの箱庭と呼ばれる建物のに住んでいて、二親等、つまりは息子である俺は言わずもがなだ。

 あの街で働かされていたのは、資料で読んだだけだが、稀代の天才ドクラインが作り出した人造人間(ホムンクルス)の改造版。

 本来は意志を持った人造人間を作ろうとしていたらしいが、意志の確立という最後段階でドクラインが何らかの理由で逃亡したため完成することはない、はずだった。それ(ホムンクルス)の存在を知った四賢者たちが意志の代用品に命令機関(コーラー)を埋め込み、様々な用途で使用した結果がこの箱庭であった。

 

 父親との会話のせいで苛立っていたせいで声を掛けられるまで彼女にきずかなかった。


「ルーキス様、お帰りですか?」


 ひょっこりと俺の顔の前に顔を出してきたのはメイド服の少女。


「ああ、待たせたねベル。出てくるタイミングがつかめなくてね」


 この国の召使が着る伝統の服、メイド服を着て訪ねてくる白髪の少女。

 ほんのり赤い頬と揺れる瞳は美しく、少し下がっている眉から心配そうに思う気持ちが表れているように思うのは自分だけでないはずだ。


「嫌なことを話されたのですか? 私のこととか」

「ベルが気にすることはないよ。あんなクズ共には絶対に手を出させないから」

「ルーキス様! こんな所で言われて、誰かに聞かれていたら如何するんですか」

「そんなに怒らなくても大丈夫だって、監視カメラの操作権を持ってるのは俺と父だけ。彼奴が俺が記録を改竄(かいざん)する前に確認するとは思えないから」


 真っ赤になって焦りながらも怒るベルの姿は活き活きとしていて、それが()()()()()されたものだとは思えない。

 そう、ベルはホムンクルスだ。

 ここの方針で10歳を越えると、付き人として一体ホムンクルスを付けられる。

 その時、俺は彼女(ベル)を創った。

 本来なら禁止されているホムンクルスの創作を頼み込んで自分一人で創り上げた。だから、命令機関も遠隔操作爆弾も埋め込んでいない。真に人間と変わりない。

 この事実を知られたときは全員非難の目を向け処分を言い付けてきたが、父が面倒だという理由からだが付き人として認めてくれた。この事に関してだけは感謝しても良いと思っている。


「心配なら話の続きは部屋でしようか」

「もう! 引っかかりそうな発言は注意して下さい!」


 そう言いながらもそこまで怒っている様子は見えず、むしろ笑っていた。

 幾ら父が許可したとは言え、他の血族はベルのことをホムンクルスの分際で感情を持っていることをよく思っていない。隙あらば消そうとしてくるほどに。

 箱庭がある限り、ベルが危険にさらされることは免れない。この笑顔を見せる彼女を守りたい。

 だから俺は、この箱庭(らくえん)の全てをぶち壊す。

次回は未定です!

でも、いつかは完結させます!

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