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33 女王の婚約者

「君は黙って立っていればいいのさ。ロビンソン、例の貴族たちを呼んで」


「御意」


 ロビンソンはいったん外に出て、数名の若者を連れてくる。


「陛下、ご機嫌麗しゅう! 今日は妖精の羽根から作った髪飾りを……」


「陛下、北の鉱山でとれた宝石を……」


「陛下! 東方より輸入した空飛ぶベッドが……」


 プレゼントらしき包みを抱えた若者たちは、我先にと葵の前に出てアピールを始める。彼らは派手な服を着て指輪やネックレスで自らを飾っており、相当な金持ちであることがシンにもわかった。この国の貴族らしい。


「何なんだ、こいつら?」


 シンは小声で羽流乃に尋ねる。羽流乃は腰の刀に手を掛けながら、歯噛みした。


「陛下に求婚している貴族の子弟ですわ。いつ見ても無礼な輩ですが、貴族なので手を出せません……!  歯がゆいですわね……」


 なるほど、女王である葵と結婚すれば、国王になることができる。貴族たちは国王の座を狙って必死なのだろう。


「残念だけど、受け取れないなあ……」


 葵は心底楽しそうに貴族の若者たちを見下ろす。若者たちは慌てた。


「な、なぜです陛下!」


「何か粗相をしてしまいましたか!?」


「陛下の運命の人は、この私と決まっているのに!」


 口々に勝手なことを言う若者たちに、葵はドヤ顔で宣言する。


「僕の婚約者は神代シン、彼に決まったんだ」


「ファッ!? 俺!?」


 いきなり指名されたシンは変な声を出してしまう。葵はシンの反応に全く動じず、貴族たち相手に堂々としたものだ。


「彼と僕は前の世界で将来を誓い合った仲でね、人格も能力も文句のない存在だ。彼のことを考えると夜も眠れないよ! そういうことだから、君たちは諦めてね♪」


 心にもないことをペラペラとしゃべる葵に、貴族たちはざわめく。


「この男、種なしではないか!」


「陛下、なぜ種なしなどが!」


「陛下を誑かすとは許せん! 八つ裂きにしてくれる!」


 葵はいきり立つ貴族たちを見て、火に油を注ぐ。


「言い忘れたけど、彼は魔族を一人で殲滅できるくらいの豪傑だよ」


「ならば、陛下を賭けて決闘だ!」


 貴族の一人は剣を抜いた。葵は王座から立ち上がり、シンの隣に歩いてくる。葵はシンの左手をとり、そっと指輪をはめた。


「うおっ! いきなり何すんだよ」


 その瞬間、貴族たちが青ざめた。


「な、なんだこの魔力は……」


「まるで化け物ではないか! 東のトロールよりおぞましい!」


「まさか、羽流乃嬢より強い人間がこの世にいるとは……!」


 呆然とする貴族たちに葵はニコニコと告げる。


「彼は王家の指輪に封じられた魔王アスモデウスの力を使えるんだ。さぁ、決闘を始めなよ」


 この国では、魔王アスモデウスのネームバリューは凄まじい。貴族たちは顔を見合わせ、ぎこちない笑顔を浮かべる。


「いやあ、参ったなあ、今日はちょっと用事があって……」


「痛たたた! 急に腹の具合が……」


「へ、平民などと剣を交えれば、剣が汚れる! 今日は見逃してやる! 覚悟しろよ、平民!」


 貴族たちは回れ右して帰っていった。


「そういうことだからよろしくね、僕のフィアンセ君♪」


「お帰りはこちらやで~!」


 それまで葵の後ろでじっとしていた麻衣は貴族たちを引率して帰らせる。シンは顔を引きつらせるばかりだった。

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