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10 一休み

 村に戻って村長にトロールを倒したことを報告する。村からも山が燃える様子はよく見えていて、半径一キロ程度を焼き尽くしたのに村長は大喜びだった。


「ありがとうございます! 皆様のおかげでこの村は救われました! 今晩はできる限りのもてなしをさせていただきます! どうか楽しんでいってください!」


 というわけでシンたちは村の宴会でジビエ料理に舌鼓を打った後、温泉に案内された。パラケルス山脈の南部はグノームとサラマンデルの国境となるマグヌス火山帯に続いており、少しであるが温泉が湧くのだ。


 村の温泉は普通の公衆浴場程度の大きさしかないため、王族の貸し切りということになった。すでにシンが村のトロールを退治した話は兵士たちに伝わっているため、皆納得してくれるだろう。


 王宮にも浴場はあってシンは毎日利用しているが、露天風呂はまた格別だ。外の空気の冷たさと温泉の暖かさが気持ちいい。遠くから聞こえるフクロウの鳴き声も風情がある。疲れた体に白く濁った湯のぬくもりが染み渡る。


「まさかこっちで温泉に入れるなんてなぁ」


 シンは湯船に浸かったまま顔をごしごしと洗い、旅の汚れを落とす。携帯用の風呂釜は持ってきていて王族女性陣は毎日利用していたが、手間がかかるので一般兵士と同様にシンはときどきしか入れない。


 後から葵たちが入るということで、今の時間はシンが独占している。しばし一人の温泉を満喫しよう。


 そう思ってシンがのんびり湯船に浸かっていると、声が聞こえてきた。


「ほぉ~、これが温泉か。噂には聞いてたけど、結構すごいんやな」


「全く、どうして私まで……」


「君は僕らの護衛役だからね」


「なら剣の持ち込みを認めてくださいまし! そもそも私まで裸にならなくてもいいでしょう!」


「羽流乃、相変わらず君は無粋だなぁ。お風呂じゃ裸にならないとつまらないじゃないか」


 白いもやの向こうに三人の人影が見える。葵、羽流乃、麻衣のようだ。まだ女性の時間ではないのだが……。たまらずシンは声を上げた。


「おい! 俺まだ入ってるぞ!?」


「ふえっ、シンちゃん!?」


 シンの声に反応して、ザパンと音が聞こえた。湯船に入りかけていた麻衣が飛び出たらしい。


「なっ!? 早く向こうを向きなさい! 私たちの裸を見たら、許しませんわよ!」


 羽流乃が顔を真っ赤にして怒鳴っているのがわかった。慌ててシンは逆方向を向く。


「僕と麻衣はシンと婚約してるから別に裸見られても問題ないんじゃない? それに、羽流乃だってシンは仕えるべき主人の一人だよ? 気に入ったら側室にしてくれるんじゃない? 前に給仕してもらったときも、ご満悦だったみたいだしね」


 葵はそんなことを言い出す。湯煙の向こうで葵はニヤニヤしている。間違いない。わざとだ。


「ふざけないでください! どうして私が側室なのですか! 私こそシン君の正妻にふさわしい……あれ? 私は何を言っているのでしょう?」


「とにかく、こんなところでボオッとしてたら風邪ひくよ? さぁ、入って入って。あ、タオルはとるのがマナーだからね?」


 葵に促されて麻衣も羽流乃もタオルをとり、湯船に入ってきた。俺、どうすればいいんだろう。


 シンは頭を抱えるが、女子三人はシンを囲む。おそるおそるシンは女子たちの方を向いた。三人とも湯船に髪をつけないように纏めていて、少し新鮮だ。湯船が白く濁っているせいで胸から上しか見えないのにエロい。


「ふぅ、入ってしまえば見えませんので、気にしてはいけませんわね……」


 できれば気にしてほしかった。羽流乃がもっと反対してくれれば円満にシンが退去できたかもしれないのに……。


「どうしてこんなことになってるんだ……」


 改めてシンは頭を抱えるが、すました顔で葵は説明する。


「もちろん、護衛のためさ。僕と麻衣を守ってもらうために羽流乃には元々一緒に入ってもらうつもりだったけど、よく考えると君の護衛がいないんだよね。だったらみんな一緒に入ってしまえばいいかな、って」


 いや、男の護衛をつければ済むのでは……。というか、シンに指輪の持参を許してくれれば護衛なんて必要ない。絶対葵の趣味だ。


 シンが微妙な顔をすると、麻衣が言う。


「ウ、ウチはシンちゃんに裸を見られても全然構わへんって思ってるから……」


 途中で恥ずかしくなったのか麻衣は口元まで湯に沈め、ボコボコと気泡を作る。背後では真っ黒い尻尾が揺れていた。忘れがちだが、麻衣は魔族だ。普通の人が揺れる尻尾を見ると怖がるのかもしれないが、全く気にしていないシンはかわいいと思った。


「う~ん、なんだかあんまり嬉しそうじゃないね。ああ、刺激が足りないのか!」


「うわぁっ!」


 葵はポンと手を叩き、シンの右側に回ってしなだれかかってくる。柔らかく、暖かい人肌に触れてシンは飛び上がりそうになるが、シンの腰に手を回してガッチリとホールド。


「君、女の子と一緒にお風呂に入ってるんだよ? もっと嬉しそうな顔をしてよ。じゃないと失礼だ」


 葵は少し拗ねたような顔を見せる。頬がほんのり赤みがかっていて、かわいい。陶磁のように白い肌もすべすべで、心地よかった。ちょうどいいサイズの胸もちょこんとシンの腕に当たっていて、ドキドキする。全体的に柔らかいが、一点だけがブラックチェリーのように固い。ひょっとしてこれは……。


「ウ、ウチもシンちゃんに喜んでもらいたいんや!」


「うおっ!」


 反対側から、麻衣も派手に抱きついてきた。女子としても小柄な麻衣の体は葵に比べれば物足りなさがあるが、全身で抱きつかれるとあまり気にならない。むしろ、小さな体で一生懸命なところが愛らしい。麻衣の胸はぺったんこだが、ここまで押しつけられると控えめな膨らみを感じることができる。シンの腕はちょうど谷間に収まっていて、両側から受ける柔らかさは天にも昇る気持ちよさだった。


「……随分嬉しそうですわね」


「いやあ、ハハハ……」


 羽流乃は非難がましい目をシンに向ける。シンは笑うしかない。葵はニヤニヤ笑いながら羽流乃に言った。


「君もしないの? シンの側室にしてもらえれば、君を女王にするためサラマンデルに攻め込むって言い出すかもしれないよ?」


 羽流乃の実家のエゼキエル家はかつて南の大国サラマンデルを支配する王家だった。内乱によって王の座を追われ、今はグノーム国内の一貴族に落ち着いている。


「結構です! わ、私は実力で国を取り戻して見せますから!」


 羽流乃はプイとそっぽを向いてしまう。麻衣は別のところに注目した。


「しかし羽流乃ちゃん……。前から思ってたけど、おっぱい滅茶苦茶でっかいな」


 シンは羽流乃の胸に目を落とす。スイカ級の逸品が、ゆらゆらと湯船に浮いていた。頭蓋骨にダイナマイトを放り込まれた気分だ。羽流乃、こんなに胸が大きかったのか……!


「へぇ……! ひょっとしたら瑞季より大きいかもしれないね。ちょっと揉ませてよ」


 葵は湯船から両手を出して、わさわさと指を動かす。手つきが完全にセクハラ親父のそれだった。


「へ、陛下! お戯れが過ぎますわ!」


 ざばぁん! と水音を立てて羽流乃は胸を押さえたまま立ち上がる。乳首は隠されていたが、今度は下半身が丸出しである。


「あっ、あっ、あっ、キャアッ!」


 立ち上がってから気づいたのだろう、羽流乃は顔を真っ赤にしてシンに背を向け、しゃがみ込む。しかしシンの脳内カメラはシャッターチャンスを逃さない。……羽流乃は下の毛も金色なのかぁ。


「ほら、逃がさないよ!」


 シンの目の前に小ぶりな美尻が飛び出す。葵がふざけて羽流乃に飛びかかろうとしたのだ。羽流乃も立ち上がり、逃げ出す。大きな桃のようなきれいな尻が躍動した。


 ちなみにシンは動くことができない。麻衣に未だ抱きつかれていたからというのもあるが、主な理由は湯船の下でシンの下半身が大変なことになっていたからである。……湯船白いからわからないよね? 畜生!

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