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転生魔王のワールド・リバースド ~ハーレム魔王が地獄に墜ちてハーレム魔王になる話~  作者: ニート鳥
番外編 主人公になれなかった僕のワールド・オーバーライド・オンライン vs 転生魔王のワールド・リバースド ~Lv.99 魔王です~
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14 再戦

「あれ……? ここは……?」


 気付けば雅雄は真っ黒なコートを着て腰に剣を差し、どこまでも続く草原のど真ん中に立っていた。隣には銀のスケイルメイルを着込んで黒いマントを身に着けたツボミもいる。


「ワールド・オーバーライド・オンラインの世界だね……。多分神林さんが避難させてくれたんだよ」


 雅雄はここに出てくるまでの出来事を思い返す。雅雄とツボミは外を歩いている最中に幽霊となって地獄から舞い戻ってきた静香に襲われた。雅雄とツボミは殺されかけたが、間一髪メガミとヤスさんに助けられたのだった。


「ボクら、ずっとフリーズしてたみたい。バグったゲームの画面みたいに三十秒ぐらい君は固まってたよ」


 ツボミが意識を取り戻したのは雅雄より少し前だった。多分ツボミもこちらに飛ばされてからしばらくはフリーズ状態だったのだと思われる。


「僕らの体はどうなってるんだろう……?」


 雅雄は急に不安になる。ワールド・オーバーライド・オンラインにログインするとき、通常雅雄たちの体は眠った状態になっている。あの路上で放置されていたら大変なことだ。


「う~ん、なんとかしてくれてるんじゃないの? とりあえず、こうしてボクらは生きてるんだからそれでいいんじゃないかな」


 ツボミは泰然と言った。まぁ、普通に考えて体は体で保護してくれているのだろう。というよりは順番が逆で、意識を保ったまま保護はできないから雅雄たちはワールド・オーバーライド・オンラインにログインさせられたのだと思われる。


 雅雄たちは直前に使ったセーブポイントではなく、雅雄が最初にゲームをスタートさせた草原に出現していた。フリーズしていた件といい、ゲームシステム的にもイレギュラーな事態になっているらしい。


 また自分のステータスウィンドウを確認してみると『Time Lock』の表示が出ていた。時間制限なしでほとぼりが覚めるまでこちらで待機しろということだ。


「じゃあ、僕らはメガミが静香ちゃんを倒すまで待てばいいだけなんだ」


「神林さんに頼りっきりっていうのもしゃくに障るけどね……。業田さんがあんな風になれるんだったら、ボクらも戦えるようになったりしないかな。そうすれば自分で業田さんの幽霊なんてやっつけちゃうのに」


「そうだね、ハハハ……」


 ツボミは無邪気に笑い、雅雄は適当に相づちを打つ。よくもそんな恐ろしいことを言えるものだ。かつてメガミが魔法少女として戦っているところを目撃し、流れ弾で死にかけた雅雄は口が裂けてもそんなことは言えない。


 雅雄とツボミが笑い合っていると、突然後ろから声がした。


「思い上がりも甚だしいわね。あなたたちなんかに私が負けるわけがないじゃない」


 声の主が誰かなんて考えるまでもない。雅雄とツボミは即座に剣を抜きながら振り向く。


「静香ちゃん……!」


 『業田静香 Lv.43 ワーロック』。リアルの世界で見た幽霊とは違う。いかにも魔法使いというローブを身に着け、しっかりと肉体を持った静香がそこには立っていた。ツボミは全く臆することなく言い返す。


「昨日ボクたちに負けたのはどこの誰だったのかな?」


「あんなの、負けたうちに入らないわ。だって私は生きてるじゃない」


 静香の目には一点の曇りもない。本気で、雅雄たちには負けたと思っていない。思わず雅雄はツッコミを入れてしまう。


「いや、死んで幽霊になってたでしょ」


「だから何? こうして今、私は体を手に入れたわ。さぁ、どう料理してあげようかしら……」


 静香はフフフと心底楽しそうに笑う。背筋が寒くなった。はたと気付いた雅雄は尋ねる。


「……メガミはどうしたの?」


「さぁ? 今ごろ死んでるんじゃない?」


 こともなげに静香は言い放ち、雅雄は絶句する。メガミを倒してこの世界に来たというのか。雅雄は青くなるが、ツボミが冷静に言った。


「雅雄、落ち着いて。神林さんと業田さんが戦ったのだとしたら、こんな短時間でこっちに来られないよ」


 こちらと向こうでは時間の流れが違う。フリーズ時間を考慮してもこんなに早く現れるはずがない。


「私は嘘は言ってないんだけどね……。試してみる? メガミは助けに来ないわよ? 今なら許してあげてもいいんだけど」


 静香は雅雄たちに杖を向ける。雅雄たちはどうするべきなのか。


「この世界ならボクらにも戦う力がある……! 雅雄、やろう!」


 ツボミはそっと手を差し出す。ツボミの呼びかけに、雅雄が応えないはずがない。雅雄は力強くうなずき、ツボミの手を取った。


「この世界なら負けない……! 僕は決めたんだ、自分の運命を自分で掴み取るって! その勇気を、ツボミにもらった!」


 いきり立つ二人を見て、静香は汚いものでも目にしたかのように大きく顔を歪めてぺっと唾を吐く。


「本当に腹が立つわね……! 二人とも、後悔させてあげるわ」


 今の雅雄は静香のオーラに当てられたとしても、女装して静香の庇護を受けていた頃に戻ったりはしない。二人はしっかりと手をつないだまま〈ブルー・ヘヴン〉と〈ブラック・プリンス〉を呼び出し、オーバーライドで一つとなる。




「今、青薔薇の奇跡はこの手の中に!」「そして、黒薔薇の永遠は二人を包む!」

「「奇跡の願いは永遠となり、運命を切り開く! 目覚めよ、薔薇の剣士!」」




 雅雄とツボミのスペシャルバースト。青と黒のエフェクトが放出された後に、二本の剣を携えた『薔薇の剣士 Lv.40 デューク』が出現する。二人の魂が一つとなったこの姿なら、静香に負けるはずがない。昨日と同様、鮮やかに勝って見せよう。


「あくまで抵抗する気なのね。いいわ。たっぷり後悔させてあげる」


 静香は不敵な笑みを浮かべ、リベンジマッチに挑む。薔薇の剣士は静香にじりじりと接近して、やがて戦いは始まった。

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