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転生魔王のワールド・リバースド ~ハーレム魔王が地獄に墜ちてハーレム魔王になる話~  作者: ニート鳥
番外編 主人公になれなかった僕のワールド・オーバーライド・オンライン vs 転生魔王のワールド・リバースド ~Lv.99 魔王です~
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15 攻略

「喰らいなさい! 『フレイム』!」


 先に仕掛けたのは静香だった。静香の杖から小さな火球が発射され、薔薇の剣士に向かって突進する。薔薇の剣士は右手の〈ブラック・プリンス〉を一閃した。どこか無骨な印象を持つ黒薔薇の剣には魔法を打ち消す効果がある。ひとたまりもなく火球は消滅した。


「ふうん。じゃあ、これならどう?」


 静香は『フレイム』を連発する。薔薇の剣士は持ち前のすばやさでほとんどの火球を回避しながら、避けきれないものだけ〈ブラック・プリンス〉で消す。


「「そんな攻撃は通じない! 『フェザースラッシュ』!」」


 首尾よく接近した薔薇の剣士は左手の〈ブルー・ヘヴン〉で初級の剣技を繰り出す。静香はバックステップで軽く避けるが、薔薇の剣士はオーバーライドでスキル使用後の硬直をキャンセルして追いかけた。右手の〈ブラック・プリンス〉による追撃。予想はしていたのだろう、静香は杖でうまく捌いた。


「その姿なら、オーバーライドも自由に使えるんだ? 二人とも、スペシャルバースト使わなきゃ、簡単なオーバーライドも使えないのにね」


「「ボクら二人なら、なんでもできるんだ!」」


 薔薇の剣士は左の剣で静香の足を狙って注意を引きつけ、右の〈ブラック・プリンス〉で胴を打とうとする。ろくな防具を着けていないので通常攻撃でも痛いはずだ。静香は読んでいるのか、今度は横っ飛びして避けた。


「やたらと右を当てようとするわね。何か理由があるのかしら?」


 わざとらしく静香は首を傾げる。〈ブラック・プリンス〉で一定以上ダメージを与えれば時間加速スキルを発動可能だ。静香は薔薇の剣士の心を乱すため、絶対にわかっていて言っている。おまえの狙いはわかっていると、見下ろしているのだ。


 無視して薔薇の剣士は右を大振りした後に、左ですばやく突きを入れようとする。〈ブルー・ヘヴン〉にも攻撃を当てればステータスが上昇するという効果がある。どちらからでもいい。初撃が当たった瞬間に逃げられないよう連続攻撃を打ち込む。


 しかしそれさえも静香は読んでいて、右に左に派手に跳んで攻撃を当てさせない。静香は持久戦に持ち込むつもりなのだろうか。スペシャルバーストの持続時間は短い。このまま粘られ続けると、薔薇の剣士はその姿を維持できなくなって雅雄とツボミに分離してしまう。


 だったらそれはそれで手はある。虎穴に入らずんば虎児を得ず。薔薇の剣士は反撃を受ける覚悟でいっそう前に踏み込む。静香は回避に集中するあまり、魔法を撃たなくなっていた。


 薔薇の剣士が踏み込んできたところにカウンターで魔法のゼロ距離射撃を放つ気なのかもしれない。だが、そんな作戦であれば望むところだ。こちらも防御力は低いとはいえ、レベルはほぼ同等なのである。いくら近くで撃たれても、魔法の一撃だけでは薔薇の剣士は死なない。二発目を撃てないように剣技で押し切るだけだ。


 当然、静香はそんな甘い手は打ってくれない。薔薇の剣士が斬りかかった瞬間、静香から赤のオーラが放出された。


「あんたたちのスペシャルバーストなんて大したことないって、教えてあげるわ」


 『業田静香 Lv.64 マジックナイト』。静香は深紅の鎧と細身のレイピアで武装した。昨日も使用した、メガミに対抗するために用意していたスペシャルバーストだ。薔薇の剣士よりレベルが20以上高い。しかし薔薇の剣士はこの姿の静香にも勝っている。


 昨日は普通の両手剣を装備していたが、今回は片手で扱えるレイピアだった。昨日両手剣は薔薇の剣士が破壊したからだろうか。その点だけは引っかかったが、構わず薔薇の剣士はスキルを発動する。


「「[黒薔薇葬送録 永遠]!」」


 『フェザースラッシュ』から始まるスペシャルラッシュが静香を襲う。二本の剣が上下左右縦横無尽に振られ、一方的に静香は打たれ続ける。硬直を無視してモーションスキルを連発するこの技に、静香は為す術がない。


 このスペシャルバースト状態でのスペシャルラッシュが薔薇の剣士の切り札だった。通常オーバーライドは同時に一つしか使えないが、薔薇の剣士は二人で一人である。オーバーライドにオーバーライドを重ねることができる。


 前回の戦いではこの[黒薔薇葬送録 永遠]で静香を敗走に追い込んだ。今回はどうか。何度剣で打たれても静香はピンピンしている。


「フフッ、全然威力が足りないわね」


「「クッ……!」」


 静香の鎧には物理耐性があり、また静香自身のレベルも薔薇の剣士よりずっと高い。前回は静香の取り巻きを倒して〈ブルー・ヘヴン〉の効果で充分にステータスを上昇させてから静香に挑んだが、今回はいきなりである。二本の剣がいくら伝説級でも、薔薇の剣士のステータスが低すぎるのだ。


 それでも、攻め続けていればいつかは静香の防御を破れるはずだ。放出される青と黒のオーラで静香の攻撃は通らない。薔薇の剣士は一心不乱に剣を振り続ける。じわじわとではあるが剣圧に押され、静香が後退し始める。


「一回見られたものなんて、切り札でも何でもないのに、必死ね。そろそろ疲れてきたんじゃないの? こっちからも行かせてもらうわ」


 ブラフだ。薔薇の剣士は相手にせずにラッシュを継続する。静香は片手でレイピアを突き出そうとしたが、薔薇の剣士は黙ってスペシャルラッシュを続けることで封じ込めた。そろそろ充分にステータスが上がってきたのではないか。時間加速も一回くらいは使用できそうだ。


 勝てる。薔薇の剣士はさらにラッシュのスピードを上げるが、静香はニヤリと笑った。


「決まったわ。私の勝ちよ」


 妄言だ。耳を貸すな。薔薇の剣士はそう考えるが、直後に背中で何かが爆発した。集中が乱されたことで薔薇の剣士のスペシャルラッシュは中断され、モーションスキル後の硬直に襲われる。


「はい、これでおしまい」


 そして静香は、レイピアを振り下ろした。

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